2021年3月31日更新

CQ7.StageⅠ・Ⅱ乳癌の術前にCT,PET,PET-CTによる全身検索は推奨されるか?

2.乳癌の精密検査(治療前)

推 奨
・Stage Ⅰ・Ⅱ乳癌の術前にCT,PET,PET-CTによる全身検索を行わないことを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:3,エビデンスの強さ:とても弱い,合意率:92%(11/12)〕

背景・目的

一般に乳癌患者に対して術前にCT,PETやPET-CTによる全身検索が施行されることが多い。Stage Ⅰ・Ⅱ乳癌の術前に検査を行うことを推奨すべきかどうか,益のアウトカムと害のアウトカムを含めて検討を行った。

解 説

今回の検討では,全生存期間の改善,遠隔転移巣の検出,偶発病変の検出,および被曝の増加をアウトカムとして設定し,下記に記載した検索条件で参考文献を参照した。

全生存期間の改善に関しては,検索の範囲では該当する論文はなかった。

遠隔転移巣の検出については,参照した論文全体でStage Ⅰ・Ⅱで検査が行われた患者のうち2.6%(26/1,018人)で発見されていた1)~8)。Stageごとの内訳がわかるものでは,Stage Ⅰでは0.4%(2/493人),Stage ⅡAでは5.3%(4/76人),Stage ⅡBでは10.9%(13/119人),Stage Ⅱ全体では6.9%(7/347人)で遠隔転移が発見されていた。Stage Ⅰでは遠隔転移の検出は極めて少なく,Stage Ⅱでは遠隔転移の検出がやや増えていた。

偶発病変の検出については,参照した論文全体で2.9%(15/521人)において他部位の原発性悪性腫瘍が発見されていた5)~8)

以上より,症状のないStage Ⅰ・Ⅱ乳癌患者において遠隔転移が存在する頻度は少なく,検査を行うことで生存率が上昇するエビデンスは存在していないため,全身検索を行うことの意義は高くはない。

40歳未満の初発乳癌患者においては,FDG-PET/CTによってStage Ⅰで5%(1/20人),Stage ⅡAで5%(2/44人),Stage ⅡBで17%(8/47人)に遠隔転移が見つかったという報告もあり,若年者においては症状がない場合でも施行することが,生存率や不要なコストや治療の削減に役立つ可能性がある8)。Stage Ⅱ患者のサブタイプ別解析では,骨転移および肝転移がLuminal B(HER2陽性),HER2過剰発現およびBasal―likeに,肺転移がBasal―likeサブタイプにおいて検出されることが多く,転移の早期検出目的に術前検査を施行することが役立つ場合があるという報告もある9)。また,遠隔転移や他部位の原発性悪性腫瘍が検出されることによって,治療方法が変更となることがある。

FDG-PET/CTによって手術する前に遠隔転移が診断されれば,Stage Ⅳとなるので手術(原発巣切除)は害となる可能性が高く,その手術を回避できるためFDG-PET/CT施行のメリットは大きい。転移の検索において,胸腹部CTは感度87~100%(中央値100%),特異度86~98%(中央値93.1%),FDG-PETでは感度78~100%(中央値100%),特異度82~100%(中央値96.5%),FDG-PET/CTでは感度96~100%(中央値100%),特異度91~100%(中央値98.1%)という高い診断能が報告されている1)が,少ない頻度でも偽陽性の可能性がある。その場合に確定診断のために生検も必要となる場合が想定され,不要な侵襲が患者に加わる可能性も考えられる。さらに無症状の転移巣をFDG-PET/CTで早期診断できたとしてもStage Ⅳ乳癌は完治しないためFDG-PET/CTの遠隔転移の早期診断が生存率に寄与するかは疑問が残る。

害のアウトカムとして,術前の一度の検査ではあるがCTやPETによる被曝が考えられる。検索した範囲ではこれらについてのエビデンスを示す論文はなかった。

費用に関しては,欧米よりはるかに安い検査費用であるが客観的な評価は困難である。

以上より,遠隔転移率の低いStage Ⅰ,Ⅱの初発乳癌に対しては,遠隔転移が見つかり無用な手術を回避できる益と,偽陽性による不要な侵襲,費用負担,被曝などの害のバランスから,害が益より上回る可能性が大きいと考えられる。ただし,患者の中には検査を希望する方もおり,益と害を患者に十分に説明して主治医もその必要性があると判断される場合は行うことも可能であるが,遠隔転移率の低いStage Ⅰ,Ⅱの初発乳癌に対しては術前にCT,PET,PET-CTによる全身検索は原則行わないことを推奨する。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Preoperative Period”,“Preoperative Care”,“Diagnosis”,“Diagnostic Imaging”,“Tomography,X―Ray Computed”,“Positron―Emission Tomography”,“Neoplasm Staging”のキーワードで検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,188件がヒットした。また,2015年版「画像診断CQ9.術前検査として肝臓超音波検査,胸腹部CT,骨シンチグラフィ,FDG―PETは勧められるか」を参考にし,参考文献およびそれらの引用文献を検索した。

エビデンス総体システマティックレビュー資料

参考文献

1)Brennan ME, Houssami N. Evaluation of the evidence on staging imaging for detection of asymptomatic distant metastases in newly diagnosed breast cancer. Breast. 2012;21(2):112―23. [PMID:22094116]

2)Cochet A, Dygai―Cochet I, Riedinger JM, Humbert O, Berriolo―Riedinger A, Toubeau M, et al. 18F―FDG PET/CT provides powerful prognostic stratification in the primary staging of large breast cancer when compared with conventional explorations. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2014;41(3):428―37. [PMID:24196916]

3)Schirrmeister H, Kuhn T, Guhlmann A, Santjohanser C, Horster T, Nussle K, et al. Fluorine―18 2―deoxy―2―fluoro―D―glucose PET in the preoperative staging of breast cancer:comparison with the standard staging procedures. Eur J Nucl Med. 2001;28(3):351―8. [PMID:11315604]

4)Groheux D, Moretti JL, Baillet G, Espie M, Giacchetti S, Hindie E, et al. Effect of 18F―FDG PET/CT imaging in patients with clinical Stage Ⅱ and Ⅲ breast cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008;71(3):695―704. [PMID:18436392]

5)Riegger C, Herrmann J, Nagarajah J, Hecktor J, Kuemmel S, Otterbach F, et al. Whole―body FDG PET/CT is more accurate than conventional imaging for staging primary breast cancer patients. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2012;39(5):852―63. [PMID:22392069]

6)Jeong YJ, Kang DY, Yoon HJ, Son HJ. Additional value of F―18FDG PET/CT for initial staging in breast cancer with clinically negative axillary nodes. Breast Cancer Res Treat. 2014;145(1):137―42. [PMID:24682676]

7)Bernsdorf M, Berthelsen AK, Wielenga VT, Kroman N, Teilum D, Binderup T, et al. Preoperative PET/CT in early―stage breast cancer. Ann Oncol. 2012;23(9):2277―82. [PMID:22357250]

8)Riedl CC, Slobod E, Jochelson M, Morrow M, Goldman DA, Gonen M, et al. Retrospective analysis of 18F―FDG PET/CT for staging asymptomatic breast cancer patients younger than 40 years. J Nucl Med. 2014;55(10):1578―83. [PMID:25214641]

9)Chen X, Sun L, Cong Y, Zhang T, Lin Q, Meng Q, et al. Baseline staging tests based on molecular subtype is necessary for newly diagnosed breast cancer. J Exp Clin Cancer Res. 2014;33:28. [PMID:24628817]

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