2021年3月31日更新

BQ1.乳房の病変の確定診断のために,穿刺吸引細胞診(FNA),針生検(CNB),吸引式乳房組織生検(VAB)のいずれのアプローチを最初に行うのがよいか?

病理診断

ステートメント
・非触知石灰化病変に対しては,診断精度が高いCNBやVABが勧められる。
・臨床的に良性が疑われる腫瘤に対しては,診断精度が比較的高く,費用が安価なFNAを行うことを考慮する。
・臨床的に悪性が疑われる腫瘤に対しては,診断精度が高く,組織型やバイオマーカーの検索が可能なCNBやVABが勧められる。

背 景

乳房内に病理診断が必要な病変がみられた場合,通常,穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration cytology;FNA),針生検(広義,needle biopsy),外科的生検のいずれかが行われる。広義の針生検は,バネ式で行われる狭義の針生検(core needle biopsy;CNB)と吸引式乳房組織生検(vacuum―assisted breast biopsy;VAB)に分けられる。乳房の病変の確定診断のために,FNA,CNB,VABいずれのアプローチを最初に行うのがよいかを,診断精度,合併症,検査費用,その他に分けて概説する。

解 説

1)診断精度

FNA,CNB,VABの三者を比較した論文やFNAとVABを比較した論文がみられなかったため,FNAとCNBの比較,CNBとVABの比較に分けて検討した。

(1)FNAとCNB

同一病変にFNAとCNBが行われ比較された12研究(1,802例)のメタアナリシスでは,FNAの感度74%(95%CI 72‒77%),特異度96%(95%CI 94‒98%),CNBの感度87%(95%CI 84‒88%),特異度98%(95%CI 96‒99%)であった。FNAとCNBの診断精度はいずれも高いが,両者の比較では,FNAよりCNBのほうが,感度が高く特異度は同等であった。その理由は,FNAよりCNBのほうが検体不適正率や鑑別困難率が低いためと考えられた1)。日本臨床細胞学会の研究班による大規模調査では,FNAの絶対的感度(細胞診検体が適正で,組織診断が悪性であった症例のうち,細胞診断が悪性であった症例の割合)76.7%,全体的感度(細胞診検体が適正で,組織診断が悪性であった症例のうち,細胞診断が悪性,悪性の疑い,鑑別困難のいずれかであった症例の割合)96.7%,特異度84.3%,検体不適正率17.7%,鑑別困難率7.8%であり,わが国のFNAの診断精度も高いことが示された2)3)。病変の種類別では,非触知石灰化病変に対するFNAは検体不適正率が高く,感度が低いとされている4)。腫瘍径に関しては,2~5 cmの腫瘍でFNAがCNBより感度が低いが,それ以外の大きさの腫瘍では,両者の感度は同等との報告がある5)

(2)CNBとVAB

同一病変にCNBとVABが行われ比較された研究報告はなかった。非触知石灰化病変に対するCNBとVABのランダム化比較試験では,両者の診断精度,CNBあるいはVABで非浸潤性乳管癌と診断され手術標本で浸潤癌と診断されるアップグレード率,QOL,いずれも同等であった6)。CNBよりVABのほうがアップグレード率が低いとの報告が複数あるが,同一病変で比較している研究ではないため,選択バイアスが高く,研究結果の評価が難しい。

2)合併症
(1)出血・血腫形成

出血,血腫形成に関して,FNA,CNB,VABで比較している報告はなかった。VABの中で,針が太いほうが出血しやすく血腫を形成しやすいとの報告が1件あった7)

(2)癌細胞の播種

癌症例に広義の針生検を行うと,針の進入路に癌細胞が播種する危険性がある8)9)。しかし,針生検後の手術標本で播種した癌細胞を確認できる割合が,手術までの時間経過とともに減少することから,播種した細胞の多くは死滅すると考えられている9)10)。播種の頻度をCNBとVABで比較した論文ではCNBよりVABのほうが播種の頻度が少なかった10)11)。しかし,そのような報告は少数で,CNBよりVABのほうが播種しにくいと断定することは難しい。

3)検査費用

FNAを超音波ガイド下に行った場合の手技料,超音波検査費用,病理診断料を含む医療費全体(10割)は11,000円,CNBを超音波ガイド下に行った場合の手技料,超音波検査費用,標本作製料,病理診断料を含む医療費全体は25,800円,VABの画像診断を含む手技料,標本作製料,病理診断料を含む医療費全体は78,200円と試算されている。CNB,VABでホルモン受容体,HER2の免疫組織化学法を行った場合には,さらに,15,900円が加算される。

4)その他

FNAの利点として,安価であることに加え,診断報告までの時間がCNBやVABに比較して短いことが挙げられる。一方,CNBやVABを癌症例に行った場合の利点として,浸潤の有無,組織型,病理学的グレードを評価することやバイオマーカー検索が可能であることが挙げられる12)

以上を総合すると,FNAは安価であり,非触知石灰化病変に対する診断精度は低いが,腫瘤に対する診断精度は比較的高い。特に,バイオマーカー検索が不要な良性が疑われる腫瘤において,FNAの診断価値は高い。一方,非触知石灰化病変や悪性が疑われる腫瘤においては,診断精度が高く,組織型やバイオマーカー検索が可能なCNBやVABが勧められる。現時点では,VABがCNBに比較して有用な病変の特徴は,明らかではない。

また,乳房の病変の確定診断のための適切なアプローチは,検査施行者の技量,病理医や細胞検査士の診断能力によっても変化し得る。論文化されている内容の多くは,高度の技量をもつ施行者により穿刺され,診断能力の高い病理医・細胞検査士により診断された結果である。個々の症例に対するアプローチを選択する際には,それらを考慮する必要がある。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Biopsy,Needle”,“Image―Guided Biopsy”,“needle”,“vacuum”のキーワードで検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,893件がヒットした。ハンドサーチによる検索も追加した。

参考文献

1)Wang M, He X, Chang Y, Sun G, Thabane L. A sensitivity and specificity comparison of fine needle aspiration cytology and core needle biopsy in evaluation of suspicious breast lesions:a systematic review and meta―analysis. Breast. 2017;31:157―66. [PMID:27866091]

2)Yamaguchi R, Tsuchiya SΙ, Koshikawa T, Ishihara A, Masuda S, Maeda I, et al. Diagnostic accuracy of fine―needle aspiration cytology of the breast in Japan:report from the Working Group on the Accuracy of Breast Fine―Needle Aspiration Cytology of the Japanese Society of Clinical Cytology. Oncol Rep. 2012;28(5):1606―12. [PMID:22948855]

3)土屋眞一,山口 倫,前田一郎,越川 卓,川本雅司,大橋隆治,他.細胞診断の精度管理.臨床検査.2013;57(13):1554―9.

4)Pisano ED, Fajardo LL, Caudry DJ, Sneige N, Frable WJ, Berg WA, et al. Fine―needle aspiration biopsy of nonpalpable breast lesions in a multicenter clinical trial:results from the radiologic diagnostic oncology group V. Radiology. 2001;219(3):785―92. [PMID:11376270]

5)Barra Ade A, Gobbi H, de L Rezende CA, Gouvêa AP, de Lucena CE, Reis JH, et al. A comparision of aspiration cytology and core needle biopsy according to tumor size of suspicious breast lesions. Diagn Cytopathol. 2008;36(1):26―31. [PMID:18064684]

6)Bundred SM, Maxwell AJ, Morris J, Lim YY, Harake MJ, Whiteside S, et al. Randomized controlled trial of stereotactic 11―G vacuum―assisted core biopsy for the diagnosis and management of mammographic microcalcification. Br J Radiol. 2016;89(1058):20150504. [PMID:26654214]

7)Schaefer FK, Order BM, Eckmann―Scholz C, Strauss A, Hilpert F, Kroj K, et al. Interventional bleeding, hematoma and scar―formation after vacuum―biopsy under stereotactic guidance:Mammotome(®)―system 11 g/8 g vs. ATEC(®)―system 12 g/9 g. Eur J Radiol. 2012;81(5):e739―45. [PMID:22381441]

8)Liebens F, Carly B, Cusumano P, Van Beveren M, Beier B, Fastrez M, et al. Breast cancer seeding associated with core needle biopsies:a systematic review. Maturitas. 2009;62(2):113―23. [PMID:19167175]

9)Loughran CF, Keeling CR. Seeding of tumour cells following breast biopsy:a literature review. Br J Radiol. 2011;84(1006):869―74. [PMID:21933978]

10)Diaz LK, Wiley EL, Venta LA. Are malignant cells displaced by large―gauge needle core biopsy of the breast? AJR Am J Roentgenol. 1999;173(5):1303―13. [PMID:10541110]

11)Uematsu T, Kasami M. The use of positive core wash cytology to estimate potential risk of needle tract seeding of breast cancer:directional vacuum―assisted biopsy versus automated core needle biopsy. Breast Cancer. 2010;17(1):61―7.[PMID:19360459]

12)Kooistra B, Wauters C, Strobbe L, Wobbes T. Preoperative cytological and histological diagnosis of breast lesions:a critical review. Eur J Surg Oncol. 2010;36(10):934―40. [PMID:20709485]

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