2021年3月31日更新

BQ1.乳癌確定診断において,画像誘導下生検手技は外科的生検よりも推奨されるか?

2.乳癌の精密検査(治療前)

ステートメント
・乳癌確定診断において,外科的生検よりも画像誘導下針生検手技を行うことが標準手技である。

背 景

乳癌確定診断において,日常臨床ではコア針生検(core needle biopsy;CNB,欧米ではautomated CNBと記載されることが多い),吸引式乳房組織生検(vacuum―assisted breast biopsy;VAB)を用いた画像誘導下針生検がごく一般的に用いられている。外科的生検を行うことで,整容性の低下1),乳房温存手術やセンチネルリンパ生検を行うときの不利益2)3)につながることが報告されている。画像誘導下針生検(CNBおよびVABを含む)と外科的生検の精度と有害事象を比較した米国のAgency for Healthcare Research and Quality(AHRQ)が行った大規模なシステマティック・レビュー,メタアナリシス4)を紹介することで,このBQのステートメントの根拠を概説する。

解 説

このAHRQによる画像誘導下針生検と外科的生検のシステマティック・レビューは2009年に初回の報告がなされ5)6),さらにその後に収集された研究結果を加えたアップデート版が2014年に報告されている4)。このシステマティック・レビュー作成のため,乳房腫瘤の確定診断を目的に生検を受けた女性に関する前向き,後ろ向きコホート研究について,9つの電子データベースを用いて英語フルテキスト文献の検索が行われた(検索期間は2013年12月まで)。要約した診断能の評価にはネットワーク・メタアナリシスを用いて,画像誘導下針生検方法別の相対的な有効性評価には間接比較を用いられている。

益のアウトカムである診断能に関して160件の研究をもとに画像誘導下針生検方法ごとにメタアナリシスが行われている。平均的な乳癌発症リスクの女性において,超音波ガイド下およびステレオガイド下での画像誘導下針生検での感度の平均は0.97以上,特異度は0.92~0.99であった(表1)。また,画像誘導下に行っていないCNBは画像誘導下に行ったものよりも感度が低かった。一方,MRIガイド下画像誘導下針生検の診断能については,結論を得るにはエビデンスが不十分であった。平均的な乳癌発症リスクの女性と,乳癌発症リスクの高い女性の間で差が認められなかったが,結果は不精確であった。また,同じ画像誘導下でのCNBおよびVABの診断能は(同一の画像ガイド下においては)概ね同程度であった。

また同様に,益のアウトカムとして考えられる外科的手技の回避,回数の削減に関して以下のメタアナリシスが行われている。42件の研究に基づくメタアナリシスによると,画像誘導下針生検を行うことで,約75%の女性の外科的手技が不要になった。生検後に必要とされた外科的手技の回数についての10件の研究のメタアナリシスにおいて,外科的生検と比較して,画像誘導下針生検では,その後必要となる外科的手技が1回で済む確率が,約15倍であることが示された。つまり,画像誘導下針生検により診断された乳癌の女性は,外科的生検によって診断された女性に比べ,1回の外科的手技によって,それらの癌を治療できるであろうという中等度の強さのエビデンスが示された。

また,画像誘導下針生検における不利益に関する論文141件をもとにメタアナリシスが行われた。全体では,画像誘導下針生検は外科的生検よりリスクが少なかった。有害事象の発生率は低く,重度の合併症の発生はすべての手技の1%未満であった。VABは,出血の増加と血腫形成との関連,また坐位での生検施行症例で血管迷走神経反射が増加することが示唆された。

これらのメタアナリシスより,画像誘導下針生検(超音波ガイド下およびステレオガイドコア針生検)では,益のアウトカムである診断能,つまり感度と特異度が外科的生検に近似すること,そして画像誘導下針生検を行うことで外科的手技回数は減少し,不利益のアウトカムである有害事象も少ないことが示唆されている。これらのことより,乳癌確定診断において外科的生検よりも画像誘導下針生検手技を行うことが標準手技である。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast neoplasms”,“Image―Guided Biopsy”,“Vacuum”,“Ultrasonography,Interventional”のキーワードと,“open biopsy”の同義語で検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2013年1月から2016年11月までとし,65件がヒットした。

参考文献

1)Chun K, Velanovich V. Patient―perceived cosmesis and satisfaction after breast biopsy:comparison of stereotactic incisional, excisional, and wire―localized biopsy techniques. Surgery. 2002;131(5):497―501. [PMID:12019401]

2)Sabel MS. Breast conserving therapy. UpToDate. 2017. https://www.uptodate.com/ontents/breast-conserving-therapy#H30

3)Estourgie SH, Valdés Olmos RA, Nieweg OE, Hoefnagel CA, Rutgers EJ, et al. Excision biopsy of breast lesions changes the pattern of lymphatic drainage. Br J Surg. 2007;94(9):1088―91. [PMID:17514636]

4)Dahabreh IJ, Wieland LS, Adam GP, Halladay C, Lau J, Trikalinos TA. Core needle and open surgical biopsy for diagnosis of breast lesions:an update to the 2009 report. Rockville(MD):Agency for Healthcare Research and Quality(US);2014 [PMID:25275206]

5)Bruening W, Schoelles K, Treadwell J, Launders J, Fontanarosa J, Tipton K. Comparative effectiveness of core―needle and open surgical biopsy for the diagnosis of breast lesions. Rockville(MD):Agency for Healthcare Research and Quality(US);2009. [PMID:20704042]

6)Bruening W, Fontanarosa J, Tipton K, Treadwell JR, Launders J, Schoelles K. Systematic review:comparative effectiveness of core―needle and open surgical biopsy to diagnose breast lesions. Ann Intern Med. 2010;152(4):238―46. [PMID:20008742]

保護中: 乳癌診療ガイドライン2018年版

PAGETOP
Copyright © 一般社団法人日本乳癌学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.