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大切な人には病気のことを率直に話し,病気に関しての悩みを打ち明け,お互いの気持ちを共有しましょう。

解説
パートナーとどう向き合えばよいのでしょうか

乳がんになったとき,「夫や妻,パートナーに心配や迷惑をかけたくないから,病気のことをあまり話さない」という方がいます。しかし,このような場合,パートナーも,あなたの状況を十分理解していないがために逆に不安となり,どのように接してよいかわからなくなることもあります。病気の経過の中ではあまりよくない情報もあるかもしれませんが,病気の現状や治療について,パートナーと情報を共有し,協力をしてもらうことが大切です。外来での治療が中心になると,患者さんが一人で受診することも多いかと思います。こうした場合でも,折に触れて,治療の経過や担当医との話の内容をパートナーに伝えるようにしましょう。また,大切な話を聞くときには同席してもらいましょう。

一方で,「パートナーは自分の気持ちをわかってくれないだろう」とか「これ以上の心配をかけさせたくない」と思う場合もあります。気持ちをわかってもらうことはなかなか難しいものですが,自分の感じていること,病気への不安や悩みなど自分の心の内を,まずは話してみることが大切です。そして,お互いの気持ちを語り合ったり,希望することをパートナーに伝えたりするとよいでしょう。

子どもとどう向き合えばよいのでしょうか

乳がんになったとき,「病気についてどのように子どもに説明をすればよいか」と悩む方は多く,特に子どもが小さければ病気について話すこと自体にも迷いが生じるでしょう。大切なことは,まず上で述べたように,患者さんやパートナーが病気についてしっかり理解し,共通の認識をもっておくことです。親の理解が不十分であったり,夫婦それぞれの理解が異なったまま子どもに情報を伝えたりすると,正確な情報が伝わらず,そのため子どもの不安やうつといった心理的負担が増してしまう可能性があります。

子どもに何をどこまで伝えたらよいかは,子どもの理解度によって異なるでしょう。例えば小学生くらいであれば,お母さんが病気で,入院や通院が必要なことを話し,中学生ぐらいであれば,病気や治療の内容を少し詳しく話し,高校生以上であればほかの大人と同じ内容をわかりやすく話すとよいでしょう。

また,伝える際には,率直に話し,嘘をつかないこと,一度に全部を伝えようと思わず,情報を少しずつ理解できる範囲で何度も繰り返し説明することが重要です。そして,「治療のせいで具合が良くないときはあるかもしれないけれど,自分はいつも変わらないこと」を伝えるのと同時に,心理的なサポートを家族みんなで行っていくことが重要です。そうすれば,小さな子どもでも病気のことをしっかりと受け止め,精神的に不安定になることは少ないと思われます。子どもと一緒に読むことができ,病気の理解を深める絵本タイプの小冊子などもありますので,それらを利用するのもよいでしょう。がんになった親をもつ子どもをサポートするための情報サイト(「Hope Tree(ホープツリー)~パパやママががんになったら~」https://hope-tree.jp/)も参考になるかもしれません。

親とどう向き合えばよいでしょうか

がんになったことを親御さんに伝えるか,伝えないか迷う方も多いと思いますが,特別な事情がない限りは,がんになったことを親御さんに伝えましょう。子どもががんになったと知った親御さんは,当事者以上にショックを受ける場合や,自分を責めてしまう場合があります。そのため,伝えるタイミングや伝え方も大切です。特に親御さんが高齢の場合や離れて暮らしている場合は,伝え方の工夫も必要です。直接,顔を合わせて伝えるのが一番望ましいですが,それが難しい場合は,タイミングをみて電話や手紙,メールで伝える,もしくは親類など信頼できる人から親御さんに伝えてもらうなども一つの方法です。