2021年3月31日更新

CQ8.リンパ節再発に対する外科的切除は勧められるか?

4.転移・再発乳癌に対する外科手術

CQ8a 初回腋窩リンパ節郭清後の腋窩リンパ節再発の場合

推 奨
・外科的切除を行うことを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:とても弱い,合意率100%(12/12)〕

CQ8b 鎖骨上リンパ節再発の場合

推 奨
・外科的切除を行わないことを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:3,エビデンスの強さ:とても弱い,合意率100%(12/12)〕

背景・目的

腋窩リンパ節郭清後の患者における腋窩リンパ節単独再発の報告は増えており,また,乳癌根治術後の同側鎖骨上リンパ節単独再発はときどき経験する。乳癌の初期治療においては,腋窩リンパ節転移個数が4個以上の患者に対して胸壁や領域リンパ節への放射線療法で予後の改善が期待できるなど,局所制御による治療効果はあると考えられる。遠隔転移を伴わない腋窩,鎖骨上リンパ節単独再発に対する外科的切除をすることの意義についてエビデンスをもとに検討した。

解 説

腋窩もしくは鎖骨上リンパ節再発に関して,そこに外科的切除を加える群と切除しない群でのランダム化比較試験は存在しない。よって,後ろ向きの報告から検討した。
腋窩リンパ節再発に対する外科的切除の意義に関しては少数の後ろ向きの症例集積研究しかなく,エビデンスの強さは「とても弱い」とした。2012年の腋窩リンパ節郭清後の同側腋窩リンパ節再発の報告によると,観察期間70.2カ月で4,473例中35例0.8%に再発を認めた。腋窩リンパ節再発後の乳癌特異的5年生存率は57.9%であった。外科的切除の「益」は生存率の向上であるが,再腋窩リンパ節郭清できた12例の5年生存率は82.5%であったが,再郭清なしの23例は44.9%であり,再郭清できたほうが有意(p=0.039)に予後良好であった1)

外科的切除の「害」である術後合併症,入院手術コストに関しての論文はないが,手術を行うことで,非手術に比べて術後合併症やコストが増えることは明らかである。
患者の希望は,手術可能で根治が期待できれば手術を希望すると思われ,概ね一致すると思われる。

以上より,腋窩リンパ節再発に関しては,初回の腋窩リンパ節郭清が不十分であった可能性があり,根治を目指せる症例が一部に存在し,再郭清による生存率向上の「益」の恩恵を受ける可能性を重要視して,推奨は「外科的切除を行うことを弱く推奨する」とした。

一方,同側鎖骨上リンパ節単独再発は腋窩再発に比べるとより進展した部位での再発である。頻度は文献的に0.8~2.6%であり,多くの報告で,予後は遠隔転移を認めた患者と比較すると良好であった2)~4)。少数の後ろ向きの症例集積研究しかなく5)6),エビデンスの強さは「とても弱い」とした。外科的切除による「益」は生存率の向上であるが,非手術と比較した論文はなかったが,鎖骨上リンパ節単独再発に対して,全身薬物療法に加え,放射線療法や何らかの外科的切除(切除生検や頸部リンパ節郭清)を加えることにより,局所制御を良好に保つことができた群や完全奏効(CR)が得られた群で予後良好であるとの報告が散見されるがバイアスを含んでいることは否めない。「害」である術後合併症,入院手術コストに関しての論文はないが,手術を行うことで,非手術に比べて腋窩リンパ節郭清以上に術後合併症は多くなる可能性があり,入院手術コストが増えることは明らかである。患者の希望は,手術による再発巣の切除を期待する一方で,根治が期待できないのであれば手術より侵襲の少ない放射線療法を希望することも予想され,ばらつきはあると思われる。

以上より,鎖骨上リンパ節再発は腋窩リンパ節再発以上に進展した部位での再発であり,その治療は照射および全身薬物療法が基本である。外科手術を加えることによる明らかな予後改善は確認できず,一方で,術後合併症や後遺症などの「害」は腋窩リンパ節郭清以上に軽視できないと判断し,推奨は「外科的切除を行わないことを弱く推奨する」とした。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Lymphatic Metastasis”,“Neoplasm Recurrence, Local”,“supraclavicular”,“ipsilateral”のキーワードと,“axilla”の同義語で検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,684件がヒットした。一次スクリーニングで6編の論文が抽出され,二次スクリーニングで5編の論文が抽出された。それ以外にハンドサーチで数編の論文を加えた。これら抽出した論文に対して定性的システマテック・レビューを行った。

エビデンス総体(8a/8b)・システマティックレビュー(8a/8b

参考文献

1)Shen SC, Liao CH, Lo YF, Tsai HP, Kuo WL, Yu CC, et al. Favorable outcome of secondary axillary dissection in breast cancer patients with axillary nodal relapse. Ann Surg Oncol. 2012;19(4):1122―8. [PMID:21969085]

2)van der Sangen MJ, Coebergh JW, Roumen RM, Rutten HJ, Vreugdenhil G, Voogd AC. Detection, treatment, and outcome of isolated supraclavicular recurrence in 42 patients with invasive breast carcinoma. Cancer. 2003;98(1):11―7. [PMID:12833449]

3)Chen SC, Chang HK, Lin YC, Leung WM, Tsai CS, Cheung YC, et al. Prognosis of breast cancer after supraclavicular lymph node metastasis:not a distant metastasis. Ann Surg Oncol. 2006;13(11):1457―65. [PMID:16960682]

4)Deo SV, Purkayastha J, Shukla NK, Raina V, Asthana S, Das DK, et al. Intent of therapy in metastatic breast cancer with isolated ipsilateral supraclavicular lymph node spread――a therapeutic dilemma. J Assoc Physicians India. 2003;51:272―5. [PMID:12839350]

5)Pergolizzi S, Settineri N, Russi EG, Maisano R, Adamo V, Santacáterina A, et al. Supraclavicular lymph node metastases(SLM)from breast cancer as only site of distant disease:has radiotherapy any role? Anticancer Res. 1997;17(3C):2303―8. [PMID:9216706]

6)Reddy JP, Levy L, Oh JL, Strom EA, Perkins GH, Buchholz TA, et al. Long―term outcomes in patients with isolated supraclavicular nodal recurrence after mastectomy and doxorubicin―based chemotherapy for breast cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2011;80(5):1453―7. [PMID:21168284]

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