CQ10  術前化学療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られなかったHER2陰性早期乳癌に対する術後化学療法として,カペシタビンは勧められるか?

推奨

●カペシタビン6~8サイクルの投与を強く推奨する。

推奨の強さ:1,エビデンスの強さ:中,合意率:77%(36/47)


推奨におけるポイント
■乳房およびリンパ節での浸潤癌の消失,または乳管内成分のみ遺残する場合をpCRと定義している。
■層別解析においては,トリプルネガティブ乳癌でDFS,OSの改善が認められた。

背 景・目 的

 HER2陰性乳癌において,増殖活性の低い一部のタイプを除いては,術前化学療法によって病理学的完全奏効(pCR)が得られなかった(non pCR)場合はpCRが得られた場合に比べ予後不良であることが示されている。本CQではnon pCR症例の予後を改善するため,術前化学療法でnon pCRかどうかを指標に術後療法を検討する治療,いわゆるresidual disease-guided approach(残存病変に基づく治療)としてのカペシタビン(2022年4月時点で,早期乳癌において保険適用外)の意義を検討した。

解 説

 HER2陰性乳癌において,pCRを指標として術後治療を追加または変更する治療戦略の意義を検証した試験として,1件のランダム化比較試験(RCT)(CREATE-X試験)を認めた。

 日本と韓国の共同で行われたCREATE-X試験では,Stage Ⅰ-ⅢBのHER2陰性乳癌に対しアンスラサイクリンもしくはタキサンを含む標準的な術前化学療法を行った後に手術を施行し,pCRが得られていない(non pCR)910例を,術後治療として標準的な治療のみを行う群(対照群)と標準的な治療にカペシタビン6~8サイクルを併用する群に1対1にランダム化割り付けをした1)。pCRの定義は乳房およびリンパ節での浸潤癌の消失とされた。なお,乳管内成分のみ遺残する場合もpCRとされた。計画された中間解析でカペシタビン併用群の有効性が認められ,追跡期間の中央値が3.6年の時点で結果が公表された。カペシタビンのサイクル数は,まず6サイクルで試験が開始され,事前に規定された安全性の確認が行われたうえで8サイクルに変更された。最終的にはカペシタビン群の159例が6サイクル,283例が8サイクルを予定して治療が行われた。なお,相対的用量強度は6サイクルで87.9%,8サイクルで78.7%であった。

 無病生存期間(DFS)は,本試験の主要評価項目であるが,ハザード比(HR)0.70(95%CI 0.53-0.92)と統計学的に有意に改善した。その絶対値は,5年のDFSイベント割合が対照群の32.4%から25.9%へ低下した。全生存期間(OS)はHR 0.59(95%CI 0.39-0.90)と統計学的に有意に改善が認められた。その絶対値は5年の死亡割合が対照群の16.4%から10.8%へ低下した。

 事前に規定された層別解析では,ホルモン受容体陰性群において,DFSはHR 0.58(95%CI 0.39-0.87),OSはHR 0.52(95%CI 0.30-0.90)であり,ホルモン受容体陽性群ではDFSはHR 0.81(95%CI 0.55-1.17),OSはHR 0.73(95%CI 0.38-1.40)と,ホルモン受容体陰性群でより効果が大きい傾向を示した。

 害として有害事象について,手足症候群はカペシタビン群で73.4%,下痢は21.9%,Grade 3以上の好中球減少は6.3%で認められた。ただし,カペシタビン群で治療関連死亡や不可逆性の有害事象は認められなかった。

 益と害のバランスは,カペシタビンにより手足症候群,下痢,Grade 3以上の好中球減少の増加を認めるが,OSおよびDFSの延長の益を上回るほどではないと考えられる。よって,益と害のバランスは益が上回ると判断した。エビデンスの強さは,CREATE-X試験は大規模な第Ⅲ相RCTであり,DFSの改善は臨床的な意義が大きいと判断されるが,中間解析の結果でありOSはイベント数が少ないこと,非盲検試験であることと,本CQに該当するRCTが1つであることから,「中」とした。患者希望は,予後不良が予測されるなかでの予後改善の可能性があることから,手足症候群や下痢の害はあるものの,多くは希望するほうに一貫すると考えた。

 推奨決定会議の投票の結果は,「行うことを強く推奨する 36/47,合意率 77%」,「行うことを弱く推奨する 11/47」であり,推奨は,術前化学療法で病理学的完全奏効(pCR)を得られなかったHER2陰性早期乳癌に対する術後化学療法として,「カペシタビン6~8サイクルの投与を強く推奨する」とした。

検索キーワード・参考にした二次資料

 PubMed,医中誌,Cochrane Libraryで,#1(breast neoplasms)or(breast cancer),#2((adjuvant or postoperative or preoperative or neoadjuvant)and(chemotherapy or(drug therapy))),#3(capecitabine or“Ro 09-1978”or“Ro-09-1978”or“Ro09-1978”or Xeloda)をキーワードとし,検索を行った。検索期間は2021年6月4日までとした。

 その結果,426編の論文が抽出された。一次・二次スクリーニングで残った本CQの主旨に合致する1編の論文(1つのRCT)を用いて定性的および定量的システマティック・レビューを行った。

参考文献

1)Masuda N, Lee SJ, Ohtani S, Im YH, Lee ES, Yokota I, et al. Adjuvant capecitabine for breast cancer after preoperative chemotherapy. N Engl J Med. 2017;376(22):2147-59. [PMID:28564564]