日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

若年者に対する診療マンモグラフィは勧められるか (検診.画像診断・画像診断―マンモグラフィ・ID51700)

CQ1 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(183-185ページ)
推奨グレード C1 若年者に対する診療マンモグラフィは,いまだ十分な科学的根拠はないが,細心の注意のもと行うことを考慮してもよい。

背景・目的

 若年者の乳房は,高年齢の女性に比較して乳腺濃度が高く,マンモグラフィの診断上,腫瘤などの検出能力が低いことが知られている。症状を有する若年女性に対しての診療マンモグラフィの撮影に関しては,報告により癌の検出率や有効性に対する評価がさまざまである。若年者に対する診療マンモグラフィの有効性について検討した。

解 説

 若年者という正確な定義はないが,35歳以下あるいは30歳以下といった年齢で線引きをした際,これら若年女性に対する診療マンモグラフィの有効性を検討した比較試験の報告はなく,その有効性は症例対照研究をもとに推定する手法をとらざるを得ない。若年乳癌症例(主として40歳以下)を対象とし,どの程度のものがマンモグラフィで検出されたかを検討した報告では,検出率は37~94%と報告によりさまざまである。近年のマンモグラフィ撮影における精度向上や技術革新は著しいものがあり,37%と低い検出率を示した報告1)が1977年のものであるのに対し,近年の報告2)~5)では90%近い検出率を示している。1995~2005年に診療マンモグラフィを受けた若年女性を対象とした米国の研究では,30~34歳,35~39歳における診療マンモグラフィの感度はそれぞれ86.3%,82.5%,特異度は89.5%,88.9%であった6)。このことより,最新の仕様基準を満たした装置で精度管理されていれば,若年者であっても臨床現場での乳癌の検出能力は低くはない可能性が示唆される。

 しかし,専門の放射線科医による読影で91%の感度が認められたとした報告7)でも,解析に用いた105例中104例が腫瘤を触知し,検出可能であった乳癌の病理標本上の大きさが3.03±1.97 cmであったのに対し,指摘できなかった病変10例の大きさは1.6±0.54 cmであったと報告されている。また,国内からの報告では30歳代の乳癌症例における2 cm以下の触知癌の感度は78%(31/40例)と腫瘤に対する検出能力に関しては十分とはいえず,一方,超音波検査は触知腫瘤を全例検出していた8)。その他1,908人に対しマンモグラフィを撮影し発見された23例の浸潤癌はすべて腫瘤を触知したとする報告9)や,触知する腫瘤を認めない場合にはマンモグラフィで検出される乳癌はないとする報告10)もあり,漫然と有症状の女性に撮影を行うのではなく,撮影する対象を絞ったほうがよいという報告11)もある。

 また,小腫瘤に対する診断能力に不安があるため,たとえマンモグラフィの所見が陰性であっても,それを理由に乳癌の可能性を否定することはできないことも示されており1)12),注意が必要である。また他方で,診断精度が乳房構成に影響されにくい石灰化を伴う乳癌も一定の割合(26~61%)で存在することが示されており,高リスクの女性に対する検診目的の利用などは,必ずしも否定されるものではない。

 若年者にマンモグラフィを施行する場合には,被曝による乳癌の罹患リスクも考慮しなければならない。BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ女性を対象とした電離放射線を用いた被曝検査歴と乳癌罹患リスクを分析した大規模な後ろ向きコホート研究(GENE—RAD—RISK)13)では,30~39歳では被曝検査歴と乳癌罹患リスクの間に有意な関係はみられなかったが,全コホートで30歳未満ではあらゆる被曝検査歴が乳癌の罹患リスクを上昇させていた。また,30歳未満のグループのサブコホート解析では用量反応関係も認められた。

 30歳あるいは35歳以下の女性の乳癌罹患率は40歳代・50歳代に比べて低いことを考慮し,さらにはマンモグラフィという診断モダリティの利点・欠点を理解したうえで,臨床現場での使用を判断する必要がある。NCCNの乳癌スクリーニング・診断ガイドラインではしこりのある30歳未満の症例に対して最初の画像診断として超音波検査を勧めており,しこりのない異常乳頭分泌の症例には超音波検査±マンモグラフィを勧めている。

 なお,若年者で症状のない集団を対象としたマンモグラフィ検診は罹患率の低さと診断精度の低さから死亡率低減効果はほぼないことが予想され,不利益(コスト,偽陽性など)は確実に存在することから行うべきではない。

検索式・参考にした二次資料

 2013年版での検索結果に加え,PubMedにて,Mammography,Sensitivity,Specificity,young,premenopausalのキーワードを用いて検索した。検索期間は2012以降とした。また,NCCNガイドラインver 1. 2014を参考にした。

参考文献

1) Lesnick GJ. Detection of breast cancer in young women. JAMA. 1977;237(10):967—9.
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2) Jeffries DO, Adler DD. Mammographic detection of breast cancer in women under the age of 35. Invest Radiol. 1990;25(1):67-71.
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3) Shaw de Paredes E, Marsteller LP, Eden BV. Breast cancers in women 35 years of age and younger:mammographic findings. Radiology. 1990;177(1):117-9.
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4) Meyer JE, Kopans DB, Oot R. Breast cancer visualized by mammography in patients under 35. Radiology. 1983;147(1):93-4.
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5) Wang J, Chang KJ, Kuo WH, Lee HT, Shih TT. Efficacy of mammographic evaluation of breast cancer in women less than 40 years of age:experience from a single medical center in Taiwan. J Formos Med Assoc. 2007;106(9):736-47.
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6) Yankaskas BC, Haneuse S, Kapp JM, Kerlikowske K, Geller B, Buist DS;Breast Cancer Surveillance Consortium. Performance of first mammography examination in women younger than 40 years. J Natl Cancer Inst. 2010;102(10):692-701.
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7) Muttarak M, Pojchamarnwiputh S, Chaiwun B. Breast cancer in women under 40 years:preoperative detection by mammography. Ann Acad Med Singapore. 2003;32(4):433-7.
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13) Pijpe A, Andrieu N, Easton DF, Kesminiene A, Cardis E, Noguès C, et al;GENEPSO;EMBRACE;HEBON. Exposure to diagnostic radiation and risk of breast cancer among carriers of BRCA1/2 mutations:retrospective cohort study(GENE-RAD-RISK). BMJ. 2012;345:e5660.
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