総説4    転移・再発乳癌に対する外科手術

1)転移・再発乳癌に対する治療目的
 転移・再発乳癌の治療の基本は薬物療法による全身療法であり,その目的は生存期間の延長と症状緩和および生活の質(QOL)の改善である。そのため,転移再発巣に対する外科手術はその目的に応じて考慮される。①遠隔臓器転移を伴わない局所・領域リンパ節再発(温存乳房内再発,局所再発,領域リンパ節再発)に対しては可能な限り,治癒を念頭に置いて外科的治療を含む集学的治療を施行する。②遠隔臓器転移に対して生存期間の延長を目的とした外科的切除は勧められないが,オリゴ転移に対しての積極的局所療法の意義は検討中である。③Stage Ⅳ乳癌において生存期間の延長を目的とした原発巣切除は勧められないが,局所制御を目的とした切除は勧められる。

2)転移・再発乳癌に対する治療
(1)局所・領域リンパ節再発に対する治療(☞外科BQ4FRQ891011参照)
 乳房温存療法後の局所再発(温存乳房内再発)は術後10年で2~10%にみられる1)。術前薬物療法施行後症例ではその割合は高くなる2)。温存乳房内再発には真の再発と新たな乳癌の発生の2種類が理論的には存在するが両者の鑑別は困難であり,いずれの場合でも遠隔転移を伴わない場合は治癒を目指した外科的切除の適応である。対して炎症性乳癌型再発や胸壁浸潤を伴う場合は全身薬物療法が第一選択となる。

 初回術後放射線治療も行っている症例での温存乳房内再発に対する外科的治療は残存乳房切除術が標準である。温存乳房内再発に対する再乳房部分切除術は,局所再再発率が高く整容性の保持も困難な場合が多いとされるが3),初回術後に放射線を行っていない患者・高齢者・小さな再発腫瘍径などの条件を満たせば選択肢の一つとなり得る。また,この際の腋窩手術に関しては,腋窩に転移を認めず初回手術時に腋窩郭清が行われていない場合に限りセンチネルリンパ節生検を考慮する。

 乳房全切除術後の局所再発は10%未満の症例で認められ4),そのうち約1/3は診断時遠隔転移を伴っている5)。切除可能な局所再発は手術の適応であるが,切除のみの場合の局所再再発率は60~70%と高いため,術後に胸壁照射や全身薬物療法が必要である6)

 領域再発は同側腋窩・鎖骨上および内胸リンパ節を含む再発を指す。領域再発は腋窩リンパ節郭清後で3%未満7),センチネルリンパ節生検後では1%未満8)と報告されている。遠隔転移を伴わない腋窩リンパ節再発は手術の適応であり,手術不能例では予後不良とされている9)。対して,鎖骨上リンパ節再発は腋窩リンパ節再発よりもさらに進展した部位での再発であり,照射および全身薬物療法が基本である。外科手術の有用性は確立されておらず,術後合併症および後遺症の発生リスクが大きい。孤立性の領域再発で遠隔転移を伴わず,薬物療法後病変が残存している場合や放射線照射後の再発などで外科手術が考慮される。

(2)遠隔臓器転移に対する外科的切除(☞外科FRQ1213参照)
 乳癌の遠隔転移は多臓器にわたり,さらに微小転移が全身に散在している可能性が高く,薬物療法による全身療法が基本となる。外科的切除の適応となるのは,乳癌転移の病理学的な確定診断や効果的な全身療法選択のためにバイオマーカーの確認が必要な場合,あるいは転移による症状の緩和のために外科的切除が必要な場合に限られる。近年,数や大きさの限られた遠隔転移のみを認めるオリゴ転移に対する積極的な局所療法による予後改善の可能性が検討されはじめている。ただ,現時点で報告されている前向き試験の多くは放射線治療の効果を検討したものである。外科手術も含めた転移に対する局所療法の意義に関しては現在前向き臨床試験で検討されている(NRG-BR 002試験,NCT 02364557試験)。

(3)Stage Ⅳ乳癌に対する原発巣切除(☞外科CQ4参照)
 初診時から遠隔転移を有するStage Ⅳ乳癌において,原発巣の外科的切除により生存期間の延長が得られる可能性を検討するランダム化比較試験が5試験行われた。現在までに4つの結果が報告され,それらのメタアナリシスでは原発巣切除により生存期間は延長しないが,良好な局所制御が得られることが明らかとなった。今後,残り1つのJCOG 1017 PRIM-BC試験10)の結果(2022年追跡期間終了)を含めた検討により,最終的な結論が得られる。また,前述のオリゴ転移に対する局所療法(手術・放射線)の有用性を評価する試験においては,オリゴ転移を有するStage Ⅳ乳癌に対しては原発巣切除を行うこととされており,その意義が再度評価されている。

参考にした二次資料

UpToDate 2021,乳癌取扱い規約(第18版),乳腺腫瘍学(第3版)を参考にした。

参考文献

1)van Laar C, van der Sangen MJ, Poortmans PM, Nieuwenhuijzen GA, Roukema JA, Roumen RM, et al. Local recurrence following breast-conserving treatment in women aged 40 years or younger:trends in risk and the impact on prognosis in a population-based cohort of 1143 patients. Eur J Cancer. 2013;49(15):3093-101. [PMID:23800672]

2)Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG). Long-term outcomes for neoadjuvant versus adjuvant chemotherapy in early breast cancer:meta-analysis of individual patient data from ten randomised trials. Lancet Oncol. 2018;19(1):27-39. [PMID:29242041]

3)Gentilini O, Botteri E, Rotmensz N, Santillo B, Peradze N, Saihum RC, et al. When can a second conservative approach be considered for ipsilateral breast tumour recurrence? Ann Oncol. 2007;18(3):468-72. [PMID:17158776]

4)Jacobson JA, Danforth DN, Cowan KH, d’Angelo T, Steinberg SM, et al. Ten-year results of a comparison of conservation with mastectomy in the treatment of stage Ⅰ and Ⅱ breast cancer. N Engl J Med. 1995;332(14):907-11. [PMID:7877647]

5)Buchanan CL, Dorn PL, Fey J, Giron G, Naik A, Mendez J, et al. Locoregional recurrence after mastectomy:incidence and outcomes. J Am Coll Surg. 2006;203(4):469-74. [PMID:17000389]

6)Willner J, Kiricuta IC, Kölbl O. Locoregional recurrence of breast cancer following mastectomy:always a fatal event? Results of univariate and multivariate analysis. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1997;37(4):853-63. [PMID:9128962]

7)Krag DN, Anderson SJ, Julian TB, Brown AM, Harlow SP, Costantino JP, et al. Sentinel-lymph-node resection compared with conventional axillary-lymph-node dissection in clinically node-negative patients with breast cancer:overall survival findings from the NSABP B-32 randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2010;11(10):927-33. [PMID:20863759]

8)Giuliano AE, McCall L, Beitsch P, Whitworth PW, Blumencranz P, Leitch AM, et al. Locoregional recurrence after sentinel lymph node dissection with or without axillary dissection in patients with sentinel lymph node metastases:the American College of Surgeons Oncology Group Z0011 randomized trial. Ann Surg. 2010;252(3):426-32;discussion 432-3. [PMID:20739842]

9)Shen SC, Liao CH, Lo YF, Tsai HP, Kuo WL, Yu CC, et al. Favorable outcome of secondary axillary dissection in breast cancer patients with axillary nodal relapse. Ann Surg Oncol. 2012;19(4):1122-8. [PMID:21969085]

10)Shien T, Nakamura K, Shibata T, Kinoshita T, Aogi K, Fujisawa T, et al. A randomized controlled trial comparing primary tumour resection plus systemic therapy with systemic therapy alone in metastatic breast cancer(PRIM-BC):Japan Clinical Oncology Group Study JCOG1017. Jpn J Clin Oncol. 2012;42(10):970-3. [PMID:22833684]