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退院するときには,ほとんど身の回りのことはできるようになっていますが,無理をせずに徐々にからだの調子を戻していくようにしましょう。

手術で腋窩(えきか)リンパ節郭清(かくせい)をした場合は,腕や肩のリハビリテーションが必要です。通常は,術後翌日~7日前後から開始します。

解説
術後の生活・仕事

手術が終わって退院するときには,多少の支障はあっても身の回りのことはほとんどできるようになっています。しかし,無理はしないことが大切です。徐々にからだを戻していくようにします。 仕事に復帰する時期は個人差があり,手術の方法や手術後の治療方針,個人の価値観や会社の考え方によっても違ってきます。乳房を切除し,腋窩リンパ節郭清をしても,通常,術後1~2カ月くらいたてば,軽い運動ができるようになってきます。仕事の復帰や運動の開始時期については,医療スタッフや職場の担当者と相談しましょう。術後の食事や生活習慣についてはQ60を,就労支援についてはQ11をご参照ください。

術後の(きず)について

ドレーン(リンパ液などの滲出液(しんしゅつえき)をからだの外に出すための管)が抜けて退院する頃には,手術の創はシャワーや入浴で濡らしても大丈夫です。ドレーンが入っていない場合には,入院中からシャワー可能な場合もあります。手術創やその周囲は時間経過とともに赤みや(は)れが引いてきますが,「創から滲出液が出てきた」「皮膚が赤く腫れてきた」など,創に関して心配なことがあれば,ご自分で判断せず,医療スタッフに相談してください。

術後のリハビリテーションについて

手術で腋窩リンパ節郭清を行う(☞Q21参照)と,リンパ液の流れが悪くなり,創がつっぱり,腕や肩を動かさないことで,術後の後遺症として肩関節の動きの制限(拘縮(こうしゅく))が起きることがあります。これを予防するために,腋窩リンパ節を郭清したときはリハビリテーションを行う必要があります。開始時期は,ドレーンが抜けて(手術後1週間前後)から開始する考え方と,ドレーンを入れたまま手術の翌日くらいから開始する考え方の2通りがあります。本格的なリハビリテーションを早くから開始すると,手術でリンパ節を切除した場所に体液がたまりやすい(漿液腫(しょうえきしゅ)seroma(セローマ)と呼びます)といわれています。

リハビリテーションで肩の周りの筋肉を十分に動かし,背中のリンパ管の働きを促進することでリンパ浮腫の予防にもなると考えられます。手術後のリハビリテーションは手術直後や入院中だけでなく,退院後も継続して行う必要があります。家庭の中でできる簡単な運動などもありますので,看護師やリハビリテーションスタッフに聞いてみましょう。

センチネルリンパ節生検(☞Q20参照)を受け,腋窩リンパ節郭清を行わなかった場合は,腕や肩の動きに対する影響や手術後のリンパ浮腫の可能性は少ないと考えられるため,リハビリテーションは基本的には必要ありません。しかし,まれに拘縮やリンパ浮腫を発症することもあるので,日常生活の中にリハビリテーションの動作を意識的に取り入れるとよいでしょう。

リハビリテーションの例

各項目10回で1セットとし,1日3セット程度行います。
①腕の挙上運動  図1  
②壁のぼり運動  図2 
③肩関節運動  図3 

 図1  腕の挙上運動

 図2  壁のぼり運動

 図3  肩関節運動