2021年3月31日更新

BQ2.術後療法で用いた内分泌療法は再発後の内分泌療法の選択に影響するか?

2.転移・再発乳癌

ステートメント
・ホルモン受容体陽性の転移乳癌に対する内分泌療法は,再発時期や術後内分泌療法の種類によって薬剤を選択すべきである。

背 景

乳癌再発後の予後に関わる因子(予後因子)には,手術から再発までの無病生存期間(DFI),再発部位や乳癌のサブタイプなどがあり,内分泌療法の効果に影響する因子(効果予測因子)には,ホルモン受容体,HER2受容体の発現がある。完治困難な再発乳癌に対しては,予後因子や効果予測因子を考慮しながら,内分泌療法や化学療法,分子標的薬などの全身治療から薬剤を選択する。本BQでは術後の内分泌療法が再発後の内分泌療法の選択にどのように影響するかを概説する。

解 説

ホルモン受容体陽性の転移乳癌に対する内分泌療法の効果を検討する臨床試験は,再発時期や術後内分泌療法の種類によって適格基準が決められてきた。一般的に術後内分泌療法治療中もしくは内分泌療法終了から1年以内の再発に対する内分泌治療は,術後内分泌療法とは異なる薬剤を選択する。

閉経前乳癌で術後タモキシフェンによる術後内分泌療法中の再発症例に対する内分泌療法としては,卵巣機能抑制に加えて,閉経後の転移乳癌と同様にアロマターゼ阻害薬等による治療から開始することが勧められる。閉経後乳癌で術後アロマターゼ阻害薬による内分泌療法が行われていた場合には,タモキシフェンもしくはフルベストラント等の機序の異なる薬剤が推奨される。術後内分泌療法終了から1年以上経ってからの再発に対する内分泌療法は,術後内分泌療法と同じ薬剤の再投与も選択肢である。

ASCOガイドラインでは,術後内分泌療法開始後12カ月以内の再発をその内分泌療法に対する耐性を有する症例と定義している1)。また,リスボンで開かれている転移・進行乳癌のコンセンサス会議においては,術後内分泌療法を開始して2年以内に再発した症例をprimary(de novo)endocrine resistance,開始2年以降の再発をsecondary(acquired)endocrine resistanceと定義している2)。一般的に再発時期が早い症例ほど内分泌療法に対する効果が低い可能性がある。また,術後内分泌療法におけるアドヒアランスを確認することも大切である。

治療方針は上記の術後内分泌療法の種類や再発時期に加えて,再発巣の部位や広がりも鑑みて決定する。生命を脅かすような状況でない限り,機序の異なる内分泌療法もしくは内分泌療法と分子標的薬の併用を選択することが勧められる。生命を脅かす状況や内臓臓器の急激な進行に対しては化学療法を行うことが勧められる。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Neoplasm Recurrence, Local”,“Antineoplastic Agents, Hormonal”,“Aromatase Inhibitors”,“Estrogen Antagonists”,“Gonadotropin―Releasing Hormone”,“Tamoxifen”,“letrozole”,“anastrozole”,“exemestane”のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,411件がヒットした。

参考文献

1) Rugo HS, Rumble RB, Macrae E, Barton DL, Connolly HK, Dickler MN, et al. Endocrine therapy for hormone receptor―positive metastatic breast cancer:American Society of Clinical Oncology Guideline. J Clin Oncol. 2016;34(25):3069―103. [PMID:27217461]

2)Cardoso F, Costa A, Senkus E, Aapro M, André F, Barrios CH, et al. 3rd ESO―ESMO international consensus guidelines for advanced breast cancer(ABC 3). Ann Oncol. 2017;28(12):3111. [PMID:28327998]

保護中: 乳癌診療ガイドライン2018年版

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