ステートメント
・転移・再発乳癌に対する有効性の示された化学療法を三次治療以降も順に使用していくことは妥当であるが,漫然と治療を継続するのではなく,個々の症例の治療経過,治療目標,リスクとベネフィットのバランスなどを考慮して,慎重に治療方針を検討する必要がある。
背 景
転移・再発乳癌を対象とする臨床試験で有効性が示され承認されている化学療法薬を順に使用していくことは理論的には可能であるが,どこまで化学療法を継続していくのが妥当であるかを検討した。
解 説
転移・再発乳癌に対して承認されている薬剤の中には,第Ⅱ相試験で奏効率が評価されているだけのものもある。三次治療以降のセッティングで行われた第Ⅲ相試験で,単剤投与による全生存期間延長のエビデンスが示されたのは,エリブリンのみである1)。化学療法を継続したほうが生存期間の延長やQOLの改善が期待できるという明確な根拠は乏しく,ベネフィットが得られないままQOLの低下を招く可能性も高いため,使用可能だから使用するという安易な考えで漫然と治療継続することは避けるべきである。また,最期の時をできるだけ穏やかに過ごすという観点からは,「Quality of end-of life care」や「Quality of death」を高めるために,死亡の直前には化学療法を行わないほうがよいとする考え方もある2)。
本FQに対して明確な推奨を示すのは困難であるが,各薬剤のエビデンスを吟味しながら,個々の症例の治療経過,治療目標,リスクとベネフィットのバランスなどを総合的に判断して治療方針を決定することが重要である。
検索キーワード・参考にした二次資料
PubMedで“Breast Neoplasms”,“Neoplasm Metastasis”,“Neoplasm Recurrence, Local”,“Antineoplastic Combined Chemotherapy Protocols”,“Drug Administration Schedule”,“Survival Rate”,“Survival Analysis”,“Time Factors”,“Treatment Outcome”,“continuous”のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,1,360件がヒットした。
参考文献
1)Cortes J, O’Shaughnessy J, Loesch D, Blum JL, Vahdat LT, Petrakova K, et al;EMBRACE(Eisai Metastatic Breast Cancer Study Assessing Physician’s Choice Versus E7389)investigators. Eribulin monotherapy versus treatment of physician’s choice in patients with metastatic breast cancer(EMBRACE):a phase 3 open―label randomised study. Lancet. 2011;377(9769):914―23. [PMID:21376385]
2)Earle CC, Park ER, Lai B, Weeks JC, Ayanian JZ, Block S. Identifying potential indicators of the quality of end―of―life cancer care from administrative data. J Clin Oncol. 2003;21(6):1133―8. [PMID:12637481]