2021年3月31日更新

CQ5.ホルモン受容体陽性非浸潤性乳管癌に対して術後内分泌療法は推奨されるか?

1.初期治療

推 奨
・ホルモン受容体陽性非浸潤性乳管癌の乳房温存手術後に,閉経前であればタモキシフェンの投与を,閉経後であればタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬の投与を弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:中,合意率:83%(10/12)〕

背景・目的

非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ;DCIS)に対する術後内分泌療法の意義について検討した(乳癌診療ガイドライン②疫学・診断編2018年版,病理FQ2参照)。

解 説

非浸潤性乳管癌に対する乳房温存手術後の内分泌療法(タモキシフェン)に関して,2つのプラセボコントロールのランダム化比較試験(UK/ANZ DCIS試験1),NSABP B-24試験2))が報告されている。術後タモキシフェン5年投与による再発抑制効果は,温存乳房内の浸潤癌再発(HR 0.79,95%CI 0.62-1.03),DFS(HR 0.75,95%CI 0.62-0.91),OS(HR 1.12,95%CI 0.88-1.44)の結果であり,浸潤癌の再発を減少させる有意な効果は認めないもののDFSを改善する(図1)。なお,NSABP B-24試験3)で有害事象が報告されている。タモキシフェン群(891人)はプラセボ群(890人)と比較し,有害事象の全グレードで治療関連有害事象の発生はそれぞれ381人(42.7%)と328人(36.9%)で有意に増加する(リスク比 1.16,p=0.01)。Grade 3,4の重篤な有害事象は48人(5.4%)と38人(4.3%)であり有意差は認めない。子宮内膜癌のリスク比は2.09,(95%CI 0.85-5.13)と増加傾向であるが,発症数はそれぞれ22例と15例と少なく有意差は認めない結果であった(RR 2.33,95%CI 0.61-8.99)。

非浸潤性乳管癌に対する乳房温存手術後の内分泌療法(アロマターゼ阻害薬)に対しては,閉経後女性を対象に,アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの5年内服を比較した2試験(IBIS-Ⅱ DCIS試験4),NSABP B-35試験5)が報告されている。術後アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンによる再発抑制効果は,温存乳房内の浸潤癌再発(HR 0.85,95%CI 0.55-1.32),DFS(HR 0.89,95%CI 0.75-1.05),OS(HR 1.07,95%CI 0.83-1.51)の結果であり,浸潤癌の再発および生存期間を低下させる有意な効果は認めなかった(図2)。なお,有害事象は同等(HR 0.97,95%CI 0.80-1.16)であるが,有害事象のプロファイル(骨折,関節痛,骨粗鬆症,高脂血症,一過性虚血性発作,腟乾燥など)は異なっていた。

UK/ANZ DCIS試験は,オープンラベルの試験であること,温存乳房への放射線が必須ではないこと,NSABP B-24試験では断端陽性症例も含まれることなどから,エビデンスの強さは「中」とした。

 

 

DCISに対する乳房温存手術後の内分泌療法は,乳房内再発抑制が目的であり,OSには影響しないため,費用や有害事象によるQOL低下を考慮すると,患者の希望のばらつきは大きいと考えられた。

推奨決定会議では,1回目および2回目の投票は,「行うことを弱く推奨する」,および,「行わないことを弱く推奨する」は,それぞれ合意率67%(8/12),33%(4/12)であり,意見が分かれた。ASCOガイドラインを踏まえたディスカッション後に行われた3回目の投票では,「行うことを弱く推奨する」83%(10/12),「行わないことを弱く推奨する」17%(2/12)という結果となった。

以上より,エビデンスの程度,益と害のバランス,患者の希望などを勘案し,推奨は「ホルモン受容体陽性非浸潤性乳管癌の乳房温存手術後に,閉経前であればタモキシフェンの投与を,閉経後であればタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬の投与を弱く推奨する」とした。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Carcinoma, Intraductal, Noninfiltrating”,“Carcinoma, Ductal, Breast”,“Carcinoma in Situ”,“Carcinoma, Lobular”,“Chemotherapy, Adjuvant”,“Antineoplastic Agents, Hormonal”,“Tamoxifen”,“Aromatase Inhibitors”,“Letrozole”,“Anastrozole”,“Exemestane”のキーワードで検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,336件がヒットした。一次スクリーニングで23編の論文を抽出し,二次スクリーニングで内容を検討し,最終的に5編の論文を抽出した。ホルモン受容体陽性DCISに対する術後内分泌療法によって無浸潤癌乳房内再発率,全生存期間の改善,治療関連有害事象に関して定性的システマティック・レビューを行った。

エビデンス総体システマティックレビューメタアナリシス

参考文献

1)Cuzick J, Sestak I, Pinder SE, Ellis IO, Forsyth S, Bundred NJ, et al. Effect of tamoxifen and radiotherapy in women with locally excised ductal carcinoma in situ:long―term results from the UK/ANZ DCIS trial. Lancet Oncol. 2011;12(1):21―9. [PMID:21145284]

2)Allred DC, Anderson SJ, Paik S, Wickerham DL, Nagtegaal ID, Swain SM, et al. Adjuvant tamoxifen reduces subsequent breast cancer in women with estrogen receptor―positive ductal carcinoma in situ:a study based on NSABP protocol B―24. J Clin Oncol. 2012;30(12):1268―73. [PMID:22393101]

3)Fisher B, Dignam J, Wolmark N, Wickerham DL, Fisher ER, Mamounas E, et al. Tamoxifen in treatment of intraductal breast cancer:National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project B―24 randomised controlled trial. Lancet. 1999;353(9169):1993―2000. [PMID:10376613]

4)Forbes JF, Sestak I, Howell A, Bonanni B, Bundred N, Levy C, et al;IBIS―Ⅱ investigators. Anastrozole versus tamoxifen for the prevention of locoregional and contralateral breast cancer in postmenopausal women with locally excised ductal carcinoma in situ(IBIS―Ⅱ DCIS):a double―blind, randomised controlled trial. Lancet. 2016;387(10021):866―73. [PMID:26686313]

5)Margolese RG, Cecchini RS, Julian TB, Ganz PA, Costantino JP, Vallow LA, et al. Anastrozole versus tamoxifen in postmenopausal women with ductal carcinoma i situ undergoing lumpectomy plus radiotherapy(NSABP B―35):a randomised, double―blind, phase 3 clinical trial. Lancet. 2016;387(10021):849―56. [PMID:26686957]

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