2021年3月31日更新

CQ12.ホルモン受容体陽性・HER2陰性乳癌に対する術後化学療法の適応を検討する因子としてKi67は推奨されるか?

1.初期治療

推 奨
・ホルモン受容体陽性・HER2陰性乳癌に対する術後化学療法の適応を検討する因子の一つとして,Ki67を考慮することを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスレベルの強さ:弱,合意率:100%(12/12)〕

背景・目的

ホルモン受容体陽性・HER2陰性乳癌には,化学療法が予後に影響を与える集団と与えない集団があると考えられ,どちらの集団に属するかを同定することは重要である。そのためにKi67が有用な因子かどうかを検証した(乳癌診療ガイドライン②疫学・予防2018年版,病理FQ1参照)。

解 説

ホルモン受容体陽性・HER2陰性乳癌で,Ki67値を基準に術後化学療法施行を決定することの意義について検証したランダム化比較試験(RCT)の報告はない。そこで,Ki67が予後因子や化学療法の効果予測因子となるかについて定性的システマティック・レビューを行った。

Ki67と予後との相関の検証は,5つのメタアナリシスが報告されている。Vialeら1)は術後内分泌療法単独と化学内分泌療法を比較した2試験(n=2,732)で検証し,閉経前の症例でハザード比1.66(95%CI 1.20-2.29),閉経後の症例でハザード比1.60(95%CI 1.26-2.03)とKi67高値で有意にDFSが不良であることが示された。Azambujaら2)は46試験(n=12,155),Stuart-Harissら3)は43試験(n=15,790)のデータを用いたメタアナリシスをそれぞれ施行している。その結果,DFS(HR 1.93,HR 2.18)とOS(HR 1.95,HR 2.09)ともにKi67高値で有意に不良であった。2015年に報告された41試験(n=64,196)を解析したシステマティック・レビューでは,Ki67のカットオフ値を25%とした場合,Ki67高値ではハザード比1.55(95%CI 1.29-1.86)とOSが有意に不良であった4)。本研究ではエストロゲン受容体陽性症例に限定した解析も行われ,ハザード比1.51(95%CI 1.25-1.81)とKi67高値が有意な予後不良因子であることが示された。Colozzaらによる15試験(n=5,137)を用いたメタアナリシスでもKi67高値がDFS不良やOS不良と相関があることが示された5)。これらの検証から,Ki67高値は有意な予後不良因子であるといえるが,5つのメタアナリシスはホルモン受容体陽性・HER2陰性乳癌に限定した解析ではないことやKi67のカットオフ値や測定法がさまざまであることを留意する必要がある。

次にKi67が化学療法の効果予測因子となるかについて,RCTの後解析として5つの研究が報告されている。後解析のため,Ki67高値と低値で対象が不均一となっている可能性がある。また,Ki67のカットオフ値や測定法も研究により異なっている(乳癌診療ガイドライン②疫学・診断編2018年版,病理FQ1参照)。

Vialeら1)は,2つのRCTを用いてホルモン受容体陽性症例で術後内分泌療法へのCMF追加効果とKi67陽性率との関係を調べたが相関は示されなかった。一方,エストロゲン受容体陽性症例における,術後化学療法としてのタキサンの追加効果について,Ki67高値の症例ではアンスラサイクリンへのドセタキセル上乗せ効果が認められ,Ki67低値では上乗せ効果が認められないとの報告がある6)~8)。また,ATAC試験の後解析において,Ki67とエストロゲン受容体,プロゲステロン受容体,HER2の発現状況を免疫組織化学法で評価し,この4つの因子をスコア化したIHC 4スコアが,Oncotype DXのrecurrence score(RS)と強い相関を示した9)。近年,RSは化学療法感受性の指標としての有用性が示されつつあり,Ki67が含まれるIHC 4スコアについても同様の可能性が示唆される。しかし,以上の研究報告結果からは,Ki67と術後化学療法の感受性との相関について一定の結論は得られない。

Ki67高値が予後不良因子であることは,留意すべき制約はあるものの多くの報告から一貫した得られた結果であるKi67と化学療法感受性の相関は一貫してない。化学療法の適応を判断する因子としては,予後因子であることと化学療法の効果予測因子であることのいずれの要素も重要であるが,Ki67は予後因子としての意義のみが概ね確立されているにすぎない。しかし,予後因子についての大規模なメタアナリシスは,異質性が高い試験が多くバイアスリスクが低いとはいえず,エビデンスの強さは「弱」とした。

また,術後化学療法を検討する因子の一つにKi67の評価を利用することは,害やコストの観点から問題となる点はない。患者希望は一貫していると考えられる。

以上より,エビデンスの程度,益と害のバランス,患者の希望などを勘案し,推奨は「ホルモン受容体陽性・HER2陰性乳癌に対する術後化学療法の適応を検討する因子の一つとして,Ki67を考慮することを弱く推奨する」とした。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Ki―67 Antigen”のキーワードで検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,352件がヒットした。二次スクリーニングまで残った論文はなかった。そこで,ハンドサーチで本CQの主旨にあった論文を検索し9編の論文から定性的システマティック・レビューを行った。

システマティックレビュー

参考文献

1)Viale G, Regan MM, Mastropasqua MG, Maffini F, Maiorano E, Colleoni M, et al;International Breast Cancer Study Group. Predictive value of tumor Ki―67 expression in two randomized trials of adjuvant chemoendocrine therapy for node―negative breast cancer. J Natl Cancer Inst. 2008;100(3):207―12. [PMID:18230798]

2)de Azambuja E, Cardoso F, de Castro G Jr, Colozza M, Mano MS, Durbecq V, et al. Ki―67 as prognostic marker in early breast cancer:a meta―analysis of published studies involving 12,155 patients. Br J Cancer. 2007;96(10):1504―13. [PMID:17453008]

3)Stuart―Harris R, Caldas C, Pinder SE, Pharoah P. Proliferation markers and survival in early breast cancer:a systematic review and meta―analysis of 85 studies in 32,825 patients. Breast. 2008;17(4):323―34. [PMID:18455396]

4)Petrelli F, Viale G, Cabiddu M, Barni S. Prognostic value of different cut―off levels of Ki―67 in breast cancer:a systematic review and meta―analysis of 64,196 patients. Breast Cancer Res Treat. 2015;153(3):477―91. [PMID:26341751]

5)Colozza M, Azambuja E, Cardoso F, Sotiriou C, Larsimont D, Piccart MJ. Proliferative markers as prognostic and predictive tools in early breast cancer:where are we now? Ann Oncol. 2005;16(11):1723―39. [PMID:15980158]

6)Penault―Llorca F, André F, Sagan C, Lacroix―Triki M, Denoux Y, Verriele V, et al. Ki67 expression and docetaxel efficacy in patients with estrogen receptor―positive breast cancer. J Clin Oncol. 2009;27(17):2809―15. [PMID:19380452]

7)Hugh J, Hanson J, Cheang MC, Nielsen TO, Perou CM, Dumontet C, et al. Breast cancer subtypes and response to docetaxel in node―positive breast cancer:use of an immunohistochemical definition in the BCIRG 001 trial. J Clin Oncol. 2009;27(8):1168―76. [PMID:19204205]

8)Sonnenblick A, Francis PA, Azim HA Jr, de Azambuja E, Nordenskjöld B, Gutiérez J, et al. Final 10―year results of the Breast International Group 2―98 phase Ⅲ trial and the role of Ki67 in predicting benefit of adjuvant docetaxel in patients with oestrogen receptor positive breast cancer. Eur J Cancer. 2015;51(12):1481―9. [PMID:26074397]

9)Cuzick J, Dowsett M, Pineda S, Wale C, Salter J, Quinn E, et al. Prognostic value of a combined estrogen receptor, progesterone receptor, Ki―67, and human epidermal growth factor receptor 2 immunohistochemical score and comparison with the Genomic Health recurrence score in early breast cancer. J Clin Oncol. 2011;29(32):4273―8. [PMID:21990413]

乳癌診療ガイドライン

PAGETOP
Copyright © 一般社団法人日本乳癌学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.