2021年3月31日更新

BQ14.葉状腫瘍と診断された場合に外科的切除が勧められるか?

5.乳癌特殊病態に対する外科治療

ステートメント
・針生検にて葉状腫瘍と診断された場合の標準治療は,外科的な完全切除である。腫瘍の大きさ,悪性度を考慮に入れたうえで,腫瘍周囲の正常組織まで含めた至適な切除マージンが必要である。

背 景

葉状腫瘍は,比較的稀な結合織性および上皮性混合腫瘍の一つであり,組織学的には良性,境界病変,悪性に亜分類され多様な生物学的特徴を呈する。形態は境界明瞭,多結節性,無痛性の腫瘤で線維腺腫との鑑別が問題となるが,急速に増大する場合は葉状腫瘍を疑う。葉状腫瘍の外科的治療について概説する。

解 説

葉状腫瘍は乳腺腫瘍の1%未満と頻度の少ない腫瘍であるため,エビデンスは主に症例集積や症例報告に基づいている。病理学的形態としては良性の線維腺腫に類似したものから高異型度の肉腫に近いものまで幅広いため,針生検であっても線維腺腫や肉腫との鑑別が難しいこともある。

75例以上の報告をまとめた2013年の葉状腫瘍5,530例のレビューでは,良性,境界病変,悪性の比率は52,13,35%で,平均観察期間5年における局所再発率はそれぞれ15,17,28%(平均19.1%)であった1)。2015年以降に報告された285例(良性191例,境界病変61例,悪性33例,5年局所再発率はそれぞれ5.0,13.1,18.0%)2)と479例(良性354例,境界病変89例,不明もしくは葉状腫瘍疑い36例,平均観察期間98カ月で全体の再発率6.3%)3)の後ろ向き検討では局所再発率は約10%低下している。

葉状腫瘍の治療は外科手術での完全切除である。比較的大規模な近年の報告において,断端陽性1)4),腫瘤径1)2),亜分類1)~3),年齢1),壊死の存在1)が再発のリスク因子であると報告している。172例の後ろ向きの検討では,多変量解析にて切除断端陽性は約4倍の再発リスク因子であった1)。多施設による前向きコホート研究の報告では,腫瘍辺縁から少なくとも1 cmの正常組織まで含めた乳房部分切除を勧めている5)。針生検で葉状腫瘍と線維腺腫とを鑑別するのは困難であることもあり,切除マージンをとらない腫瘍摘出術が行われると局所再発率は高くなる6)。48人の高異型度の悪性葉状腫瘍における後ろ向きの検討6)によると,10例は切除マージン1 cm以下の局所切除,14例は切除マージンが1 cm以上の部分切除,24例の乳房全切除が行われていた。全体の局所再発率は44%,そのうち切除マージンが1 cm以下の局所切除後の再発率は60%であったが,1 cm以上の部分切除後の再発率は28%であった。局所再発と全生存率には腫瘍径と切除マージンが関連していた。初回切除後に切除マージンが近い場合は悪性度等も考慮したうえで追加切除も検討すべきである7)8)。Surveillance,Epidemiology and End Results(SEER)に登録された悪性葉状腫瘍821例を解析したところ,乳房全切除術と乳房温存手術は52%と48%に行われていた9)。腫瘍径にかかわらず,乳房温存手術が行われた症例は,乳房全切除術が行われた症例と比べて全生存率は同等かそれより良好であった。よって適応を選び,切除マージンが確保されている限り,乳房温存手術は適正な術式である。

葉状腫瘍の腋窩リンパ節転移は非常に稀であるため,悪性葉状腫瘍であっても通常腋窩リンパ節郭清は行われない。SEERによると葉状腫瘍の腋窩リンパ節転移はわずか1.6%(8/498例)であった9)

悪性葉状腫瘍に対する術後の放射線療法について,明確なエビデンスが得られる前向きのランダム化比較試験は存在しない。8つの後ろ向き検討をまとめたシステマティック・レビューでは,術後放射線療法を行うことで局所再発のリスクを減らすことが示されている(HR 0.43,95%CI 0.23-0.64)10)。しかしながら,これらは選択バイアスのある後ろ向き研究のメタアナリシスであること,生存率の改善は本研究でも示されていないことから,十分なエビデンスがあるとはいえない。適切な切除マージンで切除が確認されたときには,基本的に放射線療法は推奨されない。病理組織学的検査にて腫瘤の遺残が疑われる場合には,基本的には再度の切除を行うことが望ましい。しかし,腫瘍の位置や大きさなどにより再度の切除が不可能な場合には,乳房全切除後であっても術後の放射線療法を追加することが推奨されている。

葉状腫瘍は,その画像所見や多様な病理学的形態のため術前の診断が難しい。細胞診の偽陰性率は高いため11),主に針生検が診断に用いられる。しかし,針生検でも25~30%の偽陰性率があるといわれている12)。よって,針生検で線維腺腫と診断されても,臨床的に急速に増大するような症例では,葉状腫瘍の可能性を考え,外科的完全切除を行うべきである。また,針生検にて葉状腫瘍と線維腺腫との鑑別困難と診断された場合も,診断確定のために外科的完全切除を検討することが望ましい。

検索キーワード・参考にした二次資料

「乳癌診療ガイドライン①治療編2015年版」の同クエスチョンの参考文献に加え,PubMedで“Breast Neoplasms”,“Phyllodes Tumor”のキーワードで検索した。検索期間は2014年1月から2016年11月までとし,60件がヒットした。この中から主要な論文を選択した。また,UpToDate 2017を参考資料として利用した。

参考文献

1)Spitaleri G, Toesca A, Botteri E, Bottiglieri L, Rotmensz N, Boselli S, et al. Breast phyllodes tumor:a review of literature and a single center retrospective series analysis. Crit Rev Oncol Hematol. 2013;88(2):427―36. [PMID:23871531]

2)Yom CK, Han W, Kim SW, Park SY, Park IA, Noh DY. Reappraisal of conventional risk stratification for local recurrence based on clinical outcomes in 285 resected phyllodes tumors of the breast. Ann Surg Oncol. 2015;22(9):2912―8. [PMID:25652050]

3)Borhani―Khomani K, Talman ML, Kroman N, Tvedskov TF. Risk of Local Recurrence of Benign and Borderline Phyllodes Tumors:A Danish Population―Based Retrospective Study. Ann Surg Oncol. 2016;23(5):1543―8. [PMID:26714948]

4)Jang JH, Choi MY, Lee SK, Kim S, Kim J, Lee J, et al. Clinicopathologic risk factors for the local recurrence of phyllodes tumors of the breast. Ann Surg Oncol. 2012;19(8):2612―7. [PMID:22476816]

5)Barth RJ Jr, Wells WA, Mitchell SE, Cole BF. A prospective, multi―institutional study of adjuvant radiotherapy after resection of malignant phyllodes tumors. Ann Surg Oncol. 2009;16(8):2288―94. [PMID:19424757]

6)Kapiris I, Nasiri N, A’Hern R, Healy V, Gui GP. Outcome and predictive factors of local recurrence and distant metastases following primary surgical treatment of high―grade malignant phyllodes tumours of the breast. Eur J Surg Oncol. 2001;27(8):723―30. [PMID:11735168]

7)Chen WH, Cheng SP, Tzen CY, Yang TL, Jeng KS, Liu CL, et al. Surgical treatment of phyllodes tumors of the breast:retrospective review of 172 cases. J Surg Oncol. 2005;91(3):185―94. [PMID:16118768]

8)Confavreux C, Lurkin A, Mitton N, Blondet R, Saba C, Ranchere D, et al. Sarcomas and malignant phyllodes tumours of the breast――a retrospective study. Eur J Cancer. 2006;42(16):2715―21. [PMID:17023158]

9)Macdonald OK, Lee CM, Tward JD, Chappel CD, Gaffney DK. Malignant phyllodes tumor of the female breast:association of primary therapy with cause―specific survival from the Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)program. Cancer. 2006;107(9):2127―33. [PMID:16998937]

10)Zeng S, Zhang X, Yang D, Wang X, Ren G. Effects of adjuvant radiotherapy on borderline and malignant phyllodes tumors:A systematic review and meta―analysis. Mol Clin Oncol. 2015;3(3):663―71. [PMID:26137284]

11)Jacklin RK, Ridgway PF, Ziprin P, Healy V, Hadjiminas D, Darzi A. Optimising preoperative diagnosis in phyllodes tumour of the breast. J Clin Pathol. 2006;59(5):454―9. [PMID:16461806]

12)Dillon MF, Quinn CM, McDermott EW, O’Doherty A, O’Higgins N, Hill AD. Needle core biopsy in the diagnosis of phyllodes neoplasm. Surgery. 2006;140(5):779―84. [PMID:17084721]

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