2021年3月31日更新

CQ14.閉経前ホルモン受容体陽性転移・再発乳癌に対する二次以降の内分泌療法として,何が推奨されるか?

2.転移・再発乳癌

推 奨
・LH-RHアゴニスト+フルベストラント+サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬の併用療法を行うことを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:中,合意率:91%(10/11)〕

・卵巣機能抑制を行い,アロマターゼ阻害薬などの閉経後に用いる内分泌療法薬との併用療法を行うことを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:弱,合意率:83%(10/12)〕

背景・目的

ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳癌に対する基本的な治療方針は,生命に差し迫った状況でなければ可能な限り内分泌療法を継続することである。一次内分泌療法抵抗性転移・再発乳癌の二次以降の内分泌療法として,どのような治療が推奨されるか検証した。二次内分泌療法の定義は「薬物療法2.転移・再発乳癌 総説」を参照のこと。

解 説

1)二次内分泌療法
(1)LH-RHアゴニスト+フルベストラント+サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬の併用療法について

二次内分泌療法では,一次内分泌療法で用いた薬の種類や効果に基づき薬剤選択を行うが(薬物BQ2参照),どの順序が適切かついてのエビデンスはないのが現状である。
閉経前転移・再発乳癌を含む,フルベストラントにサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)阻害薬の併用の有無を評価した質の高いランダム化比較試験は,パルボシクリブの有効性を検討したPALOMA-3試験と,アベマシクリブの有効性を検討したMONARCH-2試験がある1)2)

両試験とも閉経前患者に関して、一次内分泌療法を施行中もしくは終了後1ヶ月以内に病勢進行した転移乳癌と,タモキシフェンによる術後内分泌療法施行中もしくは終了後1年以内に再発を認めた症例を対象とするが、PALOMA-3試験では二次以降の内分泌療法後や前化学療法1レジメン以内が許容されるのに対し、MONARCH-2試験には含まれないという違いがある。

PALOMA-3試験の閉経前サブグループ解析(全症例の20.7%)において,無増悪生存期間(PFS)はパルボシクリブ併用群で有意に改善を認めた(パルボシクリブ群:9.5カ月,プラセボ群:5.6カ月,HR 0.50,95%CI 0.29-0.87)3)。全生存期間(OS)は、HR 1.07(95%CI 0.61-1.86)と延長傾向は認められなかった4)。そのほか、奏効率,クリニカルベネフィット率,化学療法を行うまでの期間においてパルボシクリブ併用群で有意な改善を認めた。

MONARCH-2試験での閉経前サブグループ(全症例の17.0%)については個別の論文で報告されていないが、PFSでは閉経前サブグループで併用群での改善が報告されている(HR0.42[95%CI 0.25-0.70])2)。OSは改善の傾向はあるものの有意差を認めていない(HR0.69[95%CI 0.38-1.25])5)

以上より、質の高いランダム化比較試験が2つ存在しているが、サブグループ解析であることを考慮しエビデンスの強さは「中」とした。

益と害のバランスについては,Grade 3以上の有害事象が有意にCDK4/6阻害薬併用群で高いが,併用によるPFS延長の大きさより益が害に優る可能性が考慮される。また,CDK4/6阻害薬併用による費用の増加に関しては,患者の希望にばらつきが出ることが予想される。

以上より,エビデンスの程度,益と害のバランス,患者の希望などを勘案し,推奨は「LH-RHアゴニスト+フルベストラント+サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬の併用療法を行うことを弱く推奨する」とした。

(2)卵巣機能抑制を行い,アロマターゼ阻害薬などの閉経後に用いる内分泌療法薬との併用療法について

タモキシフェン後の二次治療の閉経前乳癌患者を対象としたランダム化比較試験は,一つ報告されている。これは少数例のランダム化第2相試験であり,タモキシフェン前治療歴を有する閉経前ホルモン受容体陽性HER2陰性患者に対して,ゴセレリン単剤に対するゴセレリン+アナストロゾールの併用療法,又は,ゴセレリン単剤に対するゴセレリン+フルベストラントの併用療法の有効性を探索した3アームのランダム化比較試験(FLAG study)である。主要評価項目は,主治医判断のTTP(time to progression)であり,治療開始を起点として,初めての腫瘍の増大による悪化か,死亡(腫瘍増大の有無に関わらず)をイベントと定義した。この結果,TTP はゴセレリン単剤が13.5カ月であったのに対して、フルベストラント+ゴセレリンが16.3か月(p=0.049),ゴセレリン+アナストロゾールが14.5か月(p=0.937)と,フルベストラント併用のTTPが良好であった6)。奏効率は併用療法で高い結果であった。なお,フルベストラントの国内の添付文書では、用法・用量として、閉経前乳癌に対しては、LH-RHアゴニスト投与下でCDK4/6阻害薬と併用することとされている。また,LH-RHアゴニストと閉経後の内分泌療法(アロマターゼ阻害薬,フルベストラント)の有用性を検討した単一アーム前向きコホート研究の結果が報告されている7)8)。これらの試験において,卵巣機能抑制と内分泌療法の併用によってクリニカルベネフィットを6割前後の症例に認めている。

以上より、当該対象における治療成績は、新規のランダム化比較試験を含めても、少ない症例数の前向きコホート研究が中心であり、エビデンスの強さは「弱」とした。

一般的に内分泌療法は化学療法と比較して副作用が少ないため,益と害のバランスについては,益が勝ると考えられ,卵巣機能抑制を用いて閉経後の内分泌療法を併用することは,患者の希望等を考慮しても望ましい治療オプションである。患者の希望のばらつきは少ないと思われる。

以上より,エビデンスの程度,益と害のバランス,患者の希望などを勘案し,推奨は「卵巣機能抑制を行い,アロマターゼ阻害薬などの閉経後に用いる内分泌療法薬との併用療法を行うことを弱く推奨する」とした(薬物CQ16参照)。

2)三次内分泌療法以降

一般的に後のラインになるに従って,内分泌療法のクリニカルベネフィットは小さくなってくるが,一次治療,二次治療ともに内分泌療法によるクリニカルベネフィットが得られなかった症例や生命に差し迫った症例でない限り,使用していない機序の内分泌療法を順次に使用することも許容される。三次内分泌療法以降においても卵巣機能抑制を使用し閉経後の状態とし,前治療で使われていない薬剤(アロマターゼ阻害薬,フルベストラント+CDK4/6阻害薬の併用療法など)を用いる(薬物CQ16参照)。ほかに後期ラインで用いられる内分泌療法としてエストラジオールや酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)があるが,エストラジオールは血栓症や腟出血,MPAは血栓症や体重増加などの有害事象の面から上記の内分泌療法施行後に使用する9)~11)

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Neoplasm Metastasis”,“Neoplasm Recurrence, Local”, “Antineoplastic Combined Chemotherapy Protocols”, “Antineoplastic Agents, Hormonal”, “Tamoxifen”,”Toremifen”, “Aromatase Inhibitors”, “Premenopause”,”Adult”, “Gonadotropin-Releasing Hormone”,”Buserelin”, “Goserelin”, “Cyclin-Dependent Kinase 4”, “Cyclin-Dependent Kinase 6”のキーワードで検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は前回検索(2018年12月まで、415件)以後から2020年03月までとし,101件が新たにヒットした。一次,二次スクリーニングで追加すべきランダム化比較試験の初回報告は認めなかった。MONARCH-2のOS報告が新たに抽出されており、前回未採用のPALOMA-3 OS報告と合わせ新規に採用した。本CQは閉経前サブグループでの解釈となるためメタアナリシスは施行しなかった。

エビデンス総体システマティックレビュー

参考文献

1)Cristofanilli M, Turner NC, Bondarenko I, Ro J, Im SA, Masuda N, et al. Fulvestrant plus palbociclib versus fulvestrant plus placebo for treatment of hormone―receptor―positive, HER2―negative metastatic breast cancer that progressed on previous endocrine therapy(PALOMA―3):final analysis of the multicentre, double―blind, phase 3 randomised controlled trial. Lancet Oncol. 2016;17(4):425―39. [PMID:26947331]

2)Sledge GW Jr, Toi M, Neven P, Sohn J, Inoue K, Pivot X, et al. Abemaciclib in combination with fulvestrant in women with HR+/HER2― advanced breast cancer who had progressed while receiving endocrine therapy. J Clin Oncol. 2017;35(25):2875―84. [PMID:28580882]

3)Loibl S, Turner NC, Ro J, Cristofanilli M, Iwata H, Im SA, et al. Palbociclib combined with fulvestrant in premenopausal women with advanced breast cancer and prior progression on endocrine therapy:PALOMA―3 results. Oncologist. 2017;22(9):1028―38. [PMID:28652278]

4)Turner NC, Slamon DJ, Ro J, Bondarenko I, Im SA, Masuda N, et al. Overall Survival with Palbociclib and Fulvestrant in Advanced Breast Cancer. N Engl J Med. 2018 Nov 15;379(20):1926-1936.  [PMID: 30345905]

5) Sledge GW Jr, Toi M, Neven P, Sohn J, Inoue K, Pivot X, et al. The Effect of Abemaciclib Plus Fulvestrant on Overall Survival in Hormone Receptor-Positive, ERBB2-Negative Breast Cancer That Progressed on Endocrine Therapy-MONARCH 2: A Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2019 Sep 29;6(1):116-24. [PMID: 31563959]

6)Kim JY, Im SA, Jung KH, Ro J, Sohn J, Kim JH, et al: Fulvestrant plus goserelin versus anastrozole plus goserelin versus goserelin alone for hormone receptor-positive, HER2-negative tamoxifen-pretreated premenopausal women with recurrent or metastatic breast cancer (KCSG BR10-04): a multicentre, open-label, three-arm, randomised phase II trial (FLAG study). Eur J Cancer. 2018;103:127-136. [PMID:30223226]

7)Bartsch R, Bago―Horvath Z, Berghoff A, DeVries C, Pluschnig U, Dubsky P, et al. Ovarian function suppression and fulvestrant as endocrine therapy in premenopausal women with metastatic breast cancer. Eur J Cancer. 2012;48(13):1932―8. [PMID:22459763]

8)Nishimura R, Anan K, Yamamoto Y, Higaki K, Tanaka M, Shibuta K, et al. Efficacy of goserelin plus anastrozole in premenopausal women with advanced or recurrent breast cancer refractory to an LH―RH analogue with tamoxifen:results of the JMTO BC08―01 phaseⅡ trial. Oncol Rep. 2013;29(5):1707―13. [PMID:23446822]

9)Martoni A, Longhi A, Canova N, Pannuti F. High―dose medroxyprogesterone acetate versus oophorectomy as first―line therapy of advanced breast cancer in premenopausal patients. Oncology. 1991;48(1):1―6. [PMID:1824798]

10)Abrams J, Aisner J, Cirrincione C, Berry DA, Muss HB, Cooper MR, et al. Dose―response trial of megestrol acetate in advanced breast cancer:cancer and leukemia group B phase Ⅲ study 8741. J Clin Oncol. 1999;17(1):64―73. [PMID:10458219]

11)Ellis MJ, Gao F, Dehdashti F, Jeffe DB, Marcom PK, Carey LA, et al. Lower―dose vs high―dose oral estradiol therapy of hormone receptor―positive, aromatase inhibitor―resistant advanced breast cancer:a phase 2 randomized study. JAMA. 2009;302(7):774―80. [PMID:19690310]

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