A.乳房手術後の放射線療法中または治療終了後数カ月のうちに現れる副作用としては皮膚炎, 倦怠感(けんたいかん),放射線肺臓炎などがあります。皮膚炎はほとんどの患者さんでみられますが,一般的に軽度なものです。それ以外の副作用も頻度は少なく,大きな問題になることはほとんどありません。

解説

放射線療法中と終了後まもなく現れる副作用

放射線照射による副作用が現れるのは照射した部位に限られますので,乳がんの場合は,残された乳房や手術した側の胸壁(きょうへき),その周囲のリンパ節領域です。頭髪の脱毛やめまいなどはなく,吐き気や白血球減少もほとんど起こりません。放射線をあてている間に痛みや熱さを感じることもありません。放射線がからだに残ることもありませんので,帰宅後,乳幼児などを抱いても安全です。照射期間中に,疲れやだるさを感じる患者さんもいますが,通常は日常生活や仕事をしながら放射線療法を受けることが可能です。

開始して2~4週間後くらいで,放射線があたっている範囲内の皮膚が日焼けのように赤くなり,かゆくなったり,ひりひりしたりすることがあります。乳房全切除術後の患者さんのほうが乳房温存手術後の場合より,放射線をあてる範囲が広く,胸壁の皮膚へもしっかりと放射線があたりますので,皮膚の副作用は強くなることがあります。場合によっては皮膚表面がむけたり,水ぶくれのようになることもありますが,治療が終了すれば2週間ほどで軽快します。

照射後は皮膚が黒ずみ,汗腺や皮脂腺の働きが衰え,手で触れると温かく感じたり,皮膚がかさかさしたりすることがあります。乳房温存手術後の照射の場合は乳房全体が少し腫(は)れて,やや硬くなったり,痛んだりすることもあります。多くの患者さんでは,これらの症状はかなりの程度回復するので,日常生活で苦になることはありません。

鎖骨上窩(さこつじょうか)(首の付け根で鎖骨の上の部分)にも照射を受ける場合には,食道の一部にも放射線があたることがありますので(特に左胸に乳がんのある患者さん),一時的にのどの違和感や飲み込むときの痛みを感じることがあります。

放射線療法中と終了後まもない時期に気をつけることはありますか

倦怠感のあるときは無理をせず休息を取ってください。皮膚が赤くなったり,ひりひりしたりする場合に,皮膚を冷やすほうがよいかどうかについては,よくわかっていません。症状が楽になるようであれば冷やしていただいても構いませんが,あまり冷やしすぎないようにご注意ください。かゆみを感じても皮膚をかかないようにしましょう。皮膚の症状に対しては担当医が軟膏などを処方しますので,自分の判断で薬や化粧品などを塗らず,担当医に相談するようにしましょう。また,放射線があたった皮膚は弱くなっているので,絆創膏(ばんそうこう)や湿布などを貼らないでください。からだを洗うときにも強くこすったりしないよう気をつけてください。

鎖骨上窩にも照射を受ける患者さんは,ときに食道の炎症が起こりますので,アルコールや香辛料など刺激の強い物,過度に熱い物の摂取は避けてください。

放射線を正確にあてるための皮膚の印は消えないように気をつけましょう。また,消えかけたときにはスタッフが書き足しますので,自分で書き足したりしないようにしましょう。放射線療法が終了しても,放射線があたったところの皮膚の印は無理にこすって消さないようにしましょう。

放射線療法終了後しばらくして現れる副作用

治療後数カ月以降にみられる重大な副作用の頻度は少なく,あまり心配する必要はありません。

放射線療法が終了して,数カ月~数年後に出る副作用を晩期副作用といいます。放射線が肺に照射されることによって起こる肺炎はまれですが,100人に1人くらいの割合で放射線肺臓炎,100人に2人くらいの割合で器質化肺炎がみられることがあります。典型的な放射線肺臓炎は,放射線が強くあたった部分の肺に,治療後半年以内に発生します。一方,器質化肺炎では放射線がほとんどあたっていない部分の肺にも炎症が広がることが多く,炎症が長引くケースもあります。いずれのタイプの肺炎も症状は,咳や微熱の持続,息苦しさ,倦怠感,胸の痛み,などです。これらの肺炎は症状が軽快した後も,治療後の変化として肺に影が残り,検診などで毎年,指摘されることがあります。

放射線があたった皮膚は汗や皮脂の分泌が減ります。汗が減ることで皮膚の温度が反対側より少し上昇することがあります。皮脂の分泌が減ることで,皮膚がかさかさしたり,かゆくなることがあります。

乳房温存手術後の患者さんでは,乳房が少し縮んで小さくなることがあります。乳房に放射線をあてることによって乳汁をつくる機能は失われるので,放射線療法後に出産した場合は,照射した乳房から母乳が出ることはほとんどありませんが,反対側の乳房からは普通に授乳できます。

また,腕がむくむこと(リンパ浮腫)がありますが,頻度や程度は手術方法によって異なり,大きな手術を受けた場合ほどリスクは高くなります。かつては,放射線が心臓に多くあたることで,心筋梗塞(しんきんこうそく)などの心臓障害が心配されましたが,現在は放射線療法の技術の進歩により,問題となることは少なくなりました。

放射線療法終了後しばらくしてから気をつけることはありますか

咳や微熱が長く続くときは放射線肺臓炎の可能性がありますので,病院(できれば照射を受けた病院)を受診してください。「放射線療法を受けた」という情報が重要ですので,医師にその旨を伝えてください。放射線により起こる肺炎は適切な治療を行うことで治癒します。

放射線があたった皮膚は,赤みがなくなっても保湿を心がけましょう。保湿することでかゆみの予防や,皮膚の免疫力を高めることにつながります。

手術した側の腕はリンパ浮腫の予防と早期発見に努めましょう(☞Q25参照)。

放射線療法で他のがん(二次がん)が発生することはありませんか

この場合の二次がんというのは,乳がんの治療後にその治療が原因で別の部位(例えば反対側の乳房や肺など)にがんが発生することをいいます。乳がんを経験された患者さんは,乳がんの病歴がない女性に比べると,二次がんを生じる割合が高いことが知られています。

しかし,リスクが増加するといっても,二次がんになる患者さんの数はわずかであり,放射線療法による利益は二次がん発症の危険性を上回ると考えられています。