患者さんのための乳癌診療ガイドライン 一般社団法人日本乳癌学会

Q3. 更年期障害の治療に用いられるホルモン補充療法や,避妊の目的で用いられる経口避妊薬(ピル)は乳がん発症リスクを高めますか。

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【A】ホルモン補充療法の中でも、エストロゲン(卵胞(らんぽう)ホルモン)とプロゲスチン(プロゲステロンなどの黄体(おうたい)ホルモン)を併用する方法では、乳がん発症リスクは、わずかながら高くなることが確実です。エストロゲンだけを補充する方法では、乳がん発症リスクが低下することが示されています。一方、経口避妊薬の使用においても、乳がん発症リスクはわずかながら高くなる可能性があります。
 ただし、エストロゲンとプロゲステロンを使用するホルモン補充療法や経口避妊薬が乳がん発症リスクを高める程度はわずかなので、使用することによる利益とのバランスを考え併せて使用するかどうかを決める必要があります。

解説

女性ホルモンと乳がんの関係

  女性が思春期になると、乳房がふくらみ始めたり月経が始まったりしますが、これは卵巣が「エストロゲン」や「プロゲスチン」など女性ホルモンを活発につくるようになり、乳腺や子宮に作用するためと考えられています。
  一方、乳がんは悪性の乳腺細胞が異常に増殖したものですから、女性ホルモンが高い濃度で長時間作用すると、乳がん発症リスクが高くなると考えられています。例えば、初経年齢が早かったり、閉経年齢が遅かったりする人は、乳がん発症リスクが高くなるといわれています。

ホルモン補充療法と乳がん

  女性が更年期を迎えると、卵巣機能が衰え、女性ホルモンが作られなくなるため、体内の女性ホルモンの量が急激に減ります。そのため、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)、倦怠感(けんたいかん)、イライラ感など心身の不調や、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などさまざまな症状が出るようになります。これを更年期障害といいます。その治療法として、減少した女性ホルモンを体外から補充する方法が有効と考えられていて、これがホルモン補充療法です。この治療法は更年期障害の症状の緩和には有効性が高いことがわかっています。
  ホルモン補充療法には主に2つの方法があります。1つはエストロゲンだけを単独で補う方法で、もう1つはエストロゲンとプロゲスチンを併用する方法です。従来はエストロゲン単独療法が一般的でしたが、子宮体がん発症リスクの増加が指摘され、その欠点を補う目的で普及してきたのが併用療法です。一方でホル モン補充療法と乳がん発症リスクとの関連についての検討では、併用療法の普及に伴い乳がん発症リスクが高まるという報告が増えてきました。このリスクは  ホルモン補充療法の治療期間が長いほど高くなり、補充療法をやめると低くなると考えられています。また、乳がん以外では、心疾患、脳卒中、血栓症(けっせんしょう)、認知症(にんちしょう)などの疾患や症状を増やすことも報告されています。したがって、エストロゲンとプロゲスチンの併用療法については、更年期症状が日常生活に悪影響を及ぼすような場合以外は勧められません。
  一方、エストロゲン単独の補充療法に関しては、子宮切除を受けた女性を対象とした最近の大規模な調査において、理由はわかりませんが乳がん発症リスクを低下させることが示されました。しかし、エストロゲン単独の補充療法では子宮体がんを増やす以外にも、脳卒中や血栓症などが増えることが示されているため、この治療を乳がん予防目的に行うことは勧められません。
  いずれにしても、ホルモン補充療法を始める際には、事前に婦人科医とよく相談されることをお勧めします。

経口避妊薬と乳がん

  日本でも1999年9月に経口避妊薬(低用量ピル)が解禁されました。経口避妊薬も、ホルモン補充療法と同様、エストロゲンとプロゲスチンを組み合わせて使用されています。世界的には経口避妊薬と乳がん発症リスクについては数多くの研究がなされていますが、それらの研究報告をまとめて検討すると、経口避妊薬の長期間の服用は、乳がん発症リスクをわずかながら高くする可能性があることがわかりました。

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