2021年3月31日更新

CQ2.閉経後ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後内分泌療法として何が推奨されるか?

1.初期治療

推 奨
・アロマターゼ阻害薬の投与を強く推奨する。
〔推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:強,合意率:100%(12/12)〕

・タモキシフェンを2~3年投与後に,アロマターゼ阻害薬に変更することを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:強,合意率:92%(11/12)〕

・アロマターゼ阻害薬を2年投与後にタモキシフェンに変更することを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:弱,合意率:83%(10/12)〕

・タモキシフェンあるいはトレミフェンの投与を弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:強,合意率:83%(10/12)〕

背景・目的

閉経後ホルモン受容体陽性乳癌の術後標準治療は,以前はタモキシフェンが標準治療であったが,第三世代アロマターゼ阻害薬との複数の比較試験の結果から,アロマターゼ阻害薬の優位性が示された。タモキシフェンとアロマターゼ阻害薬との比較あるいは,タモキシフェンとタモキシフェン,アロマターゼ阻害薬の順次投与との比較について検討した。

解 説

① 2つの大規模な第Ⅲ相試験(BIG 1-98試験,ATAC試験)を統合解析すると,タモキシフェンと比較して,アロマターゼ阻害薬の投与によりDFSの改善(HR 0.89,95%CI 0.83-0.95,p=0.0007),OSは統計学的に有意ではないが優れる傾向であった(HR 0.93,95%CI 0.86-1.01,p=0.10)1)2)。重篤な有害事象については,全体としては大きな差を認めていないが,個々の有害事象についてはプロファイルが異なる。アロマターゼ阻害薬では疼痛,骨粗鬆症が増加し,タモキシフェンでは血栓症が増加した。ともに質の高い試験であり,エビデンスの強さは「強」とした。

益と害のバランスについては,再発抑制効果である益が害に勝ると考えた。患者の希望に関しては,有害事象のプロフィールに違いがあることからばらつきがあると考えられた。
以上より,エビデンスの程度,益と害のバランス,患者の希望などを勘案し,推奨は「アロマターゼ阻害薬の投与を強く推奨する」とした。

② 複数の第Ⅲ相試験(N-SAS BC03試験,BIG 1-98試験,IES試験,ABCSG 9/ARNO/ITA試験)の統合解析で,タモキシフェンを2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に変更し計5年投与することにより,タモキシフェンを5年投与する場合と比べDFS(HR 0.77,95%CI 0.71-0.83,p<0.00001),およびOS(HR 0.79,95%CI 0.72-0.88,p<0.00001)の延長を認める3)~6)。有害事象については,アロマターゼ阻害薬への切り替えで高血圧,心血管イベントの増加を認めるが,骨粗鬆症は増加しない。子宮ポリープはタモキシフェン群に多い。検討した試験はすべて質の高い試験であることから,エビデンスの強さは「強」とした。

益と害のバランスについては,再発抑制効果である益が害に勝ると考えた。患者の希望に関しては,有害事象のプロフィールに違いがあることからばらつきがあると考えられた。
上述したように,閉経後ホルモン受容体陽性乳癌に対しては,アロマターゼ阻害薬の使用を強く推奨するため,最初にタモキシフェンから開始する対象は,何らかの理由により,最初にアロマターゼ阻害薬の投与ができなかった患者が想定される。

以上より,エビデンスの程度,益と害のバランス,患者の希望などを勘案し,推奨は「タモキシフェンを2~3年投与後に,アロマターゼ阻害薬に変更することを弱く推奨する」とした。

③ BIG 1-98試験のサブグループ解析ではあるが,アロマターゼ阻害薬を2年内服後にタモキシフェンに切り替えて合計5年投与する群と,アロマターゼ阻害薬を5年投与する群の比較において,DFS(HR 0.96,95%CI 0.76-1.21),OS(HR 0.90,95%CI 0.65-1.24)とも差を認めなかった4)。アロマターゼ阻害薬からタモキシフェンに切り替える投与方法の,アロマターゼ阻害薬5年投与に対する優越性あるいは非劣勢は示されていない。しかし,根拠とするデータが上記しかないことも鑑みて,アロマターゼ阻害薬投与後に,何らかの理由によりタモキシフェンに切り替えて5年投与することは考慮してもよい一つの選択肢とした。有害事象について比較した結果は報告されていない。検討したデータは,サブグループ解析のものであることから,エビデンスの強さは「弱」とした。

益と害のバランスについては,再発抑制効果である益が害に勝ると考えた。患者の希望に関しては,有害事象のプロフィールに違いがあることからばらつきがあると考えられた。

以上より,エビデンスの程度,益と害のバランス,患者の希望などを勘案し,推奨は「アロマターゼ阻害薬を2年投与後にタモキシフェンに変更することを弱く推奨する」とした。

タモキシフェンは,前述のようにアロマターゼ阻害薬に比較してDFSが劣るものの(HR 0.89,95%CI 0.83-0.95,p=0.0007)1)2),骨粗鬆症の増加がみられない等,患者の状況によっては毒性プロファイルに関して優れている可能性がある。アロマターゼ阻害薬が使用しにくい状況では選択肢となり得る。トレミフェンもタモキシフェンと同様である。検討した試験はすべて質の高い試験であることから,エビデンの強さは「強」とした。

益と害のバランスについては,再発抑制効果である益がアロマターゼ阻害薬よりも劣るものの,害には勝ると考えた。患者の希望に関しては,有害事象のプロフィールに違いがあることからばらつきがあると考えられた。

以上より,エビデンスの程度,益と害のバランス,患者の希望などを勘案し,推奨は「タモキシフェンあるいはトレミフェンの投与を弱く推奨する」とした。

なお、T1aN0乳癌において局所治療単独または全身療法の必要性に関する明確なエビデンスは欠如している。NSABP-B21ランダム化比較試験7)のT1a,bN0乳癌のサブセット解析では放射線単独群(332名)とタモキシフェン単独群(334名)、放射線+タモキシフェン群(334名)の比較では(T1aが28%、ER陽性が57%、閉経後が76%含まれる)8年のOSはどの群にも有意差はなく93から94%であり、遠隔再発率もそれぞれ3.3%, 3.2%, 1.6% (p=0.28)の結果であった。このグループにおける再発率、全生存率は90%以上と予後良好でありT1aN0乳癌において内分泌療法や化学療法の全身薬物療法による絶対的利益は得られるとしても小さい。いくつかの報告でER陽性T1aN0乳癌において組織学異型度、若年、脈管侵襲、Ki67高値が予後不良因子として抽出されており、これらを有する場合に術後内分泌療法の「益」がより期待できる可能性がある。

エビデンス総体システマティックレビューメタアナリシス

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Postmenopause”,“Chemotherapy, Adjuvant”,“Antineoplastic Agents, Hormonal”,“Aromatase Inhibitors”,“Receptors, Estrogen”,“Tamoxifen”,“Letrozole”,“Anastrozole”,“Exemestane”のキーワードで検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,1,551件がヒットした。

一次スクリーニングで90編の論文が抽出され,二次スクリーニングで34編の論文が抽出された。無再発生存期間,全生存期間,有害事象について,アロマターゼ阻害薬について検討した2編について定性的システマティック・レビューおよびメタアナリシスを行い,タモキシフェンを2~3年投与後に,アロマターゼ阻害薬に変更し,計5年投与することについて検討したランダム化比較試験3編と統合解析1編について,定性的システマティック・レビューおよびメタアナリシスを行い,アロマターゼ阻害薬を2年投与後にタモキシフェンに変更し,計5年投与することを検討した1編について定性的システマティック・レビューを行い,タモキシフェン,トレミフェンについて検討した2編について定性的システマティック・レビューを行った。

エビデンス総体システマティックレビューメタアナリシス

参考文献

1)Cuzick J, Sestak I, Baum M, Buzdar A, Howell A, Dowsett M, et al;ATAC/LATTE investigators. Effect of anastrozole and tamoxifen as adjuvant treatment for early―stage breast cancer:10―year analysis of the ATAC trial. Lancet Oncol. 2010;11(12):1135―41. [PMID:21087898]

2)Regan MM, Neven P, Giobbie―Hurder A, Goldhirsch A, Ejlertsen B, Mauriac L, et al;BIG 1―98 Collaborative Group;International Breast Cancer Study Group(IBCSG). Assessment of letrozole and tamoxifen alone and in sequence for postmenopausal women with steroid hormone receptor―positive breast cancer:the BIG 1―98 randomised clinical trial at 8・1 years median follow―up. Lancet Oncol. 2011;12(12):1101―8. [PMID:22018631]

3)Aihara T, Takatsuka Y, Ohsumi S, Aogi K, Hozumi Y, Imoto S, et al. Phase Ⅲ randomized adjuvant study of tamoxifen alone versus sequential tamoxifen and anastrozole in Japanese postmenopausal women with hormone―responsive breast cancer:N―SAS BC03 study. Breast Cancer Res Treat. 2010;121(2):379―87. [PMID:20390343]

4)Mouridsen H, Giobbie―Hurder A, Goldhirsch A, Thurlimann B, Paridaens R, Smith I, et al;BIG 1―98 Collaborative Group. Letrozole therapy alone or in sequence with tamoxifen in women with breast cancer. N Engl J Med. 2009;361(8):766―76. [PMID:19692688]

5)Bliss JM, Kilburn LS, Coleman RE, Forbes JF, Coates AS, Jones SE, et al. Disease―related outcomes with long―term follow―up:an updated analysis of the intergroup exemestane study. J Clin Oncol. 2012;30(7):709―17. [PMID:22042946]

6)Jonat W, Gnant M, Boccardo F, Kaufmann M, Rubagotti A, Zuna I, et al. Effectiveness of switching from adjuvant tamoxifen to anastrozole in postmenopausal women with hormone―sensitive early―stage breast cancer:a meta―analysis. Lancet Oncol. 2006;7(12):991―6. Erratum in:Lancet Oncol. 2007;8(1):6. [PMID:17138220]

7)Fisher B, Bryant J, Dignam JJ, Wickerham DL, Mamounas EP, Fisher ER, et al ; National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project. Tamoxifen, radiation therapy, or both for prevention of ipsilateral breast tumor recurrence after lumpectomy in women with invasive breast cancers of one centimeter or less. J Clin Oncol. 2002;20(20):4141-9. [PMID: 12377957]

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