(この質問集は,実際に患者さんから寄せられた質問をもとに作成したものです。)

1.検診について

MRIやPET-CTによる乳がん検診について教えてください。 

自治体などで行う対策型検診で乳房MRI検診を行っているところはありません。行う場合は,任意型検診として行ってください。また,マンモグラフィ検診の補助的な検査として,高濃度乳房の女性にPETを組み合わせることで,乳がんがみつかる確率は増えるかもしれませんが,PET-CTによる乳がん検診の有効性は確立されていません。PETでの検診は自由診療として行われ,検査費用が高額のことが多く,被曝も増えます。このような,費用や被曝を含めた不利益を理解したうえで,任意型乳がん検診として受けることは可能です。

  一方,BRCA1BRCA2遺伝子に変異(病的バリアント)のある女性(遺伝性乳がん卵巣がんの家系)では,乳がんの早期発見のために25歳からの乳房MRIによる乳がん検診(サーベイランス)を行うことが勧められています。  Q65-3 参照

セルフチェックで乳がんをみつけることはできるのですか。

自分の乳房に関心をもち,定期的にセルフチェックをすることは乳がんの早期発見のためにはとても大事なことです。しかし,セルフチェックのみでは十分とはいえません。特に,40歳以上では定期的に乳がん検診を受けることも大切です。最近,乳房を意識する生活習慣として,「ブレスト・アウェアネス」が提唱されています。「ブレスト・アウェアネス」には,自分の乳房の状態を知り,乳房の変化に気をつけ,変化に気づいたら医療機関に相談する,定期的に乳がん検診を受ける,といったことが含まれます。  Q1 参照

40歳未満の人はどうしたらよいですか。

40歳未満の方には,一般的に勧められる検診方法はありません。40歳未満では40歳以上に比較して,乳がんの発症リスクが非常に低く,マンモグラフィや乳房超音波検査で乳がんが適切に発見できる割合も低く(偽陽性や偽陰性が多くなる)なります。乳がんの早期発見のためには,前述のように,ブレスト・アウェアネスという,自分の乳房を意識する生活習慣を実践することが大切です。血縁者に乳がんや卵巣がんの罹患者が複数いる場合など,遺伝性乳がんが心配な場合には,乳がんの専門医のいる医療機関やがん相談支援センターに相談することもできます。40歳未満の女性でのマンモグラフィや乳房超音波検査のメリット,デメリットも理解したうえで,任意型乳がん検診として受けることは可能です。  Q1Q65参照

若い人に乳がんが増えているといいますが,本当ですか。

高齢者も含めて乳がん患者さんの数は増えていますが,若い人だけが特に増えているわけではありません。2018年度の日本乳癌学会の統計では,登録された女性乳がん患者さん94,999人のうち,29歳以下は全体の0.5%, 30~34歳が1.2%,35~39歳が3.2%であり,95%以上は40歳以上で発症しています。

腫瘍マーカーは乳がんの早期発見に役立ちますか。

手術可能な早期乳がん(ステージI-IIIA)では,腫瘍マーカーが基準値を超えて上昇していることはまれです。腫瘍マーカーが乳がんの早期発見に役立つとはいえません。

2.病院について(病院選び,セカンドオピニオンなど)

告知された病院で手術の予約をしましたが,やはり別の病院で治療をしたくなりました。病院を変えることは可能でしょうか。

担当医に意思表示をすれば他院への紹介はしてもらえます。その前にセカンドオピニオンを聞くのも一つの方法です。  Q6 参照

治療の途中で他県に引っ越しをすることになりました。引っ越した先の病院選びはどのようにしたらよいでしょうか。

まずは,現在の担当医に相談をしてみましょう。そのうえで,がん相談支援センターに問い合わせてみましょう。インターネットで探すなら,国立がん研究センターが提供しているがん情報サービス(ganjoho.jp)を用いましょう。乳がんの専門的な診療を受けることのできる全国の医療機関が紹介されています。(https://hospdb.ganjoho.jp/kyoten/cancerkyotenlist?cf_cancer_type=5

セカンドオピニオンを受けたいのですが,どうすればいいですか。担当医にいいづらい場合,どうすればよいでしょうか。

紹介状がなければ原則セカンドオピニオンは受けられません。また,黙って別の病院に行くと,すでに受けている同じ検査を,また受ける可能性もありますので,紹介状を書いてもらってください。まずはセカンドオピニオンとは何か,どのような意義があるのかを理解することが大事です。担当医にいいづらいときは,看護師やがん相談支援センターのスタッフに相談するとよいでしょう。         Q6 参照

3.初期治療(術前・術後の治療)について

術前化学療法を勧められました。先に手術しなくても大丈夫なのですか。 

術前化学療法の適応は,ステージや乳がんの悪性度やサブタイプなどを考えて決めます。化学療法は術前に行っても術後に行っても,乳がんの再発率や生存率は変わらないとされ,一般的には先に手術しなくても大丈夫と考えられます。術前化学療法を受けるのか,先に手術を受けるのか,納得した選択ができるよう,術前化学療法のメリット,デメリットを担当医によく聞き,よく話し合って決めましょう。  Q30 参照

術後化学療法を勧められました。抗がん薬治療は受けたくないのですが,どうしたらいいですか。

術後薬物療法は,からだのどこかに潜んでいるがん細胞(微小転移)を根絶して,再発のリスクを減らし,予後を改善することが目的であり,手術で切除された乳房やリンパ節の組織を病理検査で詳しく調べ,その結果でわかる乳がんの性質と再発のリスクを考慮して決定されます。医師が術後化学療法を勧める際には,その根拠があります。なぜ術後化学療法が必要なのか,受けたときと受けないときで,どのくらい再発のリスクが変わるのか,どのような副作用があるのかなど,よく尋ねましょう。また,ご自分が抗がん薬治療は受けたくないこと,その理由についても担当医に詳しく伝えてください。術後化学療法のメリット,デメリットについて担当医や医療スタッフ,ご家族などと十分話し合ったうえで抗がん薬治療を受けないという選択肢を選ぶことは可能です。

Q27Q29Q31 参照 

手術の後,抗がん薬治療をするようにいわれましたが,拒否をして受けませんでした。手術から2年近く経ちましたが,今から受けても効果はありますか。

この点についてはよくわかっていませんが,再発予防目的で行われる抗がん薬治療は,手術から長い時間が経った後に行った場合,効果はほとんどないと考えられており,実際には手術から2年経った後に抗がん薬治療を行うことはありません。

経過観察中の検査内容や,フォローアップ期間の長さが患者さんによって違うのはなぜですか。 

乳がんはステージや乳がんの性質によって,再発のリスクや再発する時期が大きく異なります。乳がん術後の経過観察時に一般的に勧められているのは,年1回のマンモグラフィと,定期的な医師の診察です。医師の判断で,ステージや乳がんの性質,症状などから適宜検査を行うこともあります。検査をされなくて不安という患者さんもおられるでしょう。経過観察中の検査などについて疑問がある場合には担当医に確認してみましょう。  Q39 参照

4.抗がん薬治療(化学療法)について

抗がん薬は死期を早めるという本を読みましたが,本当ですか。

抗がん薬は正しく使うと,再発率を低下させ,生存率を上げる効果があります。また,再発後も増悪までの期間を延ばす効果があることが証明されています。

抗がん薬治療中ですが,生ものを食べていいですか。

抗がん薬治療中でも,生ものを食べることはできます。生もの(生野菜,果物,刺身など)の摂取による感染症を心配して,免疫力が落ちる抗がん薬治療中は避けたほうがよいのではと考える方がいらっしゃるようですが,あまり明確な根拠はありません。急性白血病の患者さんを,抗がん薬治療中に生野菜・果物を禁止する群と許可する群に分けて感染症の発症率を比較した海外の研究では,感染症の発症率に差はありませんでした。ただし,一般的に生野菜や果物にはウイルスや細菌が付着している場合があり,洗浄が不十分な場合に食中毒を起こした事例も報告されています。抗がん薬治療期間中かどうかにかかわらず,生の野菜や果物はよく洗って食べるようにしましょう。一方,生魚(刺身)や生卵,生肉に関しては抗がん薬治療中の摂取の安全性に関する報告がほとんどありません。刺身や生卵は新鮮なものを食べるようにしましょう。生肉は,食中毒発生状況を考えると避けたほうがよさそうです。

抗がん薬の副作用が少ない(脱毛が少ない,吐き気がないなど)のは抗がん薬の効き目が低いのですか。

一般的には副作用と効果の関係はおそらくないと考えられています。

抗がん薬治療を受けると必ず脱毛するのでしょうか。抗がん薬投与中に頭を冷やすと脱毛しないと聞きました。本当でしょうか。

脱毛の起こる抗がん薬と起こらない抗がん薬があります。専用の医療機器で低温にした冷却液を専用キャップに流し,頭部を冷やすことによって脱毛を抑える頭皮冷却を併用して抗がん薬治療を行っている医療機関もあります。費用も医療機関によって異なります。頭皮冷却に関心がある場合には,担当医や医療スタッフ,がん相談支援センターなどに尋ねてみましょう。  Q49 参照

腕の血管から点滴がしにくく,CVポートを勧められました。CVポートとはどのようなものですか。

抗がん薬の投与を腕の静脈から繰り返し行っていくうちに,血管が傷つき,血管に針が入りにくくなることがあります。CVポートとは,点滴や注射の抗がん薬(化学療法薬)を安全に投与するために,カテーテルの先を中心静脈(central vein; CV)に留置し,薬剤を注入するための器具(ポート)に接続して,皮下に埋め込み留置するもののことです。  Q50 参照

虫歯や歯周病があると抗がん薬治療は受けられないのでしょうか。

抗がん薬治療中に虫歯や歯周病が悪化することがあります。できれば,抗がん薬治療開始前に,これらの治療を受けることをお勧めします。ただし,個々の患者さんで違いがありますので,担当医にご相談ください。  Q51 参照

手足を冷やすフローズン(アイス)グローブで,抗がん薬治療の副作用である爪・皮膚障害を防ぐことができますか。

タキサン系薬剤(パクリタキセル,ドセタキセルなど)では約30~50%の方に爪障害の副作用が起こります。その対策として,フローズン(アイス)グローブ(冷却手袋)などによる冷却療法が,爪障害の発現率と重症度を低下させることが複数の臨床研究で報告されています。ただし,装着時の不快感によって継続できない方がいること,凍傷などの有害事象の報告などもあり,すべての施設で導入されているわけではありません。フローズン(アイス)グローブの温度や着用時間についても,どのくらいが最適なのかは今後の検討課題とされています。抗がん薬治療中の爪のお手入れについてはQ49をご参照ください。

手足のしびれ,ピリピリ感が治療後も続いています。どうすればよいでしょうか。

一部の抗がん薬の副作用でしびれや感覚異常などの神経障害が起こることがあります。治療中だけでなく,治療終了後も長い期間,症状が残る場合があります。症状の程度が強い方では持続期間も長くなる傾向にありますので,抗がん薬治療実施期間中にしびれやピリピリ感などの神経障害の症状が現れたら,早めに医師や薬剤師に相談しましょう。抗がん薬の用量を調節したり,神経障害の症状を和らげる薬などを使用できる場合があります。  Q48 参照

5.ホルモン療法について

患者さんによってLH-RHアゴニスト製剤の術後の投与年数が違うのはなぜですか。

LH-RHアゴニスト製剤の最適な投与期間は2~5年というところまでしかわかっていません。投与期間は患者さんの再発リスク,がんの性質に応じて決められます。  Q32 , Q42 参照

ホルモン療法を受けると太りやすくなると聞きましたが,本当ですか。

ホルモン療法薬のうち,タモキシフェンや酢酸メドキシプロゲステロン(商品名 ヒスロンH)では副作用による体重増加が起こることが知られています。そのほかのホルモン療法薬では,体重増加と薬剤の直接的な影響は明らかではありませんが,脂質代謝やホルモンバランスへの影響もあり,ホルモン療法施行後に太ったと感じる方は多いようです。残念ながら,ホルモン療法による体重増加に対する有効な治療は確立されていません。適切な食事,運動療法を行って体重管理を心がけましょう。

ホルモン療法の副作用に,子宮体がんのリスクが高くなるとありましたが,大丈夫なのでしょうか。

タモキシフェンを服用した場合に,閉経後では子宮体がんのリスクがわずかに上昇しますが,閉経前の方ではリスクはほとんど上昇しません。不正性器出血などの症状がある場合には,婦人科での精査が勧められます。  Q47 参照

LH-RHアゴニスト製剤の投与終了後,どのくらいで生理が再開しますか。また,生理が再び始まることで再発のリスクが高まる心配はありませんか。

LH-RHアゴニスト製剤投与終了後,生理が再開するかどうか,またどのくらいで再開するのかということについては,年齢やLH-RHアゴニスト製剤の投与期間,抗がん薬治療やその他の治療による影響や個人差が非常に大きく,正確な予測はできません。ただ,治療終了後の年齢が若いほど生理が再開する可能性は高いです。また,LH-RHアゴニスト製剤投与終了後に生理が再開することで乳がんの再発リスクが上がることはないと考えられています。

アロマターゼ阻害薬による関節痛を和らげるにはどうしたらよいでしょうか。

温めたり,よく動かすと痛みが和らぐことがあります。鎮痛薬を使用しても良くならない場合には,ホルモン療法薬の変更を検討してもよいでしょう。          Q47 参照

術後ホルモン療法後に再発した場合,もうホルモン療法は受けられないのですか。

ホルモン療法後の再発でも多くの場合,再度ホルモン療法を受けることができます。再発までの期間や閉経状況なども考慮して,どのホルモン療法薬を使うかを決めます。  Q42 参照

6.乳房再建について

人工乳房(インプラント)は,定期的に取り替える必要があるのですか。

シリコンインプラントは半永久的ではなく,破損や合併症(被膜拘縮,胸の痛み),整容性の問題(左右差,しわなど)で入れ替えが必要になることがあります。近年,インプラントを挿入して何年か(平均7~9年)経過したあとに,「乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)」または,「乳房インプラント関連扁平上皮がん(BIA-SCC)」が発生する例がごくまれですが報告されています。再建手術後も破損や変形がないかを調べるため,乳房再建の手術を受けた病院への定期的な受診をお勧めします。詳しくは,一般社団法人 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会ホームページ(http://jopbs.umin.jp/general/)の一般向け・患者さん向け情報をご覧ください。

乳がん治療をしている医療機関とは別の医療機関で乳房再建することは可能ですか。

通常は可能と思われます。担当医にご相談ください。

7.リンパ浮腫について

センチネルリンパ節生検を受けたのですが,浮腫に気をつけなければなりませんか。

通常,センチネルリンパ節生検のみで浮腫はほとんど起こりません。気にしすぎる必要はありませんが,だるさやむくみを感じたときは担当医に相談しましょう。  Q20 , Q23 参照

腋窩リンパ節郭清後も,赤ちゃんは抱っこできますか。テニスやゴルフ,ボーリングなどの運動をしても大丈夫ですか。

大丈夫です。ただし,手術した側の腕や手にだるさやむくみを感じたときは,早めに腕を休ませるようにし,元に戻らないときは担当医に相談しましょう。

腋窩リンパ節郭清後,わきの永久脱毛を受けても問題ないですか。

永久脱毛による影響についてははっきりわかっていません。医師や看護師など国家資格をもつスタッフが施術を行う医療脱毛クリニックの医師に相談しましょう。

8.転移・再発について

乳がんが再発したり,他の臓器に転移をしたら,完治は望めないのでしょうか。

切除が可能な局所領域再発のみの場合は,治療で治癒する可能性があります。しかし,切除できないような局所領域再発や遠隔転移再発,また,乳がんの診断時から遠隔転移を伴っている場合は,治癒は難しいのが現状です。 

Q41 , Q42 , Q43 参照

転移や再発は,できるだけ早くみつけたほうがよいのでしょうか。  

転移や再発は早くみつけると,再発の診断からの生存期間は長くなります。しかし,抗がん薬などの治療を受ける期間は長くなりますし,最初に乳がんと診断されてからの生存期間全体の延長にはあまり役に立たないことが,さまざまな研究で明らかになっています。 
 Q39 , Q40 参照

転移や再発をしたときは,どんな自覚症状があるのでしょうか。

乳がんの遠隔転移は,骨や肺,肝臓,リンパ節などに起こることが多いのですが,その転移する部位や症状は人によって大きく異なり,何らかの症状を伴う場合もあれば,まったく自覚症状のない場合もあります。骨に転移した場合は,その部位の痛みを感じることがあり,肺の場合は,息切れや咳が続くことがあります。リンパ節の場合は,首やわきの下のリンパ節の腫れを自覚することがあります。脳の場合は,頭痛やめまい,手足の麻痺などがあります。気になる症状があるときは担当医や医療スタッフに伝えてください。 

        Q40 , Q44 Q45 参照

転移後にがんのサブタイプが変わることはあるのでしょうか。 

頻度は高くありませんが,転移・再発した部位の乳がんのサブタイプが,原発巣(治療前の乳房のがん)と異なることはあります。生検しやすい部位に再発している場合には,ホルモン受容体やHER2などを改めて調べてから治療を開始したほうがよいと考えられますが,生検を行うことが難しい部位に再発した場合には,原発巣の性質に基づいて治療を開始します。原発巣の性質に基づいて治療を開始しても,思うような治療効果が得られない場合,サブタイプの変化を考慮して生検を行うこともあります。

9.臨床試験,治験について

臨床試験に参加するようにいわれましたが,どうしたらよいでしょうか。

 臨床試験の内容や目的などをよく理解したうえで判断しましょう。断っても患者さんが不利益を被ることはありません。また,試験によっては,CRC (clinical research coordinator)という治験や臨床試験に専門的に携わっているサポート役(薬剤師,看護師など)がつくことがありますので,不安を感じることやわからないことは相談をしてみましょう。  Q7 , Q8 参照

治験や臨床試験に参加したいのですが,どうやって探せばよいですか。

まず,担当医にご相談ください。各地域のがん相談支援センターに問い合わせることもできます。また,国立がん研究センターが提供しているがん情報サービス(https://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/index.html)などでも検索できます。

10.ウィッグについて

ウィッグは,いつまでに,何個くらい用意すればいいですか。また,ウィッグのお手入れ方法を教えてください。

ウィッグは,抗がん薬治療開始前に準備すると安心ですが,脱毛が始まってから用意することもできます。その日から使える既製品から,できあがるまでに1カ月程度かかるオーダーメイドのものまであります。基本的に1個あればよいと思われますが,用途に合わせて複数もっている人もいます。お手入れ方法は,毛質によっても異なりますので,購入時に担当者にお尋ねください。         Q49 参照

ウィッグが取れるくらいまでに髪の毛が伸びるのには,どれくらいの期間がかかりますか。

使っていた抗がん薬の種類や期間によって,個人差が大きいです。通常は,抗がん薬治療が終了して1カ月程度で髪が生え始め,その後,半年から1年ほどでウィッグが取れるショートスタイルくらいまで伸びる人が多いようです。なかには髪の毛の量が元通りには戻らない方もいらっしゃいます。  Q49 参照

乳がん治療中に購入したウィッグは医療費控除の対象になりますか。

通常,ウィッグは医療費控除の対象とはなりません。自治体によっては助成金を用意しているケースもありますので,お住まいの自治体にも確認してください。  Q13 参照

11.心のケアについて

再発がいつも心配です。どうしたら対処できるのでしょうか。

心配な気持ちを一人で抱え込まないようにしましょう。ご家族や友人と話したり,患者会などで思っていることを話して同じ気持ちを共有したり,医師や看護師,がん相談支援センターのスタッフに遠慮なく相談してください。         Q9 参照

うつ状態といわれ,担当医から精神科の受診を勧められましたが,抵抗があります。どうしたらよいでしょうか。

不安や気持ちの落ち込みなどにより,よく眠れないなど身体的な症状が現れることがあります。そのような状況が長く続くことは,ご自身にとってもつらいことと思われます。このような症状を和らげるために,精神科の医師のみでなく,精神腫瘍科や心療内科の医師や臨床心理士などに相談されるのもよいと思います。適切な投薬を受けたり,自分の気持ちを率直に語れる場があることで症状が改善することもあります。  Q9 参照

12.日常生活について

転移・再発をしないための生活の仕方が知りたいです。

これをすれば転移・再発しない,という方法はありません。一般的にいわれている健康的な生活(禁煙,適度な運動,暴飲暴食を避けるなど)をしましょう。         Q60 参照

抗がん薬治療中はグレープフルーツは食べてはいけないと聞きましたが,本当ですか。

一般的に,飲み薬の多くは,腸管で吸収され,体内で作用し,肝臓などの薬物代謝酵素で薬効のない物質に変化したり,腎臓から体外に尿とともに排出されます。さらに薬によっては,最初に腸管で吸収されるときにも,腸管に存在する薬物代謝酵素の働きで代謝されます。グレープフルーツなど一部の柑橘類には,この腸管での代謝酵素の働きを抑える物質(フラノクマリン類)が含まれているため,腸管で代謝される割合が減り,その結果,体内に吸収される量が通常より増えてしまいます。このため,効果が強く出すぎたり,副作用が現れやすくなったりすると考えられています。この作用はグレープフルーツジュースを飲んだ日だけではなく,数日続く場合もあるといわれていますので注意が必要です。フラノクマリン類を多く含む柑橘類には,グレープフルーツ以外に,はっさく,夏みかん,ブンタン,(ばん)(ぺい)()などがあります。すべての抗がん薬/柑橘類で影響が出るわけではありませんので,詳しくは薬剤師や医師に相談してみましょう。

治療で生理が止まっていましたが,突然出血があり,心配です。担当医にすぐに相談したほうがよいですか。

乳がんの治療中や治療後に生理が止まっている場合の突然の出血は,生理なのか不正出血なのか区別は難しいものです。慌てなくてもよいので,婦人科に相談し,担当医にも報告することが必要です。

治療中にお酒を飲んでもよいですか。

アルコール摂取により乳がん発症リスクが高くなることは,閉経前では可能性があり,閉経後ではほぼ確実です。一方,アルコール摂取により乳がん再発リスク,乳がん死亡リスクが増加する可能性は低いです。ただし,アルコール摂取により,反対側の乳房の乳がん発症リスクや,他のがんの発症リスクも高めますので,アルコール飲料を摂取する場合は,量を控えめにすることが大切です。治療中の飲酒については担当医や薬剤師など医療スタッフに相談しましょう。         Q60-3Q62-2 参照

補完代替医療(アガリクス,高濃度ビタミンCなど)は有効ですか。

補完代替医療(アガリクス,高濃度ビタミンCなど)が,乳がんの進行を抑えたり,再発を予防する効果は医学的に証明されていません。逆に,併用することで本来の治療の効果を下げたり,肝臓などが悪くなり,本来の治療が予定通り行われなくなる可能性もあります。補完代替医療を受けたい,あるいは受けるかどうか迷っている場合には,担当医にご確認ください。  Q61 参照

13.痛みについて

乳房の手術後に,ときどき胸が痛むことがあります。再発と関係ありますか。痛みは我慢すべきですか。

乳がんの手術を受けたことによる,胸部からわき,上腕にかけての痛み,違和感やしびれなどの知覚異常は,多くの場合,術後数カ月で和らぎます。しかし,神経痛のようにきりきりとした感覚の痛みや鈍痛などは,数年以上経っても消えない場合があります。決してまれなことではありません。痛むと心配になることもあると思いますが,多くは再発とは関連のない慢性的な痛みです。痛みについては,我慢する必要はありませんので,担当医に相談しましょう。         Q23Q59 参照

医師から医療用麻薬を処方されました。薬物依存になるのが怖くて飲めません。飲んだほうがよいでしょうか。

現在使用可能な医療用麻薬で薬物依存になることはありません。生活の質を維持するためにも痛みはできるだけ取り除いたほうがよいです。         Q12Q59 参照

14.妊娠,出産,授乳について

乳がん治療後に出産する場合,妊娠経過や出産に影響はありますか。

乳がん診断後2年以内や,抗がん薬治療を受けたことのある場合,抗がん薬治療を終了して1年以内などに妊娠をした場合は,早産や低出生体重児の可能性がやや高くなるという報告があります。また,妊娠中は母体の血液循環や心機能に負荷がかかります。これまでに行った乳がんの治療の内容(手術,抗がん薬治療やホルモン療法,放射線療法など)をできるだけ正確に産婦人科医に伝えましょう。 Q55 参照

遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)と診断されています。乳がん治療後の妊娠や出産に影響はありますか。

HBOCの方において,乳がん治療後の妊娠や出産が予後に大きな影響を与えることはないと考えられます。HBOCの診療では卵巣がんに対する検診(サーベイランス)やリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)が推奨されています。適切な出産時期について担当医や産婦人科医と検討しましょう。また,子どもにBRCA1/2遺伝子の変異(病的バリアント)が伝わるリスクについても,カウンセリングなどで相談しましょう。  Q65 参照

術後のホルモン療法を中断して妊娠を目指すか悩んでいます。どのような点を考慮して決めたらよいでしょうか。

術後のホルモン療法は,乳がんの性質や再発のリスクに応じて種類や期間が計画されていることでしょう。治療を継続するか,中断するか,それぞれでどのような影響が予想されるのか,パートナーとともに担当医と相談をしましょう。ホルモン療法を中断して妊娠・出産を目指す場合には,その後にホルモン療法を再開するかも検討しておきましょう。

治療が終わり,妊娠・出産を希望しています。まず誰に,どこに相談すればよいかわかりません。どのように進めていけばよいのでしょうか。

これまでどのような治療をしてきたか,年齢などで自然妊娠のしやすさは異なってきます。基礎体温を計測したり,産婦人科で現在の卵巣機能のチェックなどをしてみましょう。乳がん治療医には妊娠を希望していることを,また産婦人科医には乳がんの治療歴について伝えましょう。排卵誘発などの生殖医療を検討する場合には,がん治療医に相談を行い,生殖医療医との連携を依頼するとよいでしょう。

乳房部分切除術後でも,授乳はできなくなるのですか。

乳房部分切除術後に放射線療法を行った場合,その乳房から乳汁はほとんど出ず,授乳はほとんどできないことが知られていますが,反対側の乳房からの授乳は可能です。

15.セクシュアリティについて

治療中に性交渉をしても大丈夫でしょうか。注意することはありますか。

基本的には大丈夫です。薬物療法によって白血球や血小板が減少している時期は,感染や出血が起きやすくなるので,性交渉を控えるほうがよいです。

性交渉が怖くなりました。性交渉が再発に影響することはありますか。

性交渉をすることで性欲が性ホルモン増加に影響するのではないか,再発に影響するのではないかなど,心配になる方もいらっしゃるかと思いますが,性交渉が再発に影響することはありません。

性交痛に悩んでいますが,異性の担当医には相談しづらく話せません。どうしたらよいのでしょうか。

看護師などの医療スタッフに相談していただくとよいと思います。施設内に認定看護師や専門看護師などがいる場合は,遠慮なく相談してみましょう。性交痛に対しては,潤滑剤(リューブゼリー®)などを使用するとよいでしょう。病院の売店やドラッグストアで入手可能です。

性欲が低下しています。治療の影響でしょうか。その場合,どれくらい続くのでしょうか。

薬物療法によって,性ホルモンの状況が変化して性欲が低下することがあります。また,性欲の低下には,性ホルモンの変化以外にも,治療に対する気持ちや生活環境の変化,パートナーとの関係性の変化なども影響するので,持続期間は個人差があると思います。

ボディイメージの変化や性交渉に対する気持ちを,どのようにパートナーに伝えたらよいでしょうか。

パートナーの方は,一般的に,話にどのくらいの時間がかかるか,自分は何をすればよいかというめどがわかると心に余裕をもって話を聞けることが多いようです。パートナーの方に,「聞いてほしいことがあるの。5分でいいから,手を握って,うんうんとうなずきながら話を聞いてほしい」というように具体的に何をしてほしいかを伝えてから,話を聞いてもらうとよいと思います。また,自分が伝えたいことを率直に話すことが大切です。「察する」というコミュニケーションでは,すれ違いを生じることになります。直接話をするのが難しいときは,看護師などの医療スタッフに相談してください。

16.遺伝性乳がん卵巣がんと診断された場合の子どもや血縁者への対応について

遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)と診断された場合は,子どもや血縁者に対してどのような対応がありますか。

HBOCの家系では,BRCA1BRCA2遺伝子の変異(病的バリアント)は親から子に2分の1(50%)の確率で伝わります。家系の中でも病的バリアントをもつ人ともたない人がいることになります。病的バリアントが伝わる確率に男女差はありません。遺伝性乳がんの場合,女性では将来,乳がんや卵巣がんの発症リスクが高いことが知られていますので,乳がんなどの検診(サーベイランス)について専門家に相談をするとよいでしょう。男性の場合は生涯の乳がん発症リスクは6%程度であること,また,乳がん以外に膵がんや前立腺がんのリスクが高いこともわかっています。

お子さんや血縁者の方がBRCA1BRCA2遺伝子の遺伝学的検査を受けるかどうかは,その方の自由意思に基づいて決めます。血縁者の方に遺伝性乳がんについて話をし,遺伝カウンセリングを受けることなどを相談してみましょう。お子さんの場合,一般的に遺伝学的検査は成人以降に実施を検討します。現在,日本ではがんを発症していない方の遺伝学的検査や乳がんなどの検診(サーベイランス),リスク低減手術などは保険適用外です。  Q65-1 参照