診療ガイドライン委員会(2022年10月~2024年9月) 委員長 山本 豊

診療ガイドラインとは,平たくいえば,医療者が診療を行ううえでの「手引き」です。いろいろな種類の診療内容(診断や治療など)に対して,現在の標準治療(現在行える最善の治療)が示されています(標準治療の詳細についてはQ7をご参照ください)。

本書は,最新の医療者向けの『乳癌診療ガイドライン2022年版』の要点をわかりやすく患者さん向けに解説したものです。この乳癌診療ガイドライン作成にあたっては,公益財団法人日本医療機能評価機構で作成されたMinds(medical information distribution service)診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0に準拠しました。90名ほどの専門家が作成しており,診療内容の推奨の強さ(その診療内容を行うべきか,行ってもよいか,行うべきでないか等)を決める投票会議には医師,看護師,薬剤師などの医療関係者だけでなく患者さんの代表者にも参加していただき,偏りが少なく,多くの方に賛同いただける診療方法を推薦しています。

本書の主な目的は,①患者さんにご自身の病気の理解を深めていただくこと,②患者さんが医師などの医療者と対等な立場でご自身の病気や治療方針について語り合う手助けとなること,③現在の最善の治療である標準治療を受ける機会を患者さんに失わせないことです。

診断や治療に関する項目は,実際に日々乳がん患者さんを診療し,患者さんの悩みや苦悩を肌感覚で理解している医師を含む医療関係者および患者さんの代表者が執筆しております。記載内容は,患者さんが思っておられる乳がん診療での疑問についてお答えする形をとっており,乳がん診療全般をカバーするとともに専門性も維持された内容となっています。乳がん患者さん,および,そのご家族や友人のお気持ちに寄り添える一冊となるよう努めてきました。ぜひ手に取っていただき,皆様の乳がん診療の一助となること祈念しております。