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手術後の下着やパッドは,手術の創部を保護しながら,ボディイメージやからだのバランスを整えることに役立ちます。手術方法や治療の段階,からだの回復状態に合わせて必要なものを選びましょう。できるだけ試着をして,自分のからだと気持ちに合うものをみつけましょう。

解説
手術後の下着とパッドの役割

乳がん手術後の下着とパッドには,術後の胸を保護して衝撃から守る役割があります。また,パッドで,ふくらみを補ってボディイメージを整え,左右の重さのバランスをとることでからだに(ゆが)みをつくりにくくなります。洋服のシルエットが整い,行動を制限されることなく仕事や日常生活を送ることができる場合もあります。

必ずしも乳がん専用のブラジャーを着用する必要はありませんので,あなたのからだと気持ちに合う下着を選ぶとよいでしょう。

手術方法に応じたブラジャーとパッドの選び方

乳房全切除術後(☞Q18参照),乳房再建をしない場合は,必要に応じて,乳がん手術後専用ブラジャーやシリコンパッドなどで補整することもできます( 図3,4 参照)。シリコンパッドは,ボリュームを補いながら,乳房のようなやわらかさで手術創部を衝撃から守るクッションになり,左右のバランスを整えて肩や腰にも負担をかけません。

乳房部分切除術後(☞Q18参照)は,(きず)の痛みや乳房全体の腫れが軽減したら,手術前の下着も着けられますが,ワイヤーが当たる部分や締め付けが気になるときは,ワイヤーが付いていないブラジャーや乳がん専用ブラジャーを試してみましょう。乳房部分切除術後でも,切除部分が大きいときは,パッドで補整することができます。

腋窩リンパ節郭清をした場合(☞Q21参照)や放射線療法後は,リンパの流れが悪いこともあるので,締め付けやくい込みがあるものは避けるようにしましょう。

なお,乳房再建術を受ける場合には(☞Q22参照),その方法により,再建中に着用する下着について担当医から指示が出されることがありますので確認してみましょう。

下着やパッドは手術後の段階と回復状態に合わせて変えていく

手術後の段階に応じて,着けやすいブラジャーやパッドは変わっていきます。

(1)手術直後→(2)手術後の痛みが和らぐまで→(3)手術創部が落ち着いて通常の生活に戻るときまで,術後の回復状態も考慮しながら必要なものを選びましょう。手術で切除する範囲や大きさ,また手術後の回復状態や感じ方は一人ひとり違います。心配なときは,専用ブラジャーやパッドを扱う専門店もありますので,できるだけ試着をして,サイズや着け心地を確認しながら,自分のからだと気持ちに合うものをみつけましょう。下着やパッドのパンフレットや情報については,担当看護師などの医療スタッフに聞いてください。

(1)手術直後/放射線療法中
痛みなどで腕があまり大きく動かせない場合があるので,着脱が楽な前開きで,やわらかな下着が適しています 図1 。胸元の開きが小さく,手術創部を大きく覆い保護するものを選びましょう。手術前に薄型のウレタンパッドも一緒に準備すると,退院後すぐの外出でも洋服のシルエットに影響することはありません。このタイプの下着は放射線療法中も使用できます。

 図1  前開きソフトブラジャー

(2)手術後の痛みが和らぐまで
手術創部とわき,アンダーや背中も締め付けすぎないようにしましょう。ノンワイヤーで肌にやさしい素材のソフトブラジャーやカップ付きキャミソールに,軽量のパッドの組み合わせがよいでしょう 図2 。一般的なカップ付きキャミソールでも構いませんが,術後の胸のラインに合わないことがあります。

 図2  ソフトブラジャー

(3)手術創部が落ち着いて,通常の生活に戻るとき
手術創部が落ち着いたら(1~2カ月後頃から),手術前と同じ下着を使用できますが,心配なときは,乳がん手術後専用ブラジャーもあります 図3 。胸元やわきをカバーし,カップ部のポケットには軽量パッドはもちろん,重さのあるシリコンパッドを入れることができます 図4 。通常の生活に戻ると,からだを動かすことが増えるので,適度にホールド力があるブラジャーと,ある程度重さがあるシリコンパッドが,ずれ上がりを防ぎ,安定感を与えます。専用ブラジャーは,乳房全切除術後や乳房部分切除術後だけでなく,再建中や再建後も使えるものもあります。いずれも,正しいサイズを選ぶことが大切で,試着をしたり,返品交換できる店舗での購入が安心です。大切なことはご自身が心地よいと感じるものを選ぶことです。

なお,乳房再建術を受ける場合(☞Q22参照),エキスパンダーを入れて皮膚を伸ばす過程で,医師から下着の指示がないときは,ボリュームの変化に対応できるカップ部に伸縮性のあるノンワイヤーブラジャーで,エキスパンダーがずれにくいデザインのものを選びましょう 図5

また,温泉に入るときや子どもと入浴するときなどに創部をカバーする入浴着 図6 ,からだを動かしてもずれにくい乳房手術後専用のスポーツブラジャー 図7 ,パッドを入れるポケットが付いた水着などもあります。施設によっては,入浴着の使用が禁止されている場合もありますのでご確認ください。

 図3  乳がん手術後専用ブラジャーとその特徴

 図4  手術後のパッド                

図5  再建中も使えるソフトブラジャー

 図6  入浴着

 図7  乳がん手術後専用スポーツブラジャー

※図1~7の写真は一例

胸部補整具などへの助成

自治体によっては胸部補整具(補整下着,補整用シリコンパッド,人工ニップル等)の購入にかかった費用の一部を助成する仕組みもありますので,お住まいの自治体へお問い合わせください(☞Q13の「アピアランスケアに対する助成制度」参照)。