2021年3月31日更新

BQ1.StageⅠ―Ⅱ乳癌に対する乳房温存手術後の放射線療法として全乳房照射は勧められるか?

1.乳房手術後放射線療法

ステートメント
・全乳房照射を行うことが標準治療である。

背 景

海外のランダム化比較試験では,すべての放射線療法併用群で温存乳房内再発の有意な減少を認めており,乳房温存手術後の乳房照射は必要と結論付けている。

また,これらのランダム化比較試験のメタアナリシスにより,乳房温存手術後の放射線療法が生存率向上にも寄与していることが明らかとなった。

乳房温存手術後の全乳房照射の有用性(再発低減,生存率向上)について評価した。また,乳房温存手術後の乳房照射が省略できる症例についても検討した。

解 説

乳房温存手術後の乳房照射の有用性は,これまでのいくつかのランダム化比較試験とそれらを解析したEBCTCGによるメタアナリシスによって証明された1)。それぞれのランダム化比較試験で対象症例,治療法などが多少異なるが,多くは4 cm以下の腫瘍に対して腫瘍摘出術を行い,放射線療法(50 Gy前後の全乳房照射と一部は10 Gy程度の追加照射)の有無でランダム化割付けを行っている。このメタアナリシスでは,乳房温存手術後に放射線療法を加えることで10年での乳癌再発の絶対リスクが15.7%減少(35.0%→19.3%,2p<0.00001)するとしている。

一方,早期乳癌患者のうち,温存乳房内再発リスクが低いホルモン受容体陽性の高齢患者については,放射線療法が省略できるのではないかとの検討も行われてきた。70歳以上,かつエストロゲン受容体陽性の患者に対してタモキシフェンのみとタモキシフェン+放射線療法を比較したランダム化比較試験では,10年全生存率には有意差がなかったが(66% vs 67%),10年の局所・領域リンパ節無再発率はそれぞれ90%,98%で有意差が認められた(p<0.001)2)。65歳以上の低リスク(ホルモン受容体陽性,腋窩リンパ節転移なし,腫瘍径3 cm以下,断端陰性,「G3かつ脈管侵襲あり」ではない,などの条件で判定)の乳癌患者に対するランダム化比較試験でも,放射線療法により中央値5年の経過観察で温存乳房内再発はわずかに減少(1.3% vs 4.1%,p=0.0002)したが,生存率に差はみられなかった3)。このようなランダム化比較試験の結果を受けて,早期乳癌患者のうち,ホルモン受容体陽性の高齢患者に対しては,放射線療法を省略して内分泌療法のみを行うことも容認し得るという意見もある。しかし,高齢の低リスク乳癌患者に関する最近のシステマティック・レビューでは,内分泌療法に放射線療法を加えることにより,生存率は改善しないが,温存乳房内再発は有意に減少するという結果が出ている4)5)。現時点では,温存乳房内再発リスクが低いと考えられる患者についても,原則として放射線療法を行うべきと考えたほうがよい。

乳房温存手術後の放射線療法によって生存率が有意に向上したとする個々の臨床試験はない。しかし,Vinh―Hungらは1976~2000年に行われた13の臨床試験データを解析した結果,放射線療法の省略により死亡の相対リスクが1.086倍(95%CI 1.003-1.175)になることを示した6)。また,EBCTCGのメタアナリシスでは,17の臨床試験において,放射線療法により,15年での乳癌死の絶対リスクが3.8%減少(25.2%→21.4%,2p<0.00005)することが示された。このメタアナリシスの結果から,乳房温存手術後の放射線療法は,乳癌の再発を半減させ,乳癌死を約6分の1減少させると見積もられている。また,10年までの乳癌再発を4例予防することにより,15年までの乳癌死を1例予防できるということもできる1)

乳房温存手術後の全乳房照射により,乳癌再発,乳癌死のリスクが低減でき,さらに,現時点では全乳房照射を安全に省略できる患者も明らかではないことから,乳房温存手術後には全乳房照射を行うことが標準治療である。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで,“Breast Neoplasms”,“Radiotherapy”,“Mastectomy,Segmental”のキーワードと,“stageⅠ”,“stageⅡ”,“early”の同義語で検索した。検索期間は2014年~2016年11月とし,393件がヒットした。また,ハンドサーチにより,「乳癌診療ガイドライン①治療編2015年版」や他のガイドライン,二次資料などから重要と思われる文献を採用した。

参考文献

1)Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG), Darby S, McGale P, Correa C, Taylor C, Arriagada R, Clarke M, et al. Effect of radiotherapy after breast―conserving surgery on 10―year recurrence and 15―year breast cancer death:meta―analysis of individual patient data for 10,801 women in 17 randomised trials. Lancet. 2011;378(9804):1707―16. [PMID:22019144]

2)Hughes KS, Schnaper LA, Bellon JR, Cirrincione CT, Berry DA, McCormick B, et al. Lumpectomy plus tamoxifen with or without irradiation in women age 70 years or older with early breast cancer:long―term follow―up of CALGB 9343. J Clin Oncol. 2013;31(19):2382―7. [PMID:23690420]

3)Kunkler IH, Williams LJ, Jack WJ, Cameron DA, Dixon JM;PRIMEⅡ investigators. Breast―conserving surgery with or without irradiation in women aged 65 years or older with early breast cancer(PRIMEⅡ):a randomized controlled trial. Lancet Oncol. 2015;16(3):266―73. [PMID:25637340]

4)Chesney TR, Yin JX, Rajaee N, Tricco AC, Fyles AW, Acuna SA, et al. Tamoxifen with radiotherapy compared with Tamoxifen alone in elderly women with early―stage breast cancer treated with breast conserving surgery:A systematic review and meta―analysis. Radiother Oncol. 2017;123(1):1―9. [PMID:28391871]

5)Matuschek C, Bolke E, Haussmann J, Mohrmann S, Nestle―Kramling C, Gerber PA, et al. The benefit of adjuvant radiotherapy after breast conserving surgery in older patients with low risk breast cancer― a meta―analysis of randomized trials. Radiat Oncol. 2017;12(1):60. [PMID:28335784]

6)Vinh―Hung V, Verschraegen C. Breast―conserving surgery with or without radiotherapy:pooled―analysis for risks of ipsilateral breast tumor recurrence and mortality. J Natl Cancer Inst. 2004;96(2):115―21. [PMID:14734701]

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