2021年3月31日更新

FQ20.閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移・再発乳癌の二次内分泌療法として何が推奨されるか?(一次内分泌療法として、アロマターゼ阻害薬単剤を行った場合はCQ16参照)

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2.転移・再発乳癌

ステートメント

FQ20a. 一次内分泌療法として、アロマターゼ阻害薬とサイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬の併用療法を行った場合
・二次内分泌療法として最適な治療法は確立していない。
・未使用の内分泌療法(分子標的治療薬の併用を含む)を行うことを考慮してもよい。
・サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬の再投与を支持するデータは存在しない。
・耐性機序を考慮した臨床試験が進行中である。

FQ20b. 一次内分泌療法として、フルベストラント単剤療法を実施した場合
・二次内分泌療法として最適な治療法は確立していない。
・未使用の内分泌療法(サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬等の分子標的治療薬の併用を含む)を行うことを考慮してもよい。

背 景

CQ15で示したように、閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+HER2-)転移・再発乳癌に対する一次内分泌療法として、アロマターゼ阻害薬(AI)とサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬の併用療法、フルベストラント単剤療法、AI単剤療法の3つが挙げられている。二次治療以降も, 生命を脅かす病変がなく1), 内分泌療法感受性が残っていると判断される場合は, 化学療法と比較して副作用がより少ない内分泌療法を継続することが勧められる2)

CQ16で示したように、AI単剤療法に抵抗性の場合は二次内分泌療法でのランダム化比較試験(RCT)が実施されているが、一次内分泌療法としてAIとCDK4/6阻害薬の併用療法を使用した場合、またはフルベストラント単剤療法を実施した場合の二次内分泌療法に関する臨床試験データは乏しい。

解 説

(1)一次内分泌療法として、アロマターゼ阻害薬とサイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬の併用療法を行った場合

これまでに、一次内分泌治療としてAIとCDK4/6阻害薬の併用療法が実施された場合の二次内分泌療法に関したランダム化比較第Ⅲ相試験は報告されていない。そのため、最適な内分泌療法は確立していない。

一方で、CDK4/6阻害薬の耐性機序については、これまで基礎研究やRCTの附随研究に基づいて多くの機序が報告されている。具体的には、PTEN/PI3K/AKT/mTOR経路の活性化、ESR1 mutation、RB1 loss、FAT1 loss of function、FGFRのamplificationやoverexpression、MAPK経路の活性化、CCNE overexpressionなどである。現在、これら耐性機序に基づいた薬剤が開発されている。以下に、PI3K阻害薬、ESR1変異をターゲットとした薬剤、またCDK4/6阻害薬の病勢進行後の継続投与について解説する。

1)CDK4/6阻害薬既治療例に対するPTEN/PI3K/AKT/mTOR経路阻害に関して
少数のCDK4/6阻害薬既治療例を含んだ国際共同第Ⅲ相二重盲検比較試験として、SOLAR-1試験が存在する。閉経後AI抵抗性のHR+HER2-乳癌患者572名を対象とし、PI3Kα阻害薬であるalpelisibとフルベストラント併用群とプラセボとフルベストラント群の比較が行われた。主要評価項目である、腫瘍組織でのPIK3CA変異陽性群(n=341)におけるPFSは、alpelisib群が11.0カ月に対してプラセボ群が5.7カ月、Hazard Ratio(HR)0.65(95%信頼区間(CI) 0.50-0.85)と、有意にalpelisib群で延長を認めた。またPIK3CA変異陽性でのCDK4/6阻害薬既治療例(20例, 5.9%)においても、全体集団と同様にalpelisib群に良好な結果であった。SOLAR-1試験には日本人も参加したが、本邦では現時点でalpelisibの承認申請には至っていない。
また、国際共同第Ⅱ相非盲検非比較試験(BYLieve試験NCT03056755)では、PIK3CA変異を有し、直前にAIとCDK4/6阻害薬が投与されたHR+HER2-転移再発乳癌患者に対するalpelisibとフルベストラント併用(閉経前はLH-RHアゴニスト併用)の効果が検討されている。主要評価項目は6ヵ月時点で病勢進行なく生存している割合(PFR)であり、95%CIの下限が30%以上を臨床的に意義があるとした。127名が登録され、89%の症例が転移再発乳癌に対する内分泌療法が1レジメン以下の症例であった。PIK3CA変異が確認された121名で有効性が評価され、6ヵ月時点のPFRは50.4%(95%CI 41.2-59.6)であり、主要評価項目を満たした。

2)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のESR1遺伝子変異に関して
AIとCDK4/6阻害薬併用療法の耐性機序の一つとしてESR1遺伝子変異が考えられている。ESR1変異陽性乳癌に対しても効果が期待されている薬剤として経口選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)が存在する。内分泌療法歴が2ライン以下の、CDK4/6阻害薬と内分泌療法(AIかフルベストラント)併用療法中に病勢進行した症例に対して、経口SERDであるelacestrantと、その他の内分泌療法(AIかフルベストラント)の治療効果を比較する、ランダム化比較第Ⅲ相試験EMERALD試験(NCT03778931)が進行中である。この試験の主要評価項目は、ESR1変異陽性症例でのPFSである。

3)AIとCDK4/6阻害薬併用療法後のCDK4/6阻害薬を継続に関して
AIとCDK4/6阻害薬併用療法後に病勢進行した場合、二次内分泌療法でCDK4/6阻害薬を継続する意義は不明である。現在、ランダム化第II相試験としてMAINTAIN試験、PACE試験やPALMIRA試験などが進行中である(表参照)。

表:AIとCDK4/6阻害薬併用療法後に病勢進行後にCDK4/6阻害薬を継続することを検討するランダム化試験

試験番号 フェーズ 前治療 治療アーム(*が試験治療群) 主要評価項目
NCT02632045
(MAINTAIN)
AI+パルボシクリブまたはribociclib ①     Ribociclib+FUL*
②     Placebo+FUL
24週時点無増悪割合
NCT03147287
(PACE)
CDK4/6阻害薬+内分泌療法(内分泌療法は1-2レジメン) ①     パルボシクリブ+FUL*
②     パルボシクリブ+FUL+Avelumab*
③     FUL
PFS
NCT03809988
(PALMIRA)
AIまたはFUL+パルボシクリブ(clinical benefitを得ている) ①     パルボシクリブ+FULまたはレトロゾール*
②     FULまたはレトロゾール
PFS

AI, aromatase inhibitor; FUL, fulvestrant; CDK4/6, cyclin-dependent kinase 4 and 6;
# (パルボシクリブ、アベマシクリブまたはribociclib)

(2)フルベストラント単剤に治療抵抗性の場合

これまでに、一次内分泌治療としてフルベストラント単剤療法が実施された場合の、二次内分泌療法に関したランダム化比較第Ⅲ相試験は報告されていない。そのため、最適な内分泌療法は確立していない。

その場合、実臨床においては、AIとCDK4/6阻害薬の併用療法、フルベストラントとのCDK4/6阻害薬の併用療法、AI単剤、タモキシフェン単剤等が候補となることが想定される。CDK4/6阻害薬と内分泌療法薬(AIやフルベストラント)との併用に関しては、益と害のバランスを症例毎に検討したうえで考慮してもよい。

フルベストラント使用中に病勢進行した場合、フルベストラントにCDK4/6阻害薬を追加することの有効性を検証したRCTは報告されていない。一方で、前治療で用いた内分泌療法を継続の上、CDK4/6阻害薬を上乗せすることを検討した前向き試験として、TREnd試験が報告されている。TREnd試験は、HR+HER2-の転移性乳癌で、化学療法1レジメン以下、1-2レジメンの内分泌療法歴を有し、直近の内分泌療法としてAIかフルベストラント使用中に病勢進行した症例を対象とした第Ⅱ相試験である。パルボシクリブ単剤群(n=57)と、パルボシクリブを直前の内分泌療法に上乗せする併用群(n=58)にランダムに割り付けられ、clinical benefit rate(CBR) 40%を期待奏効として、各群が独立して評価された。この結果、併用群全体のCBRは54%であり、主要評価項目は満たしたが、フルベストラント使用歴や前治療数など、サブグループの詳細は報告されていない。探索的な検討として報告された併用群のPFS中央値は、10.8ヵ月(95% CI 5.6-12.7)であったが、特に前治療の内分泌療法が6ヵ月より長く投与された症例でPFSが長い傾向であった。

RCTではないが、本邦の前向き試験として、フルベストラント使用中に病勢進行した症例に対してパルボシクリブ追加の有効性を検討するJBCRG-M07(FUTURE試験;jRCTs021180028)が登録終了している。

検索キーワード・参考にした二次資料

ClinicalTrial.govにおいて“Palbociclib”,“Abemaciclib”,“Ribociclib”,のキーワードと,“Breast Cancer Metastatic”の同義語で検索し、FQに関係した臨床試験を抽出した。
また、ハンドサーチによるCDK4/6阻害薬に関したレビューに基づいた論文とASCO2020の抄録等をもとに、解説文の作成を行った。

参考文献

1) Erik S Knudsen, Geoffrey I Shapiro, Khandan Keyomarsi , et al.
Selective CDK4/6 Inhibitors: Biologic Outcomes, Determinants of Sensitivity, Mechanisms of Resistance, Combinatorial Approaches, and Pharmacodynamic Biomarkers.
Am Soc Clin Oncol Educ Book . 2020 May;40:115-126.

2) Seth A Wander, Ofir Cohen, Xueqian Gong, et al.
The Genomic Landscape of Intrinsic and Acquired Resistance to Cyclin-Dependent Kinase 4/6 Inhibitors in Patients With Hormone Receptor Positive Metastatic Breast Cancer
Cancer Discov . 2020 May 13;CD-19-1390. doi: 10.1158/2159-8290.CD-19-1390. Online ahead of print.

3) Fabrice André, Eva Ciruelos, Gabor Rubovszkyet et al.
Alpelisib for PIK3CA-Mutated, Hormone Receptor-Positive Advanced Breast Cancer.
N Engl J Med. 2019;380(20):1929–40

4) Hope S. Rugo, Manuel Ruiz Borrego, Stephen K. L. Chia, et al.
Alpelisib (ALP) + endocrine therapy (ET) in patients (pts) with PIK3CA-mutated hormone receptor-positive (HR+), human epidermal growth factor-2-negative (HER2-) advanced breast cancer (ABC): First interim BYLieve study results.
Journal of Clinical Oncology 37, no. 15_suppl(May 20, 2019)1040-1040.

5) L Malorni, G Curiglian , A M Minisini, et al.
Palbociclib as Single Agent or in Combination With the Endocrine Therapy Received Before Disease Progression for Estrogen Receptor-Positive, HER2-negative Metastatic Breast Cancer: TREnd Trial
Ann Oncol. 2018 Aug 1;29(8):1748-1754.

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