2021年3月31日更新

総説2 対策型乳がん検診と任意型乳がん検診についての理解

1.乳がん検診

1)乳がん検診は2つに大別される

がん検診は国益を目的とする国政の癌対策の一環として施行される「対策型がん検診」とそれ以外の個人の利益を目的として自己責任のもとで受診する人間ドックなどの「任意型がん検診」に大別される。がん検診を議論する際にこの2つの区別を十分に意識して論じることが非常に重要である。さもなくば誤解や混乱の要因となる。対策型がん検診と任意型がん検診の定義と特徴については表1に要約する。適切な乳がん検診を普及および運営するためには,対策型と任意型の乳がん検診の差異について十分に理解することが肝要である。

2)対策型乳がん検診

対策型がん検診とは,地域住民,ひいては国民全体の死亡率低減効果を目的として国政の一環として実施するものであり,公共的な予防対策として公的資金(税金)を投入して行われる。このため,有効性が確立した検査方法が選択され,その利益が不利益を上回ることが基本条件となる。また,国民の対象者全員に一律かつ平等に乳がん検診が提供されることが必要不可欠である。わが国では,対策型乳がん検診として市区町村が行う住民検診が該当する。

3)任意型乳がん検診

任意型乳がん検診とは,対策型乳がん検診以外のすべての乳がん検診が該当するが,その方法と提供体制はさまざまである。典型例の一つとして,医療機関や検診機関などが任意で提供する人間ドックなどが相当する。勤務先や健康保険組合等の保険者による福利厚生を目的として提供される場合も多いが,基本的には個人による受診選択権があり,受診形態はさまざまである。任意型乳がん検診の目的は個人の死亡リスクを下げることにあり,個人の自己責任のもとで受診するがん検診であるのでその費用は自己負担が原則である。そして,検診方法を選択するための利益や不利益についての説明が不十分であることや精度管理などの問題もあるが,任意型乳がん検診では個々の受診者の価値観や好みに基づく個別化乳がん検診への対応が可能となる利点がある。しかし,任意型乳がん検診においても死亡率低減効果が証明されているマンモグラフィによる乳がん検診が基本であることを忘れてはいけない。

4)乳がん検診の利益と不利益

乳がん検診の最大の利益は,早期発見により乳癌死亡率が減少することである。また,乳癌が早期に見つかることにより治療(手術,化学療法薬)が軽くなり,その結果,身体的,経済的負担が軽減されることもある。さらに乳がん検診により乳癌でないことの確認ができることで,安心感を享受することが可能となる精神的な利点もある。

乳がん検診の不利益として,マンモグラフィによる被曝(検診・画像診断:1.乳がん検診 総説1参照)や偽陽性(乳癌でないにもかかわらず乳がん検診で要精査となること),偽陰性(乳癌があるにもかかわらず乳がん検診で診断されないこと),過剰診断(生命予後に関係しないおとなしい乳癌が乳がん検診で発見され治療されること)がある。

参考文献

1)植松孝悦.検診はどのようながん種に対してどんな検査を行うのがよいですか.総論―内科医が知っておくべきがん診療の基本.Medicina. 2017;54(8):1186―91.

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