2021年3月31日更新

FQ3.病理学的完全奏効(pCR)は無再発生存期間や全生存期間の代替エンドポイントとなるか?

1.初期治療

ステートメント
・一部のサブタイプを除いて病理学的完全奏効(pCR)は,良好な予後予測因子である。しかし薬剤の効果を評価するうえでpCRは無再発生存期間や全生存期間の代替エンドポイントとして確立していない。

背 景

術前化学療法を施行し,病理的完全奏効(pCR)が得られた症例と得られなかった症例で予後が異なる可能性について多くの臨床試験で言及されている。pCRが無病生存期間(DFS)や全生存期間(OS)の代替エンドポイントとなり予後予測に有効かを検討した(乳癌診療ガイドライン②疫学・診断編2018年版,病理BQ3参照)。

解 説

NSABP B-18試験やNSABP B-27試験など術前化学療法に関する臨床試験の解析では,原発巣がpCRとなった群とnon pCRの群で予後について追加報告がされている1)。NSABP B-18試験の16年のフォローアップデータではDFS(HR 0.47,p<0.0001),OS(HR 0.32,p<0.0001)ともにpCR群で予後が優れていた。また,NSABP B-27試験の8年フォローアップデータでもDFS(HR 0.49,p<0.0001),OS(HR 0.36,p<0.0001)ともにpCR群で予後が優れていた。

pCRの定義は試験ごとに異なるため,アンスラサイクリン系とタキサン系薬剤を用いた術前化学療法の7つの臨床試験の統合解析(n=6,337)でpCRの定義について検証された。このなかで,原発巣とリンパ節の両方における浸潤癌と非浸潤癌の消失(ypT0 ypN0)をpCRと定義した場合,non pCR群との比較で最も予後が反映されるとしている2)。この定義のもとで,サブタイプ別に予後を比較した結果,luminal B/HER2陰性,HER2陽性(non-luminal),トリプルネガティブではpCR群がnon pCR群に比較し予後良好であった。一方,luminal B/HER2陽性およびluminal Aでは予後に差を認めず,pCRと予後の関連についてはサブタイプごとに異なることが報告されている。HER2陽性乳癌を対象にpCRと予後の関連について,36試験(n=5,768)を含むメタアナリシスの報告がある。pCR群ではnon pCR群に比べて無イベント生存期間(EFS)のHR 0.37(95%CI 0.32-0.43)が良好であった。また,この差はホルモン受容体陰性の場合により顕著であった3)

2014年に米国食品医薬品局(FDA)からpCRと予後についてCTNeoBCプール解析(12試験,n=11,955)が報告された。このなかで,① pCRとEFS,OS関係,② 最適なpCRの定義,③ pCRと予後が相関する乳癌サブタイプ,④ pCR割合の高い治療でOS,EFSの改善が見込めるかについて検証されている。

pCRを原発巣の浸潤癌および非浸潤癌の消失とリンパ節転移の消失の両方(ypT0 ypN0)とすると,EFSのHR 0.48(95%CI 0.43-0.54),OSのHR 0.36(95%CI 0.31-0.42)と有意にpCR群で予後が良いことが示された。また,原発巣とリンパ節で浸潤癌が消失していれば,原発巣の非浸潤癌残存あり(ypT0/is ypN0),残存なし(ypT0 ypN0)いずれの定義でも予後を反映していた。サブタイプ別では,ホルモン受容体陽性・HER2陰性かつ組織学的グレード1/2のサブタイプでは,pCR群とnon pCR群とでEFSに有意差は認めず(HR 0.63,95%CI 0.38-1.04),ホルモン受容体陽性・HER2陰性かつ組織学的グレード3,HER2陽性かつホルモン受容体陰性,トリプルネガティブといった増殖力が高いと想定されるサブタイプではEFSのHRがそれぞれ0.27(95%CI 0.14-0.50),0.25(95%CI 0.18-0.34),0.24(95%CI 0.18-0.33)とpCR群で特に予後が良好であった。

これらの試験におけるpCRのオッズ比とEFSおよびOSのハザード比を重回帰分析したところ,決定係数(R2)は0.03(95%CI 0.00-0.25)および0.24(95%CI 0.00-0.70)と相関関係は示されていない。トリプルネガティブやHER2陽性などのサブタイプ別に,同様の検討がなされているが相関関係は示されなかった4)。本報告よりpCRが得られたケースでは予後が良好ではあるが,pCRオッズ比とEFSおよびOSのハザード比の相関は示されていないことから,pCRが治療効果予測の代替エンドポイントとは現時点で結論付けられない。

増殖力の低い一部のサブタイプを除いてpCRが得られた場合,良好な予後が期待できるが,高いpCRが期待できる治療によって治療群全体の予後が改善するとはいえない。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Prognosis”,“Disease―Free Survival”,“primary tumor response”,“overall survival”のキーワードと,“pathological complete response”の同義語で検索した。検索期間は2016年11月までとし,168件がヒットした。

参考文献

1) Rastogi P, Anderson SJ, Bear HD, Geyer CE, Kahlenberg MS, Robidoux A, et al. Preoperative chemotherapy:updates of National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project Protocols B―18 and B―27. J Clin Oncol. 2008;26(5):778―85. [PMID:18258986]

2) von Minckwitz G, Untch M, Blohmer JU, Costa SD, Eidtmann H, Fasching PA, et al. Definition and impact of pathologic complete response on prognosis after neoadjuvant chemotherapy in various intrinsic breast cancer subtypes. J Clin Oncol. 2012;30(15):1796―804. [PMID:22508812]

3) Broglio KR, Quintana M, Foster M, Olinger M, McGlothlin A, Berry SM, et al. Association of pathologic complete response to neoadjuvant therapy in HER2―positive breast cancer with long―term outcomes:a meta―analysis. JAMA Oncol. 2016;2(6):751―60. [PMID:26914222]

4)Cortazar P, Zhang L, Untch M, Mehta K, Costantino JP, Wolmark N, et al, Pazdur R, Ditsch N, Rastogi P, Eiermann W, von Minckwitz G. Pathological complete response and long―term clinical benefit in breast cancer:the CTNeoBC pooled analysis. Lancet. 2014;384(9938):164―72. [PMID:24529560]

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