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初期治療は,病状や患者さんの希望に合わせて,最適な局所療法と全身治療を組み合わせ,微小転移を根絶して乳がんの再発を抑え,乳がんを完全に治すこと(治癒)やより長い生存期間を目指すものです。
解説
初期治療とは
他の臓器への明らかな転移(遠隔転移)がない乳がんと診断された患者さんが,最初に受ける治療を「初期治療」と呼びます。「初期治療」というのは,すでに起こっているかもしれない微小転移を根絶し,乳がんを完全に治すこと(治癒)やより長い生存期間を目指すものです。初期治療には,手術,放射線療法といった局所療法と,化学療法(抗がん薬治療),ホルモン療法(内分泌療法),抗HER2療法やCDK4/6阻害薬といった分子標的治療などによる全身治療が含まれます。
微小転移の考え方
乳がんは,骨,肺,肝臓,脳などに転移することがあります。乳がんがしこりとしてみつかったとき,またはみつかる前から,すでにからだのどこかにがん細胞が微小転移の形で存在すると考えられています。このような微小転移が分裂・増殖し,1cm前後の大きさになると,CT,MRIやPET-CT,骨シンチグラフィなどの画像診断で遠隔転移としてみつかるようになります。
微小転移はしばしばタンポポの種に例えられます。タンポポの種は,風に吹かれて遠くの土地まで飛んでいき,発芽に適した場所で芽を出しますが,芽を出して花を咲かせるまではみつけることはできません。それと同じように,乳がんと診断された時点ですでに微小転移が存在する場合があります。微小転移があるかどうかは,乳がんの性質(☞Q27参照)や発見された時期により異なります。微小転移を伴う確率は腫瘍の大きさや腋窩リンパ節転移の有無や程度,悪性度(グレード)など,さまざまな検査結果から推定します。「初期治療」では微小転移を根絶するために,個々の患者さんに最適な手術,薬物療法を選択し,放射線療法の適応を判断することが大切です。