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年1回のマンモグラフィと,定期的な医師の診察を受けることが一般的です。

解説
手術後の検査

乳がんの手術後,患者さんにとって一番心配なことは再発だと思います。再発を防ぐために適切な治療を受けている一方,再発を早期に発見するためにさまざまな検査(CTなどの画像検査や,腫瘍マーカーを含む血液検査)を定期的に受けている患者さんも少なくないと思います。

ただ,これらの検査を症状がないときに定期的に行うことによる,乳がんの生存率向上は示されていません。また,手術後の定期的な検査受診によって再発が発見された患者さんは,何らかの自覚症状によって再発と診断された患者さんに比べ,再発の発見時期が早くなることから,再発と診断されたときからのみかけ上の生存期間が長くなります。しかし,抗がん薬などの治療を受ける期間は長くなりますし,最初に乳がんと診断されてからの生存期間全体の延長にはあまり役に立たないことが,さまざまな研究で明らかになっています。初発の乳がんは小さいうちにみつけて治療することが重要ですが,再発はがん細胞が血液やリンパの流れに乗って,からだのあちこちに運ばれて出てきたものなので,これをすべて根絶するのは大変難しいことです。再発乳がんの治療は進行を抑えたり症状を和らげたりすることを目的に行いますが,再発を早くみつけて早く治療を始めても治療効果が高くなるわけではありません。したがって,再発の早期発見よりも,再発の芽が潜んでいる可能性のある手術後や手術前に,しっかりと再発予防目的の治療を受けることが重要です。

一方,マンモグラフィは温存した乳房の局所再発や,対側乳房にできる異時性乳がんの診断に有効で,これらのがんはより早期に発見することで生存率の向上が期待できますので,乳がん手術後の経過観察中でも年1回のマンモグラフィは推奨されます。

腫瘍マーカーの役割

腫瘍マーカーとは,がん細胞がつくる物質,または,がん細胞に反応して正常細胞がつくる物質のことで,血液や体液などの中に含まれています。一般的には血液検査によって,その物質がどのくらい存在するかをみて,体内にがんがあるかどうかを推測したり,治療の効果が出ているかどうかの参考にしたりします。腫瘍マーカーにはさまざまな種類があり,乳がんでは,CA15-3,CEA,NCC-ST-439 などがよく使われます。

腫瘍マーカーは,結果が数値で表れるため,患者さんにとっては比較的わかりやすいものですが,乳がん手術後の再発をチェックする目的にはあまり役に立ちません。腫瘍マーカーは100%正確にがんの再発を示すものではないので,腫瘍マーカーの数値が高くなったとしても必ずしもがんが再発したというわけではなく,また,腫瘍マーカーの上昇がなくても再発している場合もあります。腫瘍マーカーの役割はあくまでも補助的なもので,腫瘍マーカーだけで何かがはっきりわかるわけではありません。数値の変動に振り回されないようにしましょう。

地域医療連携パスの役割

地域医療連携パスとは,がん治療を行う拠点病院と地域のかかりつけ医とが,がん患者さんの治療を協力して行うための治療計画表です。拠点病院で手術や抗がん薬治療などの専門的な治療を行った後に,お薬の処方や日常的な検査は地域のかかりつけ医が担当し,節目の検査は拠点病院で行うという流れになります。拠点病院に患者さんが集中する弊害として診療待ち時間の延長などが挙げられ,それに伴い,時間をかけるべき患者さんに十分な時間を取れないことが問題となります。方針の決まった後の定期的な通院先をご自宅近くのかかりつけ医にすることで,通院時間の短縮や通院費用の軽減なども期待でき,日常の体調管理などの相談もしやすい環境が得られます。拠点病院の外来診療をかかりつけ医と分業することで,拠点病院の本来の業務である専門治療に多くの時間をかけることが可能となり,より満足度の高い乳がん治療の実現を目指すのが地域医療連携パスです。地域による違いもあると思いますので,各医療機関の状況を確認しましょう。