FRQ9   乳房温存療法後の温存乳房内再発に対して再度の乳房部分切除術は勧められるか?

ステートメント

●照射後温存乳房内再発に対して再度の乳房部分切除術を勧めるだけの明らかな根拠はなく,原則として乳房全切除術が勧められるが,症例を限定すれば再度の乳房部分切除術を実施できる可能性がある。

背 景

 温存乳房内再発(IBTR)に対しては,一般的には乳房全切除術が多く行われているが,症例によっては再度の乳房部分切除も可能と考えられる。IBTRに対する再部分切除の可能性について文献的根拠をもとに検討した。

解 説

 IBTRの治療に関しては,IBTRの絶対数が少なく,ランダム化比較試験が難しい。そのため抽出された論文は34の症例集積研究をまとめたメタアナリシス1編1)のほかはすべて症例集積研究となり,エビデンスの強さは「弱」と判断した。

 IBTR後の全生存率ならびに乳癌特異的生存率について,再部分切除症例とサルベージ乳房全切除症例をプロペンシティスコアマッチングで患者背景を揃えて比較検討した文献は4編あった。Baekらは,1990~2013年の335例を後ろ向きに解析し,乳房全切除例に対する再部分切除例のハザード比(HR)は全生存率(OS)が1.20(0.55-2.63),乳癌特異的生存率(BCSS)は1.56(0.69-3.57)であり,有意差はなかったと報告した2)。また,Wuらも,SEERのデータベースを用いて1998~2013年にIBTRに対して再部分切除を行った475例とサルベージ乳房全切除を行った1,600例を抽出し,OSとBCSSを検討した結果,乳房全切除に対する再部分切除のHRはOSが1.05(0.69-1.60),BCSSが0.77(0.44-1.37)で有意差はなかったとした3)。Yoshidaらは,わが国の8つの施設の271例を後ろ向き検討したところ,再部分切除できた症例は再発巣の腫瘍径が小さい,再発巣の数が少ない,HER2陰性が多いといった特徴がみられたが,背景因子を揃えた102例(各群51例)で比較すると,局所再発後の予後には差がなかったとした4)。一方,Suら5)はWuら3)と同じくSEERのデータベースを用いて同様の検討を行ったが,OSのHRが1.505(1.233-1.838),BCSSのHRは1.787(1.25-2.555)と,サルベージ乳房全切除に比較し,再部分切除症例で有意に予後不良であったと報告しており,文献によって乖離がみられる。この理由として,Suらが用いたデータは1973~2013年の症例であり,Wuらに比較して古いことから,年代が新しくなるほど両者の予後に差がみられなくなるものと推定される。

 IBTRに対する外科手術後の局所再再発について,再部分切除とサルベージ乳房全切除を比較した論文では,再部分切除後の局所再再発は17%,サルベージ乳房全切除後では13.5%と報告され6),多変量解析では,再部分切除術を実施したこと自体が局所再再発の有意なリスク因子であった。

 IBTRに対して再部分切除術を施行した後に局所再再発を起こしやすい患者群を同定する試みもいくつか行われている。Alpertらは局所再再発を低下させる条件として,ER陽性,マンモグラフィのみで発見されたIBTR,再発時の腫瘍径が小さいこと,を挙げている7)。Gentiliniらは再発腫瘍が2 cm以下,初再発までのdisease free interval(DFI)が48カ月を超えること,を挙げており8),Ishitobiらは2回の検討を行って,再発腫瘍が2 cm以下,ER陽性かつHER2陰性,初回手術時の切除マージンが陰性,IBTR時の年齢が55歳以上,DFIが24カ月以上,を条件として提示した9)10)。以上から,複数の論文で提示されている,①再発時の腫瘍径が小さいこと,②ER陽性HER2陰性であること,③DFIが長いこと,の3条件を満たす症例は再部分切除術の候補となる可能性がある。

 再部分切除術後に再度の放射線照射を行うことの有用性も検討されている1)。再照射により温存乳房内の再再発のみならず,OSも改善できる一方で,再照射に伴う放射線障害も最大21%の症例で発生し,再照射の方法も通常の外照射のほか,小線源治療,術中照射などさまざま報告されていることから,再照射に関する有用性ならびに方法に関してもコンセンサスが得られているとは言い難い。

 IBTRに対する再部分切除術は,患者の希望によって行われることが多い6)。IBTRに対する治療後のQOLをEORTC QLQ-C30およびEORTC-BR23を用いて検討した報告では,サルベージ乳房全切除術を受けた症例に比較して,再部分切除術を受けた症例のほうが有意に良好なスコアを示しており11),安全に再部分切除ができれば,患者のQOL向上につながるものと考えられる。

 以上より,IBTRをきたした症例において,サルベージ乳房全切除術に代わる術式として再度の部分切除術を勧めるだけの十分な根拠はまだないが,十分なインフォームド・コンセントを行い,症例を限定すれば,再度部分切除術を実施できる可能性はある。

検索キーワード・参考にした二次資料

 PubMedにて“Breast Neoplasms”,“Ipsilateral breast”,“Recurrence”,“Repeat lumpectomy”,“Breast conserving”のキーワードを用いて検索した。

参考文献

1)Walstra CJEF, Schipper RJ, Poodt IGM, van Riet YE, Voogd AC, van der Sangen MJC, et al. Repeat breast-conserving therapy for ipsilateral breast cancer recurrence:a systematic review. Eur J Surg Oncol. 2019;45(8):1317-27. [PMID:30795956]

2)Baek SY, Kim J, Chung IY, Ko BS, Kim HJ, Lee JW, et al. Long-term survival outcomes of repeat lumpectomy for ipsilateral breast tumor recurrence:a propensity score-matched analysis. Breast Cancer Res Treat. 2021;185(1):155-64. [PMID:32935236]

3)Wu Y, Shi X, Li J, Wu G. Prognosis of surgical treatment after ipsilateral breast tumor recurrence. J Surg Res. 2021;258:23-37. [PMID:32980773]

4)Yoshida A, Takahashi O, Okumura Y, Arima N, Nakatsukasa K, Tanabe M, et al;Collaborative study group of scientific research of Japanese Breast Cancer Society. Prognosis after mastectomy versus repeat lumpectomy in patients with ipsilateral breast cancer recurrence:a propensity score analysis. Eur J Surg Oncol. 2016;42(4):474-80. [PMID:26853760]

5)Su Y, Guo R, Xue J, Chi Y, Chi W, Wang J, et al. Increased mortality with repeat lumpectomy alone after ipsilateral breast tumor recurrence. oncologist. 2019;24(9):e818-27. [PMID:30842240]

6)Sellam Y, Shahadi ID, Gelernter I, Zippel D, Sklair-Levy M, Symon Z, et al. Local recurrence of breast cancer:salvage lumpectomy as an option for local treatment. Breast J. 2019;25(4):619-24. [PMID:31087430]

7)Alpert TE, Kuerer HM, Arthur DW, Lannin DR, Haffty BG. Ipsilateral breast tumor recurrence after breast conservation therapy:outcomes of salvage mastectomy vs. salvage breast-conserving surgery and prognostic factors for salvage breast preservation. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2005;63(3):845-51. [PMID:16199315]

8)Gentilini O, Botteri E, Veronesi P, Sangalli C, Del Castillo A, Ballardini B, et al. Repeating conservative surgery after ipsilateral breast tumor reappearance:criteria for selecting the best candidates. Ann Surg Oncol. 2012;19(12):3771-6. [PMID:22618719]

9)Ishitobi M, Fukui R, Hashimoto Y, Kittaka N, Nakayama T, Tamaki Y. Safety for repeat lumpectomy without radiotherapy for ipsilateral breast tumor recurrence. Anticancer Res. 2017;37(9):5293-9. [PMID:28870967]

10)Ishitobi M, Komoike Y, Nakahara S, Motomura K, Koyama H, Inaji H. Repeat lumpectomy for ipsilateral breast tumor recurrence after breast-conserving treatment. Oncology. 2011;81(5-6):381-6. [PMID:22269927]

11)Jendrian S, Steffens K, Schmalfeldt B, Laakmann E, Bergelt C, Witzel I. Quality of life in patients with recurrent breast cancer after second breast-conserving therapy in comparison with mastectomy:the German experience. Breast Cancer Res Treat. 2017;163(3):517-26. [PMID:28324266]