A.薬物療法を行うと特徴的な口腔内症状が副作用として起きる場合があります。また,化学療法で感染しやすくなったときに歯肉炎などが発熱の原因になることがあります。適切な口腔ケアを目的とした歯科との連携により,歯肉炎,口内炎,顎骨壊死(がっこつえし),誤嚥性肺炎などの予防や早期診断およびその改善を目的とした治療が開始されます。これにより薬物療法の完遂,全身状態の改善,治療成績の向上による予後の改善が期待されます。
解説
抗がん薬治療(化学療法)時
抗がん薬治療により,好中球が減少し,感染に対する抵抗力が低下することで発熱することがあります。抗がん薬治療施行前に歯科受診し,感染の原因となる不適合義歯やう歯,口腔カンジダなどの治療をあらかじめ行うことにより,感染のリスクを減らし,予定した治療を完遂できる可能性が高くなります。また,適切な口腔管理で誤嚥性肺炎などのリスクを下げる可能性があります。
骨吸収抑制薬(ビスホスホネート,デノスマブ)使用時
乳がん骨転移に対して使用する骨吸収抑制薬(ビスホスホネート,デノスマブ)は,骨折や痛みといった骨関連の副作用の発生を抑制する効果が示されており,骨転移をもつ患者さんに使用することが一般的になっています。しかし,これらの薬剤により顎骨壊死(顎の骨の炎症)が生じる場合があることがわかっています。顎骨壊死は一度発症すると長期化し,QOLやがん治療に影響することがあります。顎骨壊死は,歯周病,不適合義歯,抜歯などがリスク因子であることがわかっており,骨吸収抑制薬使用前や使用中に歯科による管理を受けていくことが重要です。
ホルモン療法(内分泌療法)時
ホルモン療法は,抗がん薬治療のように発熱性好中球減少を生じることはほとんどありません。しかしながら,閉経後患者さんは長期のホルモン療法により骨密度が低下し,骨粗鬆症になることがあります。骨粗鬆症に対しても,ビスホスホネートやデノスマブなどの骨吸収抑制薬が使用されることがあるので,使用前や使用中に歯科との連携が必要となります。