FRQ3   センチネルリンパ節に転移を認めたが腋窩リンパ節郭清が省略された患者に,領域リンパ節への放射線療法が勧められるか?

ステートメント

●微小転移の場合,郭清が省略された腋窩あるいは領域リンパ節への放射線療法は基本的に勧められない。
●マクロ転移の場合,腋窩を含む領域リンパ節への放射線療法を考慮すべきであるが,至適な照射野については不明である。

背 景

 ACOSOG Z0011試験の結果が報告されて以来,センチネルリンパ節に転移を認めていた場合でも腋窩郭清を省略可能かが議論されている(☞外科CQ1参照)。郭清が省略された患者において腋窩を含む領域リンパ節照射の有用性を直接検討したランダム化比較試験(RCT)はないが,本FRQでは,郭清が省略されている場合を想定して,放射線療法の適応を検討した。

解 説

 乳癌手術後の放射線療法では,その適応や照射範囲の決定はリンパ節転移の個数に大きく依存してきた。リンパ節転移4個以上だけでなく,1~3個の場合にも領域リンパ節照射が推奨または考慮される患者群が存在する(☞放射線CQ45BQ45参照)。センチネルリンパ節生検では郭清よりも限られた数のリンパ節しか摘出されないが,センチネルリンパ節転移陽性患者の53%で非センチネルリンパ節転移が認められるという報告もあり1),センチネルリンパ節生検で得られたリンパ節転移個数のみに依存して放射線療法の方針を決定することは困難である。

 センチネルリンパ節に微小転移を有する症例のみを対象として腋窩郭清の是非を検討したRCTは,IBCSG 23-01試験2),AATRM 048/13/2000試験3)がある。これらの試験では約90%に乳房部分切除術および術後全乳房照射が行われている。腋窩は意図的には照射野に含めていないが,両試験ともに両群間で無病生存率,全生存率とも有意差を認めていない。このため微小転移の場合,適切な術後薬物療法が行われる状況下では,少なくとも温存乳房への照射時に領域リンパ節(特に腋窩)を意図的に照射範囲に含める必要はないと考えられる。また,乳房全切除術後症例については,前述の試験に含まれる該当症例が少ないため,乳房全切除術後放射線療法(PMRT)を行うかどうかはリンパ節転移の有無以外の条件をもとに総合的に判断することが適切と考えられる。

 一方,センチネルリンパ節にマクロ転移を有する場合の郭清省略は術後照射を前提としているが(☞外科CQ1参照),腋窩を含む領域リンパ照射を省略できるかについては明確でない。

 マクロ転移を有する場合に腋窩郭清の是非を検討したRCTは3つある(ACOSOG Z0011試験4)~6),EORTC 10981-22023 AMAROS試験7),OTOASOR試験8))。このうちAMAROS試験では,T1-2N0乳癌を対象にセンチネルリンパ節生検を行い,陽性ならば腋窩郭清または領域リンパ節照射(レベルⅠ-Ⅲの腋窩および鎖骨上領域)にランダム化し,領域リンパ節照射による腋窩制御率の非劣性を検討した。10年腋窩再発率は郭清群で0.93%,領域リンパ節照射群で1.82%であり,イベントが少なく検出力不足であったが,両群で大きな差がないと考えられた。OTOASOR試験も,AMAROS試験と同様にセンチネルリンパ節転移陽性症例を対象に郭清群と領域リンパ節照射群(レベルⅠ-Ⅲの腋窩および鎖骨上領域)を比較し,腋窩再発率,全生存率および無病生存率に有意差を認めなかった。これらの結果より,マクロ転移では郭清の代わりに領域リンパ節照射を行えば予後は変わりないようである。しかし,両試験の約4割の症例で,センチネルリンパ節転移は遊離腫瘍細胞(isolated tumor cell)または微小転移であり,このような対象には領域リンパ節照射は過剰であった可能性があるため,注意が必要である。

 ACOSOG Z0011試験は,cT1-2N0で乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検施行後,センチネルリンパ節が陽性だった患者を腋窩郭清または郭清省略群にランダム化したRCTである。この試験では全例に全乳房照射を行い,領域リンパ節照射を行うことは計画されていなかった。その結果,10年全生存率および10年領域リンパ節再発率に有意差を認めなかった4)。しかし,予定症例数1,900例に対して症例集積不良のため891例で閉じられたこと,19%が経過観察されていないことなどから,検出率が低いなどの問題も指摘されている。また,本試験の対象の予後が良いために,全乳房照射のみで良好な成績が得られた可能性もある(T1が70%,エストロゲン受容体陽性82%,センチネルリンパ節転移1個陽性71%のうち微小転移44%)。さらに,本試験に登録された891例中605例の放射線療法報告書を後ろ向きに検討した結果,11%が術後放射線療法を受けていなかった9)。照射記録が得られた228例のうち,19%でプロトコールに規定されていない領域リンパ節照射(多くは鎖骨上,一部で腋窩を含む)も行われていた。詳細な記録が得られた142例のうち約半数に,腋窩がある程度照射されるhigh tangents(照射野頭側縁が上腕骨頭尾側端から2 cm以内に位置する)が行われていた。これらの照射範囲の多様性が結果に及ぼす影響は不明であるが,少なくとも郭清群と郭清省略群で照射方法の割合に有意差は認めず,領域リンパ節照射の有無は領域リンパ節再発とは関連していなかった5)。また,郭清群の27%で非センチネルリンパ節転移が認められたにもかかわらず,郭清省略群の領域リンパ節再発がわずか1%未満であったことは10),薬物療法の効果や,温存乳房への照射(特にhigh tangents)が低位腋窩に及ぼす効果などが示唆されている。これらの問題が指摘されているため,ACOSOG Z0011試験の結果から,適切な照射範囲を結論付けることはできない。

 現在,複数のZ0011の確認試験のほかに,陽性リンパ節の選択的切除および全領域リンパ節照射(レベルⅠ-Ⅲの腋窩,鎖骨上,および内胸リンパ節)を行う方法と,腋窩郭清および限局的領域リンパ節照射(鎖骨上と内胸リンパ節)とを比較するTAXIS試験などが実施されており11),今後適切な照射方法についての情報が追加される可能性がある。

 リンパ浮腫は,郭清が省略された場合の領域リンパ節照射では,郭清後よりは頻度が少ない。AMAROS試験では,郭清群で有意にリンパ浮腫(患側上肢周囲長10%以上増加)が増加した(郭清群および領域リンパ節照射群でそれぞれ21%と16%,p=0.027)。OTOASOR試験においても,リンパ浮腫や神経障害を含む上肢有害事象が郭清群に多かった(郭清群および領域リンパ節照射群でそれぞれ15%と5%)。

 また,乳房全切除術の場合,放射線療法を行わない場合は腋窩リンパ節郭清を省略しないことが強く推奨されているが(☞外科CQ参照),センチネルリンパ節の術中迅速病理で偽陰性であったが再切除を行わない場合など,結果的に郭清が省略されることがある。このような場合の乳房全切除術後放射線療法(PMRT)については,前述の試験に含まれる該当症例が少ないため(AMAROSおよびOTOASOR試験でいずれも2割未満),PMRTを行うかどうかはリンパ節転移以外の条件をもとに総合的に判断することが適切と考えられる。2016年に米国臨床腫瘍学会・米国放射線腫瘍学会・外科腫瘍学会合同で公表されたガイドラインのアップデートでは,乳房全切除術例かつセンチネルリンパ節転移が1~3個で郭清が省略された場合に,追加の腋窩郭清による情報がなくてもPMRTの適応がはっきりしている場合には郭清省略のうえPMRTを行い,それ以外では郭清すべきとしている12)。また,2021年の米国臨床腫瘍学会とオンタリオ癌診療合同ガイドラインのアルゴリズムでは,センチネルリンパ節転移1~2個で郭清が省略された場合,全乳房/胸壁照射,または選択された症例での領域リンパ節照射の追加と記載されており,必ずしもすべての患者で定型的PMRTの推奨がされているわけではない13)

 手術療法の進歩により,乳房の温存が可能な症例にも乳房全切除術と乳房再建が行われることが増えている。患者が再建を希望する場合には,術前に十分に方針を議論し,腋窩郭清による有害事象と,再建乳房へのPMRTの潜在的なリスク(☞放射線BQ8参照)について説明のうえ,適切な術式選択に導くことが望ましい。現在オランダにて,乳房全切除術およびセンチネルリンパ節生検でリンパ節転移1~3個陽性かつ郭清省略例において,腋窩治療(郭清または照射)か,腋窩無治療かを比較するBOOG 2013-07試験が実施されており14),乳房全切除術例における腋窩治療の最適化についての新たな知見が期待される。

 以上より,マクロ転移の場合,郭清していない腋窩を含む領域リンパ節への放射線療法を考慮すべきであるが,至適な照射野については不明である。いずれの場合でも,センチネルリンパ節生検のみにて得られた転移リンパ節の個数は,郭清によって得られた個数とは異なる可能性があることを念頭におく必要がある。照射野設定については,high tangents,または領域リンパ節照射(レベルⅠ-Ⅲの腋窩および鎖骨上領域)の追加が考えられるが,臨床所見をもとに個別に検討することが望ましい。非センチネルリンパ節転移を有する可能性が高い場合や15)~17),前述の臨床試験の条件(T1-2N0,適切な術後薬物療法を行うこと)に該当しない場合に,領域リンパ節(腋窩および鎖骨上)への照射を考慮する。

検索キーワード・参考にした二次資料

 PubMedで,“Breast Neoplasms”,“Radiotherapy”,“Mastectomy”,“Axilla”,
“Lymphatic metastasis”,“Lymph Node Excision”,“Sentinel Lymph Node Biopsy”,
“Lymphtic metastasis”,“Micrometastasis”,“Macrometastasis”のキーワードおよび同義語を検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2016年3月~2021年3月とし,それぞれ122,43,7件がヒットした。これらから一次選択として合計12編,二次検索で4編を採用し,2018年版と合わせて合計17編の論文を採用した。

参考文献

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