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乳がんと診断されたら,早く治療を受けたいと希望されると思いますが,あせらずに,落ち着いて治療方針を検討しましょう。まずは,医師の説明をよく聞いて,ご自身の乳がんの状態や性質を知り,これからの検査や治療の内容や進め方を話し合うことが大切です。

解説
乳がんと診断されたとき

乳がんと診断されると,急いで治療を開始しないと乳がんが広がってしまうのではないかと心配されることもあると思います。しかし,1cmの乳がんのしこりの中には約10億個もの乳がん細胞が含まれており,乳房の中に1個のがん細胞が生じてから1cmのしこりになるまでに,おそらく何年もの時間が経っていると考えられています。乳がんと診断されたときには,それぞれの患者さんに最も適した治療を選択するためにも,乳がんの広がりや進行度,性質を正しく評価することが大切です。乳がんと診断されても,あせらずに,落ち着いて治療方針を検討しましょう。そのためにも医師の説明をよく聞き,これからの検査や治療の内容や進め方を話し合うことが大切です。

乳がんと診断されて治療を受ける病院を紹介されたとき

クリニックや検診機関で乳がんと診断されると,医師は,治療を受ける病院の候補と,その病院でどのような治療を受けることが可能かを説明してくれます。紹介状や検査の資料を受け取り,予約方法も聞いておくとよいでしょう。自宅に近い場所,勤務先に近い場所など,これからの通院のことも考えて,治療を受ける病院について医師にあなたの希望を伝え,一緒に考えてもらいましょう。

紹介された病院を受診したとき

問診では,今までに受けた乳がん検診の経過や近親者のがんの有無,治療中の病気の有無や服薬状況などが質問されます。また,診断を受けたクリニックや検診機関でどのような検査を受けたか・検査結果をどのように聞いているかなどの質問もあります。

診察室で初対面の医師と話をするのは緊張するかもしれません。医師は,これからどのような検査を行うか,治療をどのように決めていくか,治療にかかる期間や,入院時期の目安などを説明します。メモを取りながら話を聞いて構いません。一人では不安な方は,家族や親しい知人と一緒に話を聞くとよいでしょう。

医師の説明を理解するために

医師が使う専門用語は,一般には馴染(なじ)みのないものです。わからない言葉が出てきたときには遠慮せず,すぐにその場で質問し,わからないままにしておかないようにしましょう。医師に直接確認できない場合には,看護師や薬剤師など医療スタッフに尋ねることもできます。病院には医師だけではなく,患者さんをサポートする大勢のスタッフがいますので,遠慮せず相談や質問をしてみましょう。一人で説明を受けるのが不安な方は,ご家族や友人など信頼がおける人と一緒に医師の話を聞くとよいでしょう。話の内容を理解するうえでも,気持ちの整理をするうえでも,心強いものです。また,録音したいときには,事前に申し出て許可を取るのがマナーです。

この『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』も医師の説明を理解するうえで役に立つと思います。また,医療スタッフと話をするときに本書を持って行き,活用するのもよいでしょう。

治療を受ける病院を自分で決めるとき

クリニックや検診機関で提案された病院以外で,ご自身で病院を決めるときは,「乳腺外科」「乳腺科」「乳腺センター」などの診療科が目安になります。病院の案内にこのような科が掲載されていなくても,中規模以上の病院には,乳がん治療を専門にしている医師がいる場合が多いので,問い合わせてみてください。日本乳癌学会が認定している乳腺専門医のいる医療機関は,日本乳癌学会のホームページにも掲載されています(https://www.jbcs.gr.jp/modules/elearning/index.php?content_id=6)。また,国立がん研究センターがん情報サービスでも,病院を探すことができます。がん情報サービスから病院のホームページにアクセスをしたり,病気の情報を得ることもできますので,活用してみてください(https://ganjoho.jp/public/index.html)。

通院に要する時間や交通手段,ご高齢の場合には同伴する家族の都合なども検討して,病院を決めるとよいでしょう。