2021年3月31日更新

CQ7.術前化学療法が奏効した場合でも乳房全切除術後放射線療法(PMRT)は勧められるか?

1.乳房手術後放射線療法

推 奨
・術前化学療法が奏効しても術後放射線療法の適応は化学療法前の病期に従って行うことを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:とても弱い,合意率:100%(12/12)〕

背景・目的

局所進行乳癌における術前化学療法は,ダウンステージによる手術の適応拡大や,遠隔転移の抑制を目標に施行される。術前化学療法を行わない乳房全切除術後放射線療法の適応は,主に術後の病理学的所見により決定されてきたが,術前化学療法施行後の放射線療法については,前向きランダム化比較試験の報告はなく,その適応に関する十分なエビデンスはない。術前化学療法が奏効した場合にも乳房全切除術後放射線療法が必要かどうかを検討した。

解 説

これまで行われた術前化学療法に関する臨床試験の統合解析では,病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)を原発巣とリンパ節の両方における浸潤癌と非浸潤癌の消失(ypT0ypN0)と定義した場合に,non pCR群との比較で最も予後が反映されると報告している。一方,HER2陽性乳癌やトリプルネガティブ乳癌におけるpCR例はnon pCR例と比較して予後が良好であったが,ホルモン受容体陽性乳癌においては一定した見解が得られていない1)2)

術前化学療法施行後の放射線療法については前向きランダム化比較試験の報告はないため十分なエビデンスはないが,いくつかの後ろ向き研究の結果が報告されている。NSABP B-18試験とB-27試験の統合解析の報告では,術前化学療法後に乳房全切除術施行,非照射の症例において,臨床病期と化学療法による原発巣およびリンパ節の治療効果(pCRもしくはypN0かどうか)が局所・領域リンパ節再発の有意な予測因子であるとしている3)。M. D. アンダーソンがんセンターで施行した6つの前向き臨床試験のデータを後ろ向きに解析した研究では,542例の術後放射線療法群と134例の非照射群において10年局所・領域リンパ節再発率が,それぞれ11%と22%であり,非照射群の局所・領域リンパ節再発は有意に高率であった(p=0.0001)。10年全生存率は両者で有意な差は認めなかった4)。また,同施設の後ろ向き研究で,術前化学療法でpCRを得た106例の乳房全切除術施行患者(72例で術後放射線療法施行)のうち,臨床病期StageⅠ-Ⅱの患者では術後放射線療法の有無にかかわらず,両群で10年までの局所・領域リンパ節再発は皆無であったが,StageⅢの患者においては非照射群で局所・領域リンパ節再発率が有意に高かった(7.3±3.5% vs 33.3%±15.7%,p=0.040)5。一方,術前化学療法がリンパ節転移に奏効したypN0の臨床病期StageⅡ-Ⅲ乳癌151症例(術後放射線療法施行105例)の検討において,多変量解析で放射線療法の有無は無再発生存率,局所・領域リンパ節非再発率,全生存率と有意な相関を認めなかった6)。これらの報告に有害事象の詳細な記載はなかったが,術前化学療法を施行しない場合の乳房全切除術後放射線療法例に準じた有害事象とコストを想定して治療を行う必要があると考えられる(放射線CQ5参照)。

患者の好みとしては,術前化学療法が奏効した場合に,治療期間の延長や治療費の増加を懸念し,術後放射線治療を省略することを希望する場合があると考えられる。いずれの報告も背景因子や治療内容にバイアスがありエビデンスの強さは「とても弱い」と考えられ,現時点では術前化学療法が奏効しても化学療法前の病期に従って術後放射線療法の適応を決定することが勧められる。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで,“Breast Neoplasms”,“Radiotherapy”,“Mastectomy”,“Neoadjuvant Therapy”のキーワードと,“pathologic complete response”の同義語で検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,262件がヒットした。一次スクリーニングで44編,二次スクリーニングで5編の論文を抽出した。

エビデンス総体システマティックレビュー

参考文献

1)von Minckwitz G, Untch M, Blohmer JU, Costa SD, Eidtmann H, Fasching PA, et al. Definition and impact of pathologic complete response on prognosis after neoadjuvant chemotherapy in various intrinsic breast cancer subtypes. J Clin Oncol. 2012;30(15):1796―804. [PMID:22508812]

2)Cortazar P, Zhang L, Untch M, Mehta K, Costantino JP, Wolmark N, et al. Pathological complete response and long―term clinical benefit in breast cancer:the CTNeoBC pooled analysis. Lancet. 2014;384(9938):164―72. [PMID:24529560]

3)Mamounas EP, Anderson SJ, Dignam JJ, Bear HD, Julian TB, Geyer CE Jr, et al. Predictors of locoregional recurrence after neoadjuvant chemotherapy:results from combined analysis of National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project B―18 and B―27. J Clin Oncol. 2012;30(32):3960―6. [PMID:23032615]

4) Huang EH, Tucker SL, Strom EA, McNeese MD, Kuerer HM, Buzdar AU, et al. Postmastectomy radiation improves local-regional control and survival for selected patients with locally advanced breast cancer treated with neoadjuvant chemotherapy and mastectomy. J Clin Oncol 2004; 22(23): 4691-9[PMID:15570071]

5)McGuire SE, Gonzalez―Angulo AM, Huang EH, Tucker SL, Kau SW, Yu TK, et al. Postmastectomy radiation improves the outcome of patients with locally advanced breast cancer who achieve a pathologic complete response to neoadjuvant chemotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2007;68(4):1004―9. [PMID:17418973]

6)Shim SJ, Park W, Huh SJ, Choi DH, Shin KH, Lee NK, et al. The role of postmastectomy radiation therapy after neoadjuvant chemotherapy in clinical stageⅡ―Ⅲ breast cancer patients with pN0:a multicenter, retrospective study(KROG 12―05). Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2014;88(1):65―72. [PMID:24161425]

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