2021年3月31日更新

総説7 初期治療後フォローアップ

初期治療後フォローアップをするうえで,どのような検査をどの程度の頻度で行うと良いかということについて説明する。

初期治療後,定期診察とマンモグラフィのみを行うフォローアップと,それらに加えて他の画像診断や血液検査を行うフォローアップとを比較した2つの前向き研究1)~3)により,さまざまな画像診断を加え慎重なフォローアップを行っても,生存率は改善しないことが示された。また,それらのメタアナリシス4)によっても,生存率,無再発生存率に差はなく,年齢,腫瘍径,リンパ節転移の状況によるサブグループ解析でも有意差を認めていない。再発例を対象に,慎重なフォローアップにより無症状で診断された例と,病歴,症状,身体所見,マンモグラフィにより診断された例とを比較検討した後ろ向き研究5)でも,診断方法の違いは生存率に影響しなかった。
遠隔転移・再発を早期に発見しても,治癒(再発治療後長期間無再発)が得られる確率は低いとされている6)。同側乳房内再発が2 cmを超えると死亡リスクの上昇を認めており,術後のフォローアップに関するシステマティック・レビューでは,年1回マンモグラフィを受ける方法が,医療経済的にも有用であるとしている7)。12の研究,5,045人の患者を含むメタアナリシス8)によると,無症状で定期診察,定期検査により単発性局所再発が発見された割合は40%であり,その他の60%は,自覚症状により発見されている。しかしながら,無症状の単発性局所再発を発見することの,生存率,QOL向上に及ぼす効果は証明されていない。また,現在,さまざまな再発リスク分類9)10)が報告されているが,リスクの違いにより,フォローアップの頻度,内容を比較した研究はない。
フランスで行われた後ろ向き研究11)では乳癌初期治療後フォローアップガイドラインに準拠したフォローアップを受けた患者と,そうでない患者の経済効果が検討されたが,ガイドラインに準拠しない場合,2.2倍(1年目)~3.6倍(3年目)の医療費がかかったことが示された。
以上より,基本的に再発リスクの低いStageⅠ・Ⅱ乳癌術後のintensive follow upを行わないことが勧められる(☞検診・画像診断CQ8参照)。
遠隔転移や再発の可能性が高いStageⅢ以上の初発乳癌に対しては,無症状で腫瘍量が増加する前の段階,つまり腫瘍量が少ない時期に,遠隔転移や再発を把握し治療を開始したほうが治療効果やQOLの改善を期待できる。そのため,初期治療後にさまざまな検査を組み入れた慎重なフォローアップを行うことは許容される。しかしながら,これらのフォローアップを行うことで,生存率,QOL,医療経済に対する効果は証明されていない。
乳癌初期治療後フォローアップに際しては,エビデンスに基づいて患者ごとに最適な方法を決定する。また,患者との対話を通じ,患者の好みや価値観を踏まえて意思決定されることも肝要である。

(1)問診・視触診

2つの前向き研究1)2)やいくつかの後ろ向き研究12)~18)により,約4分の3の患者が再発の徴候を自覚している。また,視触診により再発の15%が発見され,特に無症状の再発に関して有用である14)。再発をきたす可能性の高い初期治療後3年以内は3~6カ月ごと,4~5年目は6~12カ月ごと,5年以降は年1回の注意深い問診・視触診を行うことが勧められる19)
乳癌術後,専門医によるフォローアップを受ける群と,家庭医によるフォローアップを受ける群にランダムに割り付け比較検討された前向き研究20)~22)では,家庭医によるフォローアップは,再発診断を遅らせることはなく,不安を増長させたり,QOLを低下させたりすることもなかった。また,フォローアップの頻度に関して,定期的に行う群と,マンモグラフィ撮影時(1~2年に1度)のみに制限した群とのランダム化比較23)によると,フォローアップの回数を減らしても患者の不安を増長させることはなかった。
以上より,問診・視触診はフォローアップにおける重要な項目である。適度な間隔で,注意深い問診・視触診を行い,何らかの訴え,異常所見を認めた際に,それに応じた検査を行う。患者の希望に応じて,乳腺専門医以外によるフォローアップも許容される。

(2)マンモグラフィ

マンモグラフィに関しては,すでに多くの施設で,乳房温存手術後1~2年おきにフォローアップのためのマンモグラフィ検査が行われており,コンセンサスが得られている(☞検診・画像診断FQ8参照)。

(3)超音波検査

超音波検査は他のモダリティと比べ,頻回に行っても被曝や薬剤暴露が少なく,コスト負担も少ない。疑わしい所見があれば,1年以下(6カ月など)の間隔で検査することで,経時的変化を確認することが可能である(☞検診・画像診断FQ8参照)。

(4)乳房MRI

同側の乳癌再発の早期発見における定期的乳房MRIの有用性を評価した臨床試験は認められなかったが,フォローアップ中の対側乳癌検出に関する有用性が報告されている。初発乳癌がマンモグラフィ等で検出困難であった症例,または高濃度乳房症例では,対側乳癌の早期発見を目的とした乳房MRI検査も行われる(☞検診・画像診断FQ8参照)。

(5)再発徴候に関する患者教育,自己検診

乳癌初期治療後,治癒可能な局所再発,対側乳癌の40%が自己検診により発見されている24)ものの,患者に対する教育プログラムの効果,アウトカムに関する報告はない。上海で行われた健常女性26万人以上を対象とした乳房自己検診に関する大規模なランダム化比較試験25)では,乳房自己検診により乳癌死亡率低減効果は証明されず,自己検診を行った場合でも,発見された乳癌の腫瘍径,リンパ節転移の有無,遠隔転移の有無に差は認めなかった。臨床医が,日々の診療における患者との対話の中で,再発徴候に関する教育を行い,自己触診を勧めることは重要と考えられるが,患者教育に関する有用性を示すデータは存在しない。

(6)婦人科検診

タモキシフェンは子宮内膜癌(子宮体癌)と子宮肉腫の発症リスクに関与している26)~29)〔☞薬物療法BQ15参照〕が,乳癌治療後の婦人科検診に関して,その有用性を比較したランダム化比較試験は存在しない。さらに,タモキシフェン服用者における定期的な子宮体癌検診の有効性は明らかではない30)。よって,タモキシフェン服用者に対しては,上記のリスクを説明したうえで,不正出血などの症状があればすぐ医療スタッフに連絡するよう説明しておく。

(7)血液検査

わが国では,肝機能検査値の異常により肝転移を,アルカリフォスファターゼ値,カルシウム値の異常により骨転移を見つける目的などで血液検査が定期的に行われているが,初期治療後,定期的な血液検査の有用性を示した研究はない。血液検査を含むフォローアップを評価した,前向き,後ろ向き研究では,いずれも血液検査の有用性は認めなかった1)4)5)12)13)

(8)腫瘍マーカー

腫瘍マーカーの感度,特異度は比較的良好な値であり,再発の診断に有用であることが示されているが,生存率,QOL,精神的負担,費用の観点においては,現在のところ有効性を示す研究は存在しない。しかし,乳癌治療においては,理論上,腫瘍量が増加する前の段階つまり腫瘍量が少ない時期に治療を開始したほうが治療効果を期待できるとされており,無症状の乳癌患者に腫瘍マーカーをモニタリングすることには意義があると考えられている(☞検診・画像診断FQ9参照)。

(9)胸部X線

初期治療後,定期的な胸部X線の有用性を示した研究はない。胸部X線を含むフォローアップを評価した,前向き,後ろ向き研究では,いずれも胸部X線の有用性は認めなかった1)2)5)12)13)。胸部X線検査を定期的に施行した場合と症状出現時に施行した場合とを比較した研究では,生存率に有意差を認めず,症状出現時に限り施行することにより医療費が削減された31)

(10)胸腹部CT

初期治療後,胸腹部CTに関する前向き研究は存在しない。2つの後ろ向き研究32)33)では,初期治療後のCTの効果が検討されたが,いずれも有用性は認めなかった。その他,無症状患者に対する定期的なCTの有用性を示した研究は存在しない。

(11)肝臓超音波検査

1つの前向き研究ではフォローアップの項目に肝臓超音波検査が含まれていたが,定期的検査を行っても予後が改善しないことが示された1)。その他,無症状患者に対する定期的な肝臓超音波検査の有用性を示した研究は存在しない。

(12)頭部MRI

近年治療の個別化が進み,乳癌の再発形式はサブタイプ別に特徴が異なることが示されるようになった34)35)。特にHER2陽性乳癌やトリプルネガティブ乳癌ではluminal type乳癌に比べて脳転移の頻度が高く,予後不良であることが示されている36)。一方,HER2陽性乳癌における検討で,無症状で発見された脳転移患者に早期に治療を始めた群は,症状を認めてから治療を始めた群と比較して,脳転移に関連する死亡が有意に少ないものの,両群での全生存率には有意差が認められなかった37)38)

(13)骨シンチグラフィ

乳癌治療後,最も頻度の高い初再発部位は骨転移である39)が,初期治療後の定期的骨シンチグラフィによる予後改善効果は証明されていない。骨転移の発見契機を症状の有無別に比較した後ろ向き研究40)では,骨シンチグラフィを含む定期検査によって無症状の骨転移を発見,治療しても,生存期間延長効果は認めなかった。
また,NSABPの報告41)では,無症状の骨転移は0.65%(52/7,984 scan),the Ludwig Breast Cancer Study Groupの報告42)では,腋窩リンパ節転移陽性乳癌に対し骨シンチグラフィを行い,初発の骨転移を早期発見できた割合は2.4%と,その頻度も低い。
ただし,現在,骨シンチグラフィの診断精度の向上やビスフォスフォネート製剤の登場により骨転移の治療法も変化してきている。臨床的骨シンチグラフィの意義について,特に骨転移の頻度の高いと考えられる進行例については再検討が必要だとする論文もみられる43)。生存期間延長効果は明らかでなくとも,骨関連事象(SRE)を減少させるという意味では,今後検討を要するものと考えられるが,現時点では,無症状の患者に対する定期的な骨シンチグラフィを勧める確かな根拠は認められない。
一方,症状を有する患者の骨転移を骨シンチグラフィによって診断し,治療することによって症状の緩和およびQOLの向上が期待できる。

(14)FDG-PET

初期治療後,FDG-PETに関する前向き研究は存在しない。FDG-PET検査は,乳癌再発の検出において,マンモグラフィ,超音波,CT,MRI,X線,骨シンチグラフィなどの今まで行われてきた画像検査(conventional imaging;CI)に比べて,より感度,特異度が高い44)~46)。しかし,報告間で感度,特異度にばらつきがあり,FDG-PETをCIと併用することの有用性はあるが,CIに取って代わるものではない。生存率,QOL,医療経済の観点において,有用性を示す研究は存在しない。

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