2021年3月31日更新

FQ12.局所・領域再発切除術後に薬物療法は勧められるか?

2.転移・再発乳癌

ステートメント
・局所・領域再発切除術後には,完治を目指して化学療法や内分泌療法を考慮する。

背 景

原発乳癌術後で遠隔転移のない局所再発症例では,その後に遠隔転移を発症する割合が高く,予後不良であると報告されている1)。NSABPが施行した,腋窩リンパ節転移陽性患者に対する乳房温存手術の5つの臨床試験(B-15,B-16,B-18,B-22,B-25,計n=2,669)の統合解析結果2)から,温存乳房内再発率は9.7%,他の局所再発(同側胸壁および領域リンパ節)率は6.2%と報告され,温存乳房内再発後の5年distant DFSは51.4%,他の局所再発後では18.8%,また再発後の5年生存割合は各々59.9%および24.1%であった。さらに,NSABPが施行した腋窩リンパ節転移陰性患者に対する乳房温存手術の5つの臨床試験(B-13,B-14,-19,B-20,B-23,n=3799)の統合解析3)では,温存乳房内再発率は9.0%,他の局所再発率は2.0%と報告されており,温存乳房内再発後の5年生存割合は76.6%,他の局所再発後は34.9%であった。

解 説

原発乳癌術後の化学療法や内分泌療法については多くの臨床試験の結果から予後の改善が期待できる。しかし,局所再発切除後の薬物療法についての報告は限られている。局所再発切除後の薬物療法の有効性に関するランダム化第Ⅲ相比較試験の報告は2つあるが,いずれもサンプルサイズは小さい。一つ目は,局所再発切除後の内分泌療法の有効性に関する前向きの第Ⅲ相比較試験,SAKK 23/82試験(n=167,1982~1991)が報告されている4)。原発乳癌に対して乳房全切除後(術後タモキシフェンは全例未投与)の局所再発のうち,予後良好とされる患者(再発巣のエストロゲン受容体(ER)陽性ないしER不明例ではDFI>12カ月で,再発巣は最大3 cm以下の病変が3個以下)167症例を対象とした。局所再発切除後に放射線照射を実施し,その後にタモキシフェン投与群と経過観察群にランダム化割り付けした。観察期間の中央値11.6年の時点で局所再発切除後のDFSの中央値はタモキシフェン投与群で6.5年,経過観察群で2.7年(p=0.053)であった。5年DFSはタモキシフェン投与群で61%,経過観察群で40%であった。OSの中央値はタモキシフェン投与群で11.5年,経過観察群で11.2年と両群で差はなかった。

局所再発切除後の化学療法の有効性に関する前向きの第Ⅲ相比較試験,CALOR試験(n=162,2003~2010)5)は当初予定の977症例から途中265例へとサンプルサイズの変更をしたが,症例の集積が遅く試験が早期に終了し,その結果について報告されている。乳房全切除または乳房温存手術後の局所再発(温存乳房,胸壁および領域リンパ節)切除例を対象として,術後化学療法(主治医選択)施行群と非施行群の2群で予後について比較検討している。本試験では上述のSAKK23/82試験の結果を考慮して再発巣のER陽性例では再発切除後内分泌療法が行われている。また,病理学的断端陽性例では放射線照射が施行されている。観察期間の中央値4.9年の時点で局所再発切除後の5年DFSは化学療法施行群で69%,非施行群で57%(HR 0.59,95%CI 0.35-0.99),5年OSは化学療法施行群で88%,非施行群で76%(HR 0.41,95%CI 0.19-0.89)であった。再発巣のERの発現別のサブセット解析では,ER陰性群において術後化学療法による5年DFS(67% vs 35%)の改善がみられ(HR 0.32,95%CI 0.14-0.73),ER陽性群(70% vs 69%)(HR 0.94,95%CI 0.47-1.89)とは改善効果に相違を認めた。また,原発巣のERの発現状況別で差はなかった。CALOR試験より以前にも,同様に局所再発切除後における化学療法の有効性に関する第Ⅲ相比較試験が計画されたが症例の集積が進まず結果の報告には至っていない6)

以上より,局所再発切除後の内分泌療法によりDFSの延長が,さらに化学療法によりDFSおよびOSの延長が期待できる可能性がある。内分泌療法については限られた症例数によるアロマターゼ阻害薬登場前の試験結果であること,再発巣のER陽性例で検討されていること,至適投与期間が不明なことなどに留意が必要である。化学療法については,早期終了となった試験の結果であること,観察期間が短いこと,至適レジメンが不明であること,再発巣のER陽性例では予後改善効果が低い可能性があることに留意が必要である。いずれにせよ,今後新たに局所再発術後の薬物療法の有効性に関する報告は期待しにくいため,原発乳癌術後の薬物療法のエビデンスを参考に,初回手術後に用いた薬剤の種類,再発までの期間および患者の希望・合併症を考慮して個別に検討すべきだと考えられる7)

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Neoplasm Recurrence, Local”,“Chemotherapy, Adjuvant”のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,36件がヒットした。また,NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Breast Cancer. ver. 2.2017. を参考にした。

参考文献

1)Wapnir IL, Aebi S, Geyer CE, Zahrieh D, Gelber RD, Anderson SJ, et al;IBCSG;BIG;NSABP. A randomized clinical trial of adjuvant chemotherapy for radically resected locoregional relapse of breast cancer:IBCSG 27―02, BIG 1―02, and NSABP B―37. Clin Breast Cancer. 2008;8(3):287―92. [PMID:18650162]

2)Wapnir IL, Anderson SJ, Mamounas EP, Geyer CE Jr, Jeong JH, Tan―Chiu E, et al. Prognosis after ipsilateral breast tumor recurrence and locoregional recurrences in five National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project node―positive adjuvant breast cancer trials. J Clin Oncol. 2006;24(13):2028―37. [PMID:16648502]

3)Anderson SJ, Wapnir I, Dignam JJ, Fisher B, Mamounas EP, Jeong JH, et al. Prognosis after ipsilateral breast tumor recurrence and locoregional recurrences in patients treated by breast―conserving therapy in five National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project protocols of node―negative breast cancer. J Clin Oncol. 2009;27(15):2466―73. [PMID:19349544]

4)Waeber M, Castiglione―Gertsch M, Dietrich D, Thurlimann B, Goldhirsch A, Brunner KW, et al. Adjuvant therapy after excision and radiation of isolated postmastectomy locoregional breast cancer recurrence:definitive results of a phase Ⅲ randomized trial(SAKK 23/82)comparing tamoxifen with observation. Ann Oncol. 2003;14(8):1215―21. [PMID:12881382]

5)Aebi S, Gelber S, Anderson SJ, Lang I, Robidoux A, Martin M, et al;CALOR investigators. Chemotherapy for isolated locoregional recurrence of breast cancer(CALOR):a randomised trial. Lancet Oncol. 2014;15(2):156―63. [PMID:24439313]

6)Rauschecker H, Clarke M, Gatzemeier W, Recht A. Systemic therapy for treating locoregional recurrence in women with breast cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2001;(4):CD002195. [PMID:11687148]

7)Cardoso F, Costa A, Norton L, Senkus E, Aapro M, Andre F, et al. ESO―ESMO 2nd international consensus guidelines for advanced breast cancer(ABC2)†. Ann Oncol. 2014;25(10):1871―88. [PMID:25234545]

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