BQ8    乳癌骨転移に対して骨修飾薬(デノスマブ,ゾレドロン酸)は推奨されるか?

ステートメント

●骨修飾薬(BMA)は,骨転移に伴う随伴症状である骨関連事象(SRE)のリスクを低下させることが示されているため,骨転移を伴う患者に対して,癌薬物療法に骨修飾薬を併用することが標準的である。
●デノスマブはゾレドロン酸よりも有意にSREリスクを低下させることが示されている。

背 景

 骨転移は転移乳癌患者の50%以上で起こり1),骨修飾薬(bone modifying agents;BMA)が使用される以前には病的骨折,脊髄圧迫症状,骨への放射線療法や手術といった骨関連事象(skeletal-related events;SRE)や疼痛,高カルシウム血症などが起こる2)とされていた。SREは患者のQOLを著しく損なう可能性がある。デノスマブ,ゾレドロン酸などは破骨細胞の機能を抑え,骨吸収を抑制し,乳癌骨転移患者のSREを予防する。

解 説

1)デノスマブ
 抗RANKLヒト化モノクローナル抗体であるデノスマブと,ゾレドロン酸の効果を検討した3つ(乳癌,前立腺癌,それ以外の固形癌と多発性骨髄腫)のランダム化比較試験(総症例数5,723人)のメタアナリシスでは,デノスマブはSRE(高カルシウム血症を含まない)の発症リスクを有意に14%低下させたが,無増悪生存や全生存には差がなかった3)

 乳癌患者でのデノスマブとビスホスホネートのランダム化比較試験のメタアナリシス(総症例数2,330人)でもSRE(高カルシウム血症を含む)発症率はデノスマブで有意に少なかった〔オッズ比(OR)0.61,95%CI 0.51-0.72〕4)

 乳癌患者を対象としてデノスマブとゾレドロン酸を比較したランダム化比較試験では,デノスマブは新規SRE(高カルシウム血症を含まない)発症までの期間を有意に延長させ〔ハザード比(HR)0.82,95%CI 0.71-0.95〕,ゾレドロン酸の新規SRE発症までの期間中央値26.4カ月に対してデノスマブでは未到達であった5)。また,デノスマブは二次以降のSRE発症リスクも23%抑制した。無増悪生存や全生存は同等であった。有害事象に関して,デノスマブではゾレドロン酸に比べ急性期反応(発熱,骨痛等)や腎機能障害が少ないが,歯痛や低カルシウム血症が多いことが示された。顎骨壊死(ONJ)の発生頻度は両群間で有意差はなかった。

2)ゾレドロン酸
 骨転移をもつ乳癌患者を対象として行われたビスホスホネートvsプラセボ,あるいはビスホスホネートありvsなしの9つの臨床試験のメタアナリシスによると,ビスホスホネートはSRE(高カルシウム血症を含まない)リスクを有意に15%減少させ〔リスク比(RR)0.85,95%CI 0.77-0.94,p=0.001〕,SRE発症までの期間延長,疼痛の軽減,QOL向上で優れていたが,生存への寄与は認めなかった6)。最も大きくSREリスクを減少させた薬剤はゾレドロン酸(RR 0.59,95%CI 0.42-0.82)であった。

 わが国で行われた乳癌骨転移に対するゾレドロン酸vsプラセボのランダム化比較試験でも,ゾレドロン酸により1年間のSRE(高カルシウム血症を含まない)の発症リスクを39%低下させ,新規SRE発症までの期間延長,疼痛軽減が認められた7)

 また,ゾレドロン酸により疼痛が軽減し,有意にQOLが向上したとの報告がある8)

 ゾレドロン酸の至適投与期間に関する報告はない。過去の臨床試験が1年または2年間を治療期間としているため,2年間の投与期間での安全性には問題ないと考えられるが,それ以上の長期投与の安全性に関しては不明である。

 ゾレドロン酸は通常3~4週間隔の投与を行うが,12週間隔投与の非劣性を検証した3つのランダム化比較試験の結果が報告されている。ZOOM試験は骨転移に対して12~15カ月のゾレドロン酸治療を継続している425人を対象として,ゾレドロン酸の12週間隔と4週間隔にランダム化割り付けして治療し,1年間追跡した9)。追跡期間中央値337日での主要評価項目であるskeletal morbidity rate(高カルシウム血症を含むSRE数/人/年)はそれぞれ0.26,0.22で12週間隔投与の非劣性が示され,総SRE発症率,疼痛,鎮痛薬使用や顎骨壊死を含む毒性に関しても両群で差がなかった。CALGB 70604(Alliance)試験は骨転移を有する乳癌,前立腺癌,多発性骨髄腫患者1,822人(うち乳癌患者855人,全体の47%)にゾレドロン酸を12週または4週間隔で開始し,2年間追跡した10)。追跡期間中央値1.2年での主要評価項目である2年間のSRE(高カルシウム血症を含まない)発症患者は全患者のそれぞれの群で28.6%,29.5%であり,12週間隔投与の非劣性が示され,乳癌患者でも両群間に差がなかった。疼痛,PS,ONJを含む有害事象,skeletal morbidity rateに両群間の有意差はなかった。OPTIMIZE-2試験では,乳癌骨転移に対して10~15カ月間に9回以上のゾレドロン酸またはパミドロン酸の投与を受けた416人の患者を対象に,1年間のゾレドロン酸投与の12週または4週間隔を比較した11)。その結果,1年間のSRE(高カルシウム血症を含まない)発症率は,12週間隔では23.2%,4週間隔では22.0%であり,12週間隔の非劣性が示された。両群の毒性は同等だった。以上の結果から,全身状態の良好な骨転移患者では患者との相談によってゾレドロン酸の12週間隔投与を検討できるが,12週間隔投与の長期的な有効性や安全性についての根拠に乏しいことに留意すべきである。

3)有害事象
(1)顎骨壊死(osteonecrosis of the jaw;ONJ)
 ONJの頻度はゾレドロン酸,デノスマブともに1~10%とされており,ビスホスホネート製剤の種類,総投与量,投与期間,歯科病歴に依存している12)。いったん発症すると長期化し,患者のQOLや癌治療に影響を及ぼす可能性があり,予防が最も重要である。BMAはONJの重要な原因の一つである13)。わが国でも関連学会で組織されたONJ検討委員会によるポジションペーパーが公表されており14),一部の学会のホームページ上で日本語版を閲覧することが可能である。

 このポジションペーパーでは,BMAによるONJのリスク因子として口腔衛生状態不良,歯周病,不適合義歯,抜歯やインプラントなどの侵襲的歯科治療などが挙げられている。適切な口腔衛生管理を行うことは,BMA治療時のONJ発症リスクを低下させるとの報告があり15),すべての患者でBMA投与開始前の歯科検診と予防的歯科処置を受けることが推奨されている。抜歯のような顎骨への侵襲的歯科処置はBMA投与開始2週前に終えておくことが望ましいとされている。

 顎骨壊死発症後はその治療が完了するまで骨吸収抑制薬の休薬が望まれるが,ポジションペーパーには癌患者では原則として休薬しないと記載されている。日常診療では顎骨壊死の状態,骨転移の状況,薬物療法の効果,患者の希望などを勘案して方針を決定する。

(2)腎機能障害
 ゾレドロン酸の腎機能障害の発生頻度は,個々の腎機能,投与期間に左右されるが,全Gradeにおいて4.9~44.5%と報告されている。しかし,多くがGrade 1~2の軽症例であり,可逆的かつ一過性である。

 デノスマブによる腎機能障害の発症は全Gradeで3.3~14.7%,Grade 3以上の重篤なものは0.4%と少ない。

(3)低カルシウム血症
 ゾレドロン酸による低カルシウム血症は全Gradeで3.3~9.0%,デノスマブは1.7~10.8%であり,デノスマブで発生頻度が高い。このため,デノスマブについてはビタミンDおよび経口カルシウム製剤,もしくはこれらの合剤(デノタスチュアブル配合錠®)の内服が必要である。なお,低カルシウム血症は,投与開始早期(10日以内)に発現することが多い。

検索キーワード・参考にした二次資料

 PubMedで,“Breast Neoplasms/drug therapy”,“Breast Neoplasms/therapy”,“Bone Neoplasms/secondary”,“Bisphosphonates”,“Denosumab”のキーワードを用いて検索し,さらに検索結果は症例報告を除いた治療に関する文献に限定した。加えて重要文献をハンドサーチで検索した。

参考文献

1)Domchek SM, Younger J, Finkelstein DM, Seiden MV. Predictors of skeletal complications in patients with metastatic breast carcinoma. Cancer. 2000;89(2):363-8. [PMID:10918167]

2)Coleman RE, McCloskey EV. Bisphosphonates in oncology. Bone. 2011;49(1):71-6. [PMID:21320652]

3)Chen C, Li R, Yang T, Ma L, Zhou S, Li M, et al. Denosumab versus zoledronic acid in the prevention of skeletal-related events in vulnerable cancer patients:a meta-analysis of randomized, controlled trials. Clin Ther. 2020;42(8):1494-507.e1. [PMID:32718784]

4)Wang X, Yang KH, Wanyan P, Tian JH. Comparison of the efficacy and safety of denosumab versus bisphosphonates in breast cancer and bone metastases treatment:a meta-analysis of randomized controlled trials. Oncol Lett. 2014;7(6):1997-2002. [PMID:24932278]

5)Stopeck AT, Lipton A, Body JJ, Steger GG, Tonkin K, de Boer RH, et al. Denosumab compared with zoledronic acid for the treatment of bone metastases in patients with advanced breast cancer:a randomized, double-blind study. J Clin Oncol. 2010;28(35):5132-9. [PMID:21060033]

6)Wong MH, Stockler MR, Pavlakis N. Bisphosphonates and other bone agents for breast cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2012;(2):CD003474. [PMID:22336790]

7)Kohno N, Aogi K, Minami H, Nakamura S, Asaga T, Iino Y, et al. Zoledronic acid significantly reduces skeletal complications compared with placebo in Japanese women with bone metastases from breast cancer:a randomized, placebo-controlled trial. J Clin Oncol. 2005;23(15):3314-21. [PMID:15738536]

8)Wardley A, Davidson N, Barrett-Lee P, Hong A, Mansi J, Dodwell D, et al. Zoledronic acid significantly improves pain scores and quality of life in breast cancer patients with bone metastases:a randomised, crossover study of community vs hospital bisphosphonate administration. Br J Cancer. 2005;92(10):1869-76. [PMID:15870721]

9)Amadori D, Aglietta M, Alessi B, Gianni L, Ibrahim T, Farina G, et al. Efficacy and safety of 12-weekly versus 4-weekly zoledronic acid for prolonged treatment of patients with bone metastases from breast cancer(ZOOM):a phase 3, open-label, randomised, non-inferiority trial. Lancet Oncol. 2013;14(7):663-70. [PMID:23684411]

10)Himelstein AL, Foster JC, Khatcheressian JL, Roberts JD, Seisler DK, Novotny PJ, et al. Effect of longer-interval vs standard dosing of zoledronic acid on skeletal events in patients with bone metastases:a randomized clinical trial. JAMA. 2017;317(1):48-58. [PMID:28030702]

11)Hortobagyi GN, Van Poznak C, Harker WG, Gradishar WJ, Chew H, Dakhil SR, et al. Continued treatment effect of zoledronic acid dosing every 12 vs 4 weeks in women with breast cancer metastatic to bone:the optimize-2 randomized clinical trial. JAMA Oncol. 2017;3(7):906-12. [PMID:28125763]

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13)Shapiro CL. Bisphosphonate-related osteonecrosis of jaw in the adjuvant breast cancer setting:risks and perspective. J Clin Oncol. 2013;31(21):2648-50. [PMID:23796994]

14)Japanese Allied Committee on Osteonecrosis of the Jaw, Yoneda T, Hagino H, Sugimoto T, Ohta H, Takahashi S, et al. Antiresorptive agent-related osteonecrosis of the jaw:position paper 2017 of the Japanese Allied Committee on Osteonecrosis of the Jaw. J Bone Miner Metab. 2017;35(1):6-19. [PMID:28035494]

15)Ripamonti CI, Maniezzo M, Campa T, Fagnoni E, Brunelli C, Saibene G, et al. Decreased occurrence of osteonecrosis of the jaw after implementation of dental preventive measures in solid tumour patients with bone metastases treated with bisphosphonates. The experience of the National Cancer Institute of Milan. Ann Oncol. 2009;20(1):137-45. [PMID:18647964]