総説 Ⅱ.非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ;DCIS)
1.治療の流れ
2.定 義
- 非浸潤性乳管癌の臨床病期(Stage)は,「Tis」「Stage 0」であり,Tis N0 M0と定義される。
- 「乳管内癌」とも呼ばれる。
- 乳癌細胞が乳管内にとどまっているもの。
- 関連課題:病理診断BQ7「非浸潤性乳管癌(DCIS)で核グレードや面疱壊死の有無を評価することは勧められるか?」
- 関連課題:病理診断FRQ2「非浸潤性乳管癌におけるホルモン受容体やHER2の検索は勧められるか?」
【豆知識】非浸潤性小葉癌
非浸潤性小葉癌(lobular carcinoma in situ;LCIS)は,乳癌取扱い規約(第18版)では「非浸潤癌」に分類されるが,DCISとは異なり,浸潤癌の前駆病変というよりも,乳癌発生の高リスク病変と考えられている。
3.疫 学
- 日本乳癌学会の統計(2018年乳癌登録集計確定版)によると,Stage 0乳癌の割合は全乳癌の14.2%であった。
4.予 後
- 理論的には遠隔転移をきたすことはない。
- 術後10年の乳癌死亡率(breast cancer-specific mortality)は0.8~0.9%である1)。
5.治療方針
1)局所療法
- 手術±放射線療法が治療の主体となる。
- 関連課題:外科BQ2「術前診断が非浸潤性乳管癌である場合,センチネルリンパ節生検は勧められるか?」
- 関連課題:外科FRQ1「非浸潤性乳管癌に対する非切除は勧められるか?」
- 関連課題:外科FRQ2「浸潤癌/非浸潤癌に対する乳房部分切除術において,断端陽性と診断された場合に外科的切除は勧められるか?」
- 関連課題:放射線BQ2「非浸潤性乳管癌に対して乳房部分切除術後に放射線療法は勧められるか?
2)薬物療法
- ホルモン受容体陽性乳癌の場合,「乳房内再発」の予防目的として内分泌療法が治療選択肢となるが,生命にかかわる「遠隔転移」の予防目的ではないため,「益」と「害」のバランスを考慮して投与の是非を決定する。
3)その他の関連課題
【豆知識】病期(Stage)と術式について
日本乳癌学会の統計(2018年乳癌登録集計確定版)によると,乳房部分切除術の割合は,Stage 0で42.5%,StageⅠで58.5%,StageⅡAで33.5%,StageⅡBで22.1%,StageⅢAで15.0%であり,Stage 0での乳房部分切除術の割合は,StageⅠよりも低かった。
参考文献
1)Narod SA, Iqbal J, Giannakeas V, Sopik V, Sun P. Breast cancer mortality after a diagnosis of ductal carcinoma in situ. JAMA Oncol. 2015;1(7):888-96.[PMID:26291673]