BQ2 タモキシフェンは子宮内膜癌(子宮体癌)発症のリスクを増加させるか?

ステートメント

●タモキシフェン内服により,主に閉経後において子宮内膜癌(子宮体癌)の発症リスクが増加するが,死亡リスクの有意な増加は認めない。不正性器出血などの症状がある場合は,婦人科での精査が勧められる。

背 景

 ホルモン受容体陽性乳癌の術後内分泌療法としてタモキシフェンの有用性が確立している(☞薬物BQ1CQ23参照)。タモキシフェンの有害事象の一つとして,子宮内膜癌の発症リスク増加が報告されているので概説する。

解 説

 NSABP P-1試験(n=13,388)はタモキシフェンによる乳癌化学予防の効果を検証したランダム化比較試験である。タモキシフェン5年内服によって子宮内膜癌罹患の相対リスクは3.28(95%CI 1.87-6.03)と上昇した1)。7年の追跡期間で子宮内膜癌は,試験全体で70例(プラセボ群17例,タモキシフェン群53例)発症したが,うち67例(プラセボ群15例,タモキシフェン群52例)はStage Ⅰであった。年齢別では49歳以下では子宮内膜癌のリスク増加は認めず,50歳以上では相対リスクは5.33(95%CI 2.47-13.17)とリスク増加を認めた。IBIS-I試験(n=7,145,タモキシフェン5年内服)とRoyal Marsden試験(n=2,494,タモキシフェン7年内服)の3試験のメタアナリシスでは,タモキシフェンによる子宮内膜癌の相対リスクは2.13(95%CI 1.36-3.32,I2=0.0%)と有意に増加することが示されている2)

 SEERデータベースで1980~2000年に乳癌と診断され,初期治療でタモキシフェンを投与された39,451人の解析から,子宮内膜癌のO/E(観測値/期待値)は2.17(95%CI 1.95-2.41)であった3)。術後タモキシフェンの有効性を検証した20試験を含むEBCTCGのメタアナリシスの解析結果4)から,タモキシフェン5年内服で子宮内膜癌の罹患リスクは2.40倍に増加することが報告された。子宮内膜癌のリスクには年齢との相関があり,54歳以下では罹患リスク増加はないが,55歳以上では罹患リスクは2.96倍に増加し,15年の追跡期間で子宮内膜癌の発症割合は,タモキシフェン群で3.8%,プラセボ群で1.1%と2.6%上昇していた。子宮内膜癌による死亡リスクの有意な増加は認めていない。ほかには,タモキシフェンによる子宮内膜癌発症リスクと,タモキシフェン治療期間,肥満,乳癌発症前のホルモン補充療法との関連が報告されている5)

 タモキシフェンは5年間投与と比べ10年間投与で再発をより低下させることが報告されている(薬物CQ4参照)。メタアナリシスの結果から,タモキシフェンの10年間投与により,子宮内膜癌のリスクは5年間投与と比べ1.5%から3.2%へ増加〔リスク比(RR)2.29,95%CI 1.60-3.28,p<0.001〕した6)しかしながら,延長投与における子宮体癌のリスク上昇と年齢との関係性については報告されていない。

 上記を踏まえ,特に閉経後乳癌患者に対しては,タモキシフェン内服による子宮内膜癌(子宮体癌)のリスクを説明したうえで,不正出血などの症状があればすぐに連絡するように説明しておくことが重要である。タモキシフェン内服前にすでに良性ポリープがあるような「子宮内膜癌高リスク患者」でない限り,定期的な子宮体がん検診が子宮内膜癌の早期発見に有効であるというエビデンスがないことに加えて,子宮に対してより侵襲的な検査を行うことが多くなるなどの不利益を考慮すると,無症状の場合については定期的な子宮体がん検診は推奨されない。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで,“Endometrial Neoplasms”,“breast neoplasms”,“endometrial”,“Endometrium”,“tamoxifen/adverse effects”のキーワードで検索した。検索期間は2021年3月までとし,1,377件がヒットした。

参考文献

1)Fisher B, Costantino JP, Wickerham DL, Cecchini RS, Cronin WM, Robidoux A, et al. Tamoxifen for the prevention of breast cancer:current status of the National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project P-1 study. J Natl Cancer Inst. 2005;97(22):1652-62. [PMID:16288118]

2)Nelson HD, Fu R, Griffin JC, Nygren P, Smith ME, Humphrey L. Systematic review:comparative effectiveness of medications to reduce risk for primary breast cancer. Ann Intern Med. 2009;151(10):703-15, W-226-35. [PMID:19920271]

3)Curtis RE, Freedman DM, Sherman ME, Fraumeni JF Jr. Risk of malignant mixed mullerian tumors after tamoxifen therapy for breast cancer. J Natl Cancer Inst. 2004;96(1):70-4. [PMID:14709741]

4)Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG), Davies C, Godwin J, Gray R, Clarke M, Cutter D, et al. Relevance of breast cancer hormone receptors and other factors to the efficacy of adjuvant tamoxifen:patient-level meta-analysis of randomised trials. Lancet. 2011;378(9793):771-84. [PMID:21802721]

5)Bernstein L, Deapen D, Cerhan JR, Schwartz SM, Liff J, McGann-Maloney E, et al. Tamoxifen therapy for breast cancer and endometrial cancer risk. J Natl Cancer Inst. 1999;91(19):1654-62. [PMID:10511593]

6)Fleming CA, Heneghan HM, O’Brien D, McCartan DP, McDermott EW, Prichard RS. Meta-analysis of the cumulative risk of endometrial malignancy and systematic review of endometrial surveillance in extended tamoxifen therapy. Br J Surg. 2018;105(9):1098-106. [PMID:29974455]