2021年3月31日更新

FQ3.PET/乳房専用PETは高濃度乳房に対する乳がんマンモグラフィ検診の補助的乳がん検診モダリティとして勧められるか?

1.乳がん検診

ステートメント
・受診者が利益と不利益の十分な説明を受けて,それを理解したうえで任意型乳がん検診として選択することは否定されない。

背 景

Fluorine-18-fluorodeoxyglucose(FDG)を用いたPET検査(FDG-PET)はさまざまな悪性腫瘍の検出に優れ,その有用性が報告されている。日本ではFDG-PETを用いたがん検診が自由診療として行われている1)。近年は,乳房専用PET装置が登場しており,対向型およびリング型の2つのタイプに分類され,一部の装置はPEM(positron emission mammography)と呼ばれる。いずれも片側ずつの乳房のみをターゲットとして,近接した撮像を行うことによって,1.5~2.5 mm程度の細かい空間分解能での局所撮像が可能となり,小さな乳癌の検出に期待されている2)。今回フューチャーリサーチクエスチョン(FQ)として,高濃度乳房に対してマンモグラフィ検診の補助的乳がん検診モダリティとして勧められるかについて,現時点のエビデンスをもとに検討を行った。

解 説

Minamimotoらによる日本でのPETがん検診の報告では,62,054人の検診(全身用FDG―PETおよび他の検査を含む)で発見された161例の乳癌について,PETでの相対感度は83.9%,陽性適中度(positive predictive value;PPV)41.7%,マンモグラフィは相対感度77.5%,PPV 28.1%,超音波では相対感度84.0%,PPV 37.2%であり,FDG-PETでの相対感度はマンモグラフィより高く,超音波と同等であった。検査を組み合わせて行うことで乳癌の検出が増える利益が示されている3)

Caldarellaらによるメタアナリシスでは,乳癌が疑われる患者に対してPEMを行った際の検出感度は85%,特異度は79%であり,小さな浸潤癌や非浸潤性乳管癌(DCIS)も含めた検出が可能と報告されている4)。Yamamotoらによるわが国でのPEMによる任意型検診の報告では,265例を対象とした検査によってrecall rateが8.3%,癌検出率が2.3%,PPV 27.3%で,6例の乳癌がスクリーニングにより検出された5)

高濃度乳房とPETの関係については,正常乳腺組織自体にFDGが取り込まれるものの,PETでの病変の描出能低下は示されておらず6),高濃度乳房でも乳房専用PETで病変が明瞭に描出されたと報告されている5)

PETでの検診は自由診療として行われ,検査費用が高額のことが多い。PETでは検査1回につき2 mSv程度以下の被曝があり,また多くがPET/CTとして撮像されるためにCTによる被曝が2~12 mSv程度あるため1),受診者には被曝による不利益をよく説明し,納得のうえで検査を受けてもらう必要がある。

以上より,高濃度乳房においてPET/乳房専用PETをマンモグラフィ検診の補助的乳がん検診モダリティとして用いることの有効性は確立されていないものの,組み合わせて検査を行うことで乳癌の検出が増えることが考えられる。費用や被曝を含めた不利益を受診者が理解したうえで,任意型乳がん検診として選択することは否定されない。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Density”,“Positron Emission Tomography”,“Mammography”のキーワードで検索した。検索期間は2014年1月から2016年11月までとし,93件がヒットした。この他,ハンドサーチでの文献を追加した。さらに,2015年版「検診CQ7.FDG―PETは乳癌検診に勧められるか」を参考にした。

参考文献

1)日本核医学会,日本核医学会PET核医学分科会.FDG―PETがん検診ガイドライン.2012改訂版.2012.

2)日本核医学会編.乳房専用PET診療ガイドライン.2013.http://www.jsnm.org/archives/759/

3)Minamimoto R, Senda M, Jinnouchi S, Terauchi T, Yoshida T, Inoue T. Detection of breast cancer in an FDG―PET cancer screening program:results of a nationwide Japanese survey. Clin Breast Cancer. 2015;15(2):e139―46. [PMID:25454690]

4)Caldarella C, Treglia G, Giordano A. Diagnostic performance of dedicated positron emission mammography using fluorine―18―fluorodeoxyglucose in women with suspicious breast lesions:a meta―analysis. Clin Breast Cancer. 2014;14(4):241―8. [PMID:24472718]

5)Yamamoto Y, Tasaki Y, Kuwada Y, Ozawa Y, Inoue T. A preliminary report of breast cancer screening by positron emission mammography. Ann Nucl Med. 2016;30(2):130―7. [PMID:26586370]

6)Koo HR, Moon WK, Chun IK, Eo JS, Jeyanth JX, Chang JM, et al. Background 18F―FDG uptake in positron emission mammography(PEM):correlation with mammographic density and background parenchymal enhancement in breast MRI. Eur J Radiol. 2013;82(10):1738―42. [PMID:23806533]

保護中: 乳癌診療ガイドライン2018年版

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